第227話 覚悟
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俺は4人の意思を確認し4人を別室に移動させ、パルメントさんとパルメントさんの父ことモリスさんを呼んで3人で話しをする。
内容は復讐について・・・
「つまり、4人を鍛えてウヌリアン族達を殺させようと言うのか?」
パルメントさんが腕を組んで言う。
「そうです。 俺も、子供達だけに罪を背負わさないようにするためにウヌリアン族の族長を殺そうと思います」
「そうか。 そこに対して異論は無い・・・だが、戦っている所を4人に見せるだけでは駄目なのか?」
「駄目でしょうね。 あの表情からすると、自分の手で行なわなければ納得出来無いでしょう。 このまま何もしなければ後々恨みが爆発するかもしれませんし」
「復讐は何も産まない。 だが、先に進むために必要か・・・俺も同じ経験をしているし反論は出来んな。 よし、解った。 俺に異論は無い。 父殿はどうだ?」
「そうじゃのう。 最終的には、子供達をどうするつもりなのか聞かせてもらえんか?」
「最終的には自分で決めてもらいたいと思いますが、まだ難しいと思いますので私が作った道を少し通ってもらおうと思っています」
「ほほぅ。 その道はどのような物なのじゃ?」
「自分達と同じような境遇の子供達の救出及び解放。 解放と言っても何もし無い訳ではなく、ウルフローナ国の王都への護衛もしてもらいたいと思います」
「ふむ。 しかし、王都へ行ったから何か変わる訳ではあるまい?」
「今の所新薬の開発の金額を学校への資金にしてますし、学校の実地での訓練で給料も渡しています。 それが駄目になったら、定期的に金額を稼ぐことが出来るアイディアがありますので、そのお金を孤児の救助に使いたいと思っています」
「ほほぅ。 そこまでは了承した。 だが、どのようにその道へ連れて行く? 人助けをさせたいのなら復讐させない方が良いじゃろうて」
「簡単ですよ。 自分の境遇への復讐という事にすれば良い。 年齢を重ねれば、自分が復讐しているのではなく人助けをしていたことに気が付くと思います」
「ふむふむ、やって見る価値はありそうじゃのぅ。 しかし、お主の住んでいる世界は、よほど怖い世界なんじゃな」
「何故ですか?」
「お主ほどの強さの者が何手も先を読まんと進めぬ場所なのであろう?」
「何手か先を読むのは俺の癖ですが、基本は行き当たりばったりですよ。 今回は人の人生がかかっていますのでかなり慎重に考えましたが」
話し合いを続け、ウヌリアン族をどうやって処刑するかが話し合われた。
俺が最初に出した案通り、シャガ達4人対大人1人で連携や攻撃等を叩き込むことになった。
この世界でも、実践に勝る練習は無いとされてるようだ。
「カナタ、コノミとミズキには話さないのか?」
「人を殺すなんて汚れ役は、俺1人で良いんですよ。 俺はこの世界に残ろうと思ってますので、そのうち殺さなければならなくなるでしょうから」
「そう決めたのなら良いが、無理はするなよ? 未だに人を殺すと俺でも気分が悪くなるからな」
その後、4人を呼び筋肉痛が無い身体強化をかけて攻撃と防御の体捌きや形の練習をする。
筋肉痛が無くても軽く疲労が蓄積して行く・・・疲れが表に出てきて倒れそうになった場合は、回復魔法をかけて強制的に起こす。
体力や魔力は一朝一夕では身につかないが、技だけならある程度習得出来るだろう。
精神的疲労も溜まってきたので、ランニングをさせてポーションを飲ませて貸家に戻った。
晩御飯の用意をしていると、コノミちゃんに話しかけられる。
「カナタさん、4人を鍛えてるんですか?」
「そうだよ。 何かあった?」
「いえ、逆に何かありました? いつものカナタさんらしく無い気がするんですけど」
「え? そう? 何か変かな?」
「変ですよ。 4人に話しを聞いたら、いつもより厳しい訓練してません? なんと言って良いんでしょう。 う~んと・・・そうだ! 焦ってるですね。 焦っている気がするんですよ」
「焦ってるというのも少しはあるかも・・・だって、4人は先に王都へ行ってもらおうかと思っているし」
「え? こっから4人を向かわせるんですか? 危険ですよ」
「そうだよね、だから焦ってる。 もちろん、4人だけで行かせたりはしないけど道中が危険なのは変わり無いからね」
「う~ん・・・何か隠してません?」
「何を隠してるのさ? 自分に得にならないのに隠し事はしないよ」
驚くことに1日も持たずに何かをしている気配を感じられてしまった・・・俺ってそんなに解りやすい方じゃないと思うんだが・・・
晩御飯を皆で食べ少し休み、使用人と4人の体が硬すぎるのでストレッチをする。
俺もストレッチをした・・・毎日のようにストレッチしているのに、未だに体が硬いと良く言われる。
4人と比べると、俺の体が異常に硬く見える・・・これが若さと言う奴か!
全員をお風呂に入れ、寝て良いと伝えると工房へ移動する。
今回作るのは4人に贈る為の練習武器と防具だ。
王都にいる子供達からすると贔屓かも知れ無いが、鎧下はオークリーダーの皮で作る・・・ソフトレザーにして、急所部分や攻撃に使用する肘や膝等の部分を2重にし軽くて丈夫なようにする。
篭手や胸当て膝当てはブラックビーフの物にした・・・最初からあまり良い物を装備しすぎると、成長してから大変になりそうだしね。
ただブーツだけは少し良い物をあげよう・・・戦いでも健康でも足元が大事だしね。
そう思いエテグラットン(ゴリラ)の皮で作る。
次に武器・・・魔鉄のインゴットも結構あるし魔鉄で作ってもいいのだが、ケイタ君やタクミ君のようにメタルクリエイションが自在に使えるわけじゃない。
やはり、骨細工で作るのが無難だろう・・・しかしそれだと、どの素材で作るのが正解なのだろう?
強い武器だと武器に頼りすぎてしまう気がするし、弱い武器だと自分の身を守る事も難しくなりそうだ。
ちょうど良い武器ってどんなんだろう? 全然解らない・・・
結局決められなかったので、木材で盾や武器を作り振ってもらって、しっくりくるのを作ることにしよう。
王都で店売りされている盾や剣、槍、斧、弓等を作り始める。
両手用や片手用がある物は両方作っておく・・・大きさは大人用と同じにしておく。
店売りされてるのは、だいたい大人用だから慣れておくのも良いだろう。
作り終わった大量の武器を並べて・・・矢と的、近接武器用の藁人形が無いのに気が付き作り始める。
試し撃ちや試し切りをしないと、あってるかどうか解らないよな・・・
次の日の朝、使用人達と4人に武器を選んでもらい振るってもらった。
そんな事をしていると、エルフ達も集まり始め最終的には弓での的当てになった。
遠い場所からの的当てをして、エルフが遊び最終的には風のエレメントを使い曲射をしていた。
「カナタ様! どうですか? こういう事は我らエルフの方が得意だと思うんですが」
弓をいたエルフがそう言うと微笑む。
周りのエルフも、同意の言葉を言う・・・スートーグさんを見つけ見ると、苦笑し両手を上げヤレヤレと言った感じで首を振る。
弓には誇りを持っているってこと何だろうけど・・・これじゃあ驕ってるようにしか見えない。
武器を振っている皆に武器を選ぶのを続けるように言いその場を離れる。
「俺も弓で的当てやってみて良い?」
「ええ、的はどれを使いますか?」
エルフはそう言うと、的のある場所を指差す。
的は木の上や地面にそのまま置いてある物などがあった・・・この短時間でこんなにどれだけ並べたんだよ・・・
俺が弓を使うという事で、エルフ達が弓を置き集まってきた。
「魔法を使って当てて良いのなら、全部の的を使うよ。 そこで見ててね」