第253話 モテテル?
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「2人とも、真逆の反応をありがとう。 心配してくれたと受け取っておくけど、相手がどんな人か解らない時は失礼な事をしないようにね」
俺は2人を見て苦笑しながら言う。
「「はい、本当にすみませんでした」」
ユリとミルッフルさんは、同時に言うと頭を下げる。
その様子を見た俺は、ヨシさんに目線を送る・・・ヨシさんは微笑んで首を横に振る。
ヨシさんからのお咎めの言葉は無しか、良かったね2人とも。
「これで終わりにしようと思うけど、2人に質問。 もしかして、俺の事好きだったりするの?」
俺はニヤニヤと冗談めかして言う。
「はい! 大好きです! 私と付き合ってください!」
「ち・・・違いますよ! 命を助けられたからお返しをしようと」
2人は同時に声を上げる。
「「「え?」」」
3人は同時に困惑したように言う。
数秒の沈黙のあと、俺は笑い出してしまった。
「あっはっはっは、ごめんごめん。 予想していない答えが返ってきたから、驚いちゃった」
俺がそう言うと、ユリは顔を真っ赤にして下を向き、ミルッフルさんは金魚のように口をパクパクさせて俺とユリを交互に指差している。
「ユリ、ありがとう嬉しいよ。 でも、良く考えて・・・ユリのお母さんよりも俺のほうが年上なんだよ?」
「そんなのは関係ないんです! カナタ様は、私の事嫌いですか?」
ユリは真っ赤な顔をあげ、目に涙をためて言う。
そんなキラキラした感じで言われたら・・・拒否しにくいな。
「いいや、嫌いなわけ無いでしょ? ランニングの時、ずっと一緒に走りながら話してるよね? 嫌いだったら話そうとしないよ?」
「はい、ありがとうございます! それじゃあ!」
嬉しそうに祈るように手を組んで上目遣いで俺を見る。
「いや、ごめん。 今の所、ユリに対して恋愛感情は無いよ。 そうだなぁ・・・20歳になっても、ユリが同じ気持ちでいたら、ちゃんと考えるからその時に言ってね」
俺は情けないし酷いな・・・ただただ先延ばしにしようとしてる。
下手をすると・・・いや、下手をしなくてもあとで大変になるのは解っているんだけど。
しかし、俺はユリと同じ年齢の子供がいてもおかしくない歳だし、付き合うなんて更々言えない。
まだ14歳の子供に鉈を振り落とすように、ズバンと断りを入れるのもなぁ・・・
ヨシさんの方をチラリと見ると、ため息を吐いて困った顔をしている。
断ったほうが良いというのは分かってるんですよ? でも・・・
「なんで20歳なんですか?」
「え? あ、ああ。 俺たちがいた国の成人の年齢が20歳なんだよ。 あれ? 18になったんだっけ? まぁいいや。 話を戻すけど、もし俺より好きな人が出来たら迷わず付き合うんだよ? いいね?」
ユリは少し納得のいかない様子だったが、頭を撫で少し話をすると機嫌が直った。
呆然とするミルッフルさんにも声をかけ、4人で少し話しをすると2人を部屋の外に出す。
2人が帰ったのを見て、ヨシさんが手をおでこに当てため息を吐く
「はぁ・・・カナタ君? 人の恋愛に口出すのもどうかと思うけど、断るのも立派な優しさよ? 先延ばしにするのは、お勧めできないわ」
「そうなんですよね・・・解ってはいるんですけど。 なんて言ったら良いか解らなくて」
「ふぅ・・・カナタ君にも苦手なものがあったのね。 断るなら早めにしなさいよ?」
「はい、解りました。 努力します」
「私はこれ以上何も言わないわ。 あの人が来ないって事はまだ下拵えとかが終わらないみたいね。 終わってなかったら、キッチンで手伝いをしてもらえるかしら?」
「はい、もちろんいいですよ。 チャッチャと手伝って終わらせましょう。 精神的に疲れたんで」
タダシさんと合流し少し明日の準備を手伝う・・・一通り終わったら、全員を呼んで終わりの挨拶をする。
なぜか俺も1言言うことになり、皆で頑張りましょう・・・とお茶を濁した事を言う。
俺に振ったタダシさんは、面白そうに笑っていたが、他の人達はどう反応したらいいかわからないような表情をしていた。
いや、全く思いつかなかったんですって・・・
3人で屋敷に戻る。
「カナタ。 お前さん、前より手際が悪くなっていたが、エルフの里では余り料理して無いのか?」
「研究に没頭して、使用人に作ってもらっちゃてたんですよねぇ。 もう1度タダシさんに教えてもらえると助かります」
「なるほど、そういうことか。 どの位料理から離れてたんだ?」
「約一月位ですね。 その前も週2~3位でしか料理していません」
「そんなに離れてたのか! はぁ・・・仕方ない、最低でも1週間基本をみっちり叩き込んでやるからな!」
「用事が終わるまで、朝の準備だけでお願いします。 冒険者ギルドにも行かないとですし、人が会いに来ると言われてますし、取材も来るんでしたっけ?
その他にもチェリーブロッサムの渋滞も何とかしないといけないですし、自分の実験もしたいですので」
「そうだな、解った。 朝は儂が起きる時に起こせばいいか?」
「はい、お願いします」
その夜は、俺もキッチンに入り料理を手伝う。
しかし、前のお浚いと言う感じの事をしただけで終了した。
お浚いをやって良かったと思う・・・記憶を完全に忘れてはいなかったが、言われてからそう言えばあったなと言う感じだった。
俺たち3人でキッチンを占領し料理を作っていたので、執事・メイド隊は申し訳なさそうにしていた。
食事中にリサー姫について注意をするように言い、従業員全員に情報が行きわたる様にセードルフに頼む。
気休めと言えるが、これで何かあった場合は警戒出来るだろう。
食事のあとまったりしていると、私(僕)にも仕事をくださいと執事やメイドが泣き付いてきたので人手が足りないところの手伝いに向かわせる事にした。
次の日の朝、俺はいつもより早く起きタダシさんの指示の通りに料理を進めて行く・・・それにしても、キッチンってこんなに広かったのか。
執事・メイドは、ユカさんの薬試作りの手伝い、アヤコさんの服作成、セードルフの八重桜学園の新教科書作成の手伝いに行っている。
早起きが出来なさそうなので、昨日のうちにやって欲しい事をメモに書いてもらい置いてくれると言っていたし大丈夫だろう。
朝の訓練時に、エミエミさんが神妙な面持ちで俺に話しかけてきた。
「カナタ君、新しい魔物の調査をお願いしてもいいかしら? 被害が出てる訳ではないんだけど、正体が解らないと不安になる人もいてね」
「調査なら引き受けてもいいですよ? でも、食料になりそうだった場合は貰いますよ?」
「それは構わないわ。 あとで形状とか飛んでいた場所なんかの話をするからギルドに来て頂戴」
「ええ、もちろんですよ。 今日中ならいつ行ってもいいですか?」
「あまりにも遅い時間以外なら大丈夫よ」
こうして、新型の魔物の調査に向かうことになった。
訓練が終わり、学生は学園の中に入り大人はそれぞれの仕事に向かう。
最近惚気話しかしてこないタクミ君を捕まえて、木工の最初の師匠でもあるミミリさん、骨細工の師匠でもあるヒリスさん、革細工の師匠でもあるニムロフさんの所へ順番に帰ってきたと挨拶に行く。
移動中は、エルディアさん(防具の装備主任の人、タクミ君といい感じの獣人)との事を惚気られた。
まじめに爆発すればいいのに・・・
最後に、冒険者ギルドへと向かって歩いて行く。
「話を変えるけど、バギー型ゴーレム試作品はどう?」
「車やバイクではなく、バギーを選んだのは最善だと思います」
「いや、そういう意味ではなくて改良出来ないか見てみたいって言ってたでしょ? 壊しても良いって言った途端に分解したでしょ? どうなったかなって思って」
「そういうことですか。 ケイタとアカネさんとエルちゃんと僕の4人で色々調べた所、改良点が幾つか見えてきたのでメモにとってあります。 ただ、木工を持っているのがカナタさんだけなので1度皆で話したいです」
タクミ君はそう言うと拳を握る。
おいおい、エルディアさんはウチのメンバーじゃないんだから一緒に開発しちゃ駄目でしょう。
まぁ隠すような事でもないから良いけど・・・
「了解、今は用事が立て込んでるからあとでも良い?」
「もちろん、いつでも良いですよ? カナタさんの持って来てくれたメモからウーツ鋼の作り方が解ったので、ダマスカスを試作しているところですから」
「そう? 悪いね・・・って雨? 濡れたくないから少し急ごう」
「エアヴェールがあるから大丈夫じゃないですか? 前の雨も弾いてましたし」
「あ、そうね。 雨弾くんだっけね」
俺たち2人は、足早にかけて行く人を眺めながら歩いて行く。