第228話 準備
ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。
俺は矢が的の数より多い矢が入った矢筒だけを持ち、エルフの前に立つ。
「あのカナタ様? 弓はどうされたんですか?」
結構仲の良い若いエルフ(年上)に、そう言われる。
「ん? あぁ、的の中心に当てるだけでしょ? それなら弓なんて要らないよ。 見てて」
的の場所を確認し魔法の風の道を作り出す。
魔力眼で見ると自分の魔力がラインのように的まで伸びてるのが解る。
その道に向かい矢筒から矢を取り出し手首のスナップを使って矢を飛ばす・・・飛ばした矢がどんどん的に刺さっていく。
地面に置いてある目の前の的以外全部刺さると、最後の矢3本を指の間に挟み野球投げをする。
それぞれ違う軌道を通る・・・1本目が地面の的の手前の地面に刺さると地面にめり込み見えなくなる。
すると、爆発が起こり的が空中に飛ばされる・・・その的の表と裏に突き刺さり的が回転して地面に落ち、的が2つに割れた。
ネタバラしをすると、1つ目の矢に無色に近いカーボンナノチューブを巻いて放ったのだ。
ミズキさんと違い遠距離の魔法の精度がそこまで高く無いための苦肉の策だったが、これはこれで使えると思っている。
何も喋らないエルフ達の方を振り向き、笑顔で告げる。
「魔法を使うのなら、このくらいの曲芸をして欲しいかな。 あと俺専用の弓を撃ってみて良いかな?」
「待て待て! その弓を撃つと結界が壊れかねないんじゃ無いか? そうなっては困るから止めてくれ」
スートーグさんが慌てて止める。
あぁ、そう言えば王都でも本気武器の使用は禁止したんだっけ・・・衝撃波で色々物が壊れるから・・・
本気で振るわなければ大丈夫だろうけど、どうなるか解らないし止めておくか。
「そうですね。 止めておきます。 守備隊の皆さん、起立!」
俺の号令で、すぐに全員立つ。
「さて、皆さんは里どころか国を守る精鋭です。 こんなことぐらいで落ち込まずに精進して下さい」
「「「はい!」」」
皆同時に返事をする。
「では、いつも通りストレッチから始めましょう!」
魔力と体力の底上げが出来てきたのか、組み手まで辿り着けるエルフがチラホラいる。
今までは、魔力はあるけど体力が無くへばっていたが体力もついてきたという事だろう。
スートーグさんに頼み、同じ位の強さの人を組ませて組み手してみた。
ギリギリの体力だった事もあり、すぐに木製武器が体に当たり終わりとなった。
スートーグさんは、結構余裕がありそうなので俺とタイマンで戦う。
木製の篭手だけ装備し左手に刃渡り50cm位の剣を構え、右手は使わないように背中に回す完全に真半身になり相手の出方を伺う。
対するスートーグさんは、槍を構え背中の腰の部分に短剣を2本括りつけている。
「では、礼。 構え。 始め!」
審判をかって出てくれたエルフの号令で勝負が始まる。
スートーグさんが走ってきて、横なぎに槍を振るう・・・俺は後ろに少し飛び躱す。
槍の軌跡をたどる様に前に進むと、横なぎに振るわれた槍の勢いを止めずにそのまま半回転させ、石突が迫ってきた・・・俺は思わずしゃがんで避ける。
また回転させて槍が斜めに振るわれ穂先が迫ってくる・・・俺は思わず後ろにジャンプし距離をとる。
「俺の杖術の動きを取り入れたんですか。 しかも、かなり鍛錬したようですね」
「ちっ、もっと驚けよ。 あとな、初見で軽く躱すんじゃねぇよ。 正直凹むだろ!」
槍のリーチを生かして突きを放つ・・・今までより槍の戻りが早い。
本当にかなりの鍛錬をしていたようだ・・・しかし、まだまだ荒いな。
槍が1番伸び切った瞬間に短剣で槍の穂先を叩き、穂先の方が地面に突き刺さると槍を踏みつける。
思ったより抵抗無く地面に槍が落ちる、既にスートーグさんは短剣を2本構えて突進してくる。
スートーグさんの初手の突きを剣で逸らし、次手の横なぎを剣で受けると逆側から蹴りが迫っていた。
流れるような技の繋ぎに感心して、蹴りを足の裏で受けその反動で距離をとる。
数歩で近づき同じく初手に突きを放つと、ダッキングしてかわされ腕を下から攻撃しようとするのが解りすぐに腕を縮め、しゃがんで足払いをする。
足払いをバックジャンプで避けられる・・・前にもジャンプと言うのは隙になると言ったのに・・・
しゃがんだ状態から4足歩行のようにスートーグさんの方へ移動し追い越して、飛んでいる背中に左手で掌底を当てる。
掌底と言っても攻撃した訳ではなく、移動を止めたという感じのものだ。
「俺の勝ちですね。 ありがとうございました」
「はぁはぁクソ。 はぁはぁ息切れも無い。 はぁはぁ強すぎだ!」
スートーグさんは座りこんでしまった。
「俺より強い人は何人かいますよ。 本当に強くなりたいのなら、ウルフローナ国の王都へ行って見て下さい。 もっと強い人といつでも手合わせできますから」
使用人達や奴隷の4人を呼び調理しているところを見せながらポーション入りの料理を作る。
朝ご飯もあるため、スープだけ飲ませると前回料理を作った鍋を回収し貸家へと戻る。
使用人達や奴隷の4人は、俺とスートーグさんの戦いを楽しそうに語っている・・・正直、褒められるとくすぐったい感じがするが、嬉しい。
朝ご飯に野菜たっぷりミネストローネとハムやベーコン、生野菜を自分で挟むベーグルを食べて少し食休みをする。
食休みの最中に、元執事のおじいちゃん以外の使用人達と奴隷の4人にどの武器がしっくり来たか聞く・・・4人だけ武器を渡すと怪しまれかねないので全員分を作る事にした。
そうは言っても、貸し出すだけで後で返してもらうつもりだが・・・
使用人7名のメイン武器は、槍3、弓1、両手斧1、片手剣3、サブとして盾2、短剣8となった。
片手剣が少し多いのは、使用人の獣人の男性が二刀流にすると言っていたからだし、短剣も1本多いのも、元執事にお守りとして持たせるためだ。
一応関わってしまったんだし、少しくらいは何かをしてあげても良いだろう。
午前中は自由時間にしたという体で、4人にはウォーキングや軽い筋トレをしてもらう。
サングーヴィレ(猪)の牙を使って片手剣と槍の穂先と石突を作り、盾と斧は頭骨を使う。
エテグラットンの大腿骨で細身のナイフを作る・・・思ったよりも細身のナイフになったが強度も申し分無いし大丈夫だろう。
お昼に元執事の作ったうどんを皆で食べ食休みをすると、全員に外に出てもらって武器の調整に入る。
午前中に振るってもらった感じで重心や武器の持ち手の位置等を見ていたから軽く直す程度で済んだ。
折角なので狩りに出掛けましょうと獣人の男性が言う。
使用人、シャガ達の中の1人も組み手まで辿り着けた人はおらず、危険なので止めさせた。
戦闘訓練等をしただけでも王都ではLvが上がっていたので、皆で協会に行く事に・・・
協会に行くと、全員Lvが上がっていた。
俺も一応確認するが壁を越えていなかった・・・死にそうな目にあったのに壁を越えて無いって何さ・・・
ギフトも確認するが特に面白い物はなく、一応俺のギフトも確認してみた。
補助ギフト:学習・言語理解・マジックボックス化・料理の心得・骨細工の真理・木工の真理・薬師の心得・革細工の真理・解体の心得・石細工の心・鍛冶の心・裁縫の心・彫金の心・錬金の心・索敵・コネクト
遠視の魔眼・魔流眼(魔力眼の上)・分身・圧力・動物の心(灰色)・身体回復+(灰色)
戦闘ギフト:格闘の真理・身体能力強化・槍(薙刀含む)、剣、盾、大剣(刀も含まれる)、棍(両手含む)、多節棍(ヌンチャク等も含む)、弓(ボウガン含む)などの奥儀・遠距離命中上昇(投石・投げナイフなど)
武器の心(灰色)
魔法ギフト:クワッド(4)マジック・魔力操作上昇・魔法効果距離上昇・魔力回復+・魔力プール(灰色)
魔力の泉(灰色)
となっていた。
コネクトってのが、いきなりONになってる・・・欠損部位回復を使えた原因ってこれなのか?