第225話 怒り
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未だに映像は続いている・・・コノミちゃんが気になり隣を向くと口を手で押さえ今にも吐きそうになっていた。
すぐにマジックボックスから桶を出し、コノミちゃんに渡す・・・思った通り、戻してしまい涙目になっている。
「無理して見続けなくても良いと思うよ。 見てても、ただただ怒りが溜まっていくだけだから」
「いえ、最後まで見ます。 ちゃんと見るって決めたんです。 気分が悪くなっても最後まで見ます」
「無理はしないようにね」
映像には、人の体のどこを当てたら何点等のゲームやトーナメント等もあり、子供達も参加して笑顔で魔法を撃っている。
殺した人の首を並べて自慢してたりするところも映っている。
ウヌリアン族の全員が駄目だと言うのが分かる・・・全員殺すしか無いな。
全部の映像が終わり、コノミちゃんの方を向き声をかける。
「コノミちゃん大丈夫だった? かなりきつい内容だったけど」
「大丈夫では無いです。 気持ちが悪いですし気分も最悪です」
「それは俺も一緒だよ。 ただ、俺は怒りが先行してるけどね」
「なんであんな事出来るんでしょう? エルフと見た目が同じ先祖帰りの子もいたんですよ? なんでそこまで・・・」
「解らないな・・・理性を無くしているからなのかなんなのか。 こんな風にはなりたく無いな」
俺とコノミちゃんは、パルメントさんの所へ戻る。
そこには手足が無かったり、頭に大きな傷がある10歳ほどの4人の子供達がいた。
この子達は、何とか一命をとりとめた子供達か・・・ますます、殺したくなるな。
そんな事を考えると、シンと空気が張り詰め子供達はお漏らしをして震えだした。
「カナタさん! 圧力を解いて下さい! 皆怯えています」
ミズキさんが叫ぶ。
「あ、本当にごめんなさい。 怒りが溜まりすぎてギフトのスイッチが無意識にONになっちゃって」
俺はそう言うと頭を下げる。
皆は涙を溜めながら頭を横に振っている。
「全く・・・久々に死を覚悟したぞ」
パルメントさんが、ホッとした様に言う。
「すみません。 あと、もしかしたら皆の体治せるかもしれないから試してみて良い?」
俺は1番近くの男の子の顔をみてそう言うと頷かれる。
その時、後ろの子からお腹の音が聞こえてきた。
皆でご飯を食べることになった・・・一応、子供達が食べれる物を聞いたが、既におかゆ等は卒業して固形物を食べても良い頃合らしい。
それでも何かあったら嫌なので何か簡単に食べれる物を考える・・・
麺は喉に詰まる可能性もあるし、何より自分で食べるのが大変だろう。
手に指が無かったり、腕その物がなかったりするのだから・・・・
そんな事を考えて、水餃子とラビオリのどちらかを作る事にした。
これならワンプレートで食べられるし、上腕にスプーンを括りつけた形でも大丈夫なはず。
中身や食感等、味等を教えて投票してもらう・・・トマトソースのラビオリに決定! ミズキさんとコノミちゃんの後押し・・・というよりも説得に近い物で投票が増えたのだろう。
ラビオリは前に練習で作った物もあるし、生地もまだまだ入ってたはずだからちょうど良い。
元執事を呼んで料理を手伝ってもらう・・・後で最初から一緒に作ってみよう、今は時間の節約の為マジックボックスの中の物を使おう。
料理中に使用人達に料理中に子供達の服を代えてもらうのと、掃除もお願いしたからすぐに帰ってくるはず。
そう思って多めにゆでておく・・・子供何だしいっぱい食べるだろう。
さっきの服と同様に麻でできた服に身を包んで子供達がやってきた。
「さぁ、もう出来てるからテーブルの前に行って、皆で食べよう」
「え? でも、僕達は奴隷ですよ? そんなの・・・」
1番年上の少年が、皆を代表して言う。
「あぁ、そんなことどうでも良い。 俺達には俺達のルールがある。 奴隷だと言うなら俺達のルールに従うべきじゃ無いのか?」
「その通りです。 申し訳ありません。 殴るのでしたら僕だけでお願いいたします。 僕だけが勘違いしてしまったので」
「解った。 先にルールを言うぞ。 俺達のルールってのは、どんな種族だろうと奴隷だろうとなんだろうと差別し無いって物だ。 それに従ってもらう」
「え? それでは、どうすれば良いと・・・僕達は、何も出来ることがありません」
「出来ることが無いと言うのなら、一緒のテーブルに着き食事をすれば良い。 一緒に食事をする事は出来るだろう?」
「ばい゛」
少年は泣きながら言う。
当たり前のことを当たり前に出来ない・・・なんて理不尽な・・・
神がいる世界なんだろう? こんな理不尽を許容するなんて、神なんてたいそうな奴は何をしたいんだ?
食事を皆の前に運び、腕が無い子の世話をしようとすると固まってしまった為、使用人にお願いした。
食事自体は、かなり好評だった・・・野菜多めにしたが、パルメントさんも文句を言わなかった。
子供達は、久しぶりに食器からの食事に戸惑いながら頑張って食べていた。
食事中盤で、食事をこぼし服を汚してしまって泣きながら謝られた。
「うん、偉いぞ! ちゃんと汚したことを言えるのは良いことだ。 服は洗えば済むし、まだ大量にあるから気にするな。 ただ、食事が終わったら着替える事、良いね? 約束だよ」
俺は、耳が半分地切れ頭に大きな傷を作っていたエルフの女の子の前に行き膝立てをして、頭を触りながら笑顔で言う。
言い終わると女の子はもっと大きな声で泣き出してしまった。
あれ? 俺なんかやらかした? この状況、何をしたら良いんだろう・・・
戸惑っていると、使用人の女性が「大丈夫です。 代わります」といって代わってくれたので任せよう。
もしかして俺のスキルのデメリットって、女性に嫌われるって奴か? いや、他の女の子や女性に嫌われたと言う感じは無いんだよな・・・
大きなトラブルと言うほどの事はなく食事は終わった。
食事の準備を俺がしたからか、使用人達が片付けをしてくれるようだ。
食事を零し服を汚した子の着替えも使用人に任せ、パルメントさん達とお茶を飲みながらしばらく談笑する。
そんな時、訪問を知らせるベルが鳴る・・・使用人が忙しそうにしているので俺が出る。
そこにいたのは、ミルッフルさんとスートーグさんだった。
「カナタさん! 良かった、起きたんですね。 良かった・・・よがっだよ~」
ミルッフルさんが、涙を流しながら抱き付いてきた。
これは、抱きしめてもいいのでは? そう考えたが、奥にいるスートーグさんを見て止めておいた。
「おはよう。 結構寝てたみたいで心配かけてごめんね」
泣きながら「いいんです」と言ってるようだが、良く解らない。
苦笑しているスートーグさんと目が合い頷くと、中に入ってもらうジェスチャーをする。
スートーグさんは籠を持ちあげ見せてくれた。 お見舞いの品なのか、籠の中にキノコが一杯入っている。
笑顔で頷き、ミルッフルさんをなだめて落ち着かせる。
ミルッフルさんが落ち着き、3人で中にはいると奴隷の子供達が戻っていた。
奴隷の子供達を集めて、質問をする。
「ご飯前に言った腕や足を回復するのをやりたいと思います。 しかし、俺も使うの初めてだし何となく出来る気がする程度なんだ。 実験台と言ってもいいと思う・・・それでも、やりたい人はいる?」
「あの、僕が実験台になって良いでしょうか?」
代表として話してくれた子が言う。
「うん、解った。 名前はなんていうのか教えてもらえる?」
「ウィルドロ283番です。 ずっとそう言われてました」
「そっか。 最初に親から呼ばれてた名前は解る?」
「シャガです」
「シャガか。 良い名前だと思う。 じゃあ、回復をして見ようか」
そう言うとミズキさんとコノミちゃんも一緒に使っていない部屋に入る。