第219話 話し合い
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倒れているエルフ達と使用人達をどうするか悩んだが、ポーション入りの麦粥を食べさせると少し動けるエルフが現れたので使用人達を任せた。
料理を教えたいが、まずは体力から・・・ということで、一緒に運動したが死にそうだなぁ・・・
まぁ魔力眼で見ても特に問題なかったし、少し休めば大丈夫だろう。
朝ご飯を作るかな~、今日は曇りで肌寒いし何を作ろう?
マジックボックスに入っているメモ紙を取り出し、考える・・・そうだな、山菜の灰汁抜きした物を上に乗せて山菜うどんにしよう。
出汁が無いので、鶏がら醤油うどんなのだが・・・食事中にパルメントさんから声が掛かる。
「カナタ、今日は俺もついて行くから頼むぞ」
「はい、よろしくお願いします。 正直ウヌリアンの里に行くのを面倒に思ってたんですよね」
「まぁ、そう言うな。 しっかりサポートするから任せておいてくれ」
「お願いします。 防具とか付けて行った方が良いですか?」
「ん~、出来るだけエレメントマジックが使えるようになるまで着ない方が良いと思うが」
「着たら何らかのデメリットがあるってことですか?」
「ああそうだ。 言い伝えでは、また最初から慣らさなきゃならないと言われている。 本当にそうなのかは分からんが、やらない方が良いんじゃないか?」
「そうですね。今までがパァになるくらいなら着ない方が無難ですね」
一応防具やインナーをマジックボックスに入れ、何かあっても着替えられるようにしておく。
ミズキさんのとコノミちゃんのも中に入れ、マチェットナイフの代わりに片手用鍛錬棒のを渡す。
エルフの攻撃をマチェットナイフで受けると、武器ごとエルフを切ってしまうので鍛錬棒に変えたのだ。
これで魔法で押し返した矢を、エルフ達に当てないように気を付けることもなくなるはずだ。
早速、準備をして出発する。
奴隷にするのはどうするのか聞かれたが、奴隷紋を刻む素材を作るのを忘れている事に気が付く・・・
面倒だし、後でで良いだろう。
今回はスートーグさんはお休みするようだ・・・というか、ほぼ俺の責任らしいが知ったことではない。
鍛えて欲しいと言われたから鍛えただけだしね。
道は順調に進み、里に入ると族長と息子が出迎えてくれた。
「ようこそおいで下さいました。 お待ちしていたところです。 さぁさぁこちらへ」
族長が満面の笑みで言い、頭を下げる。
族長の息子は、無表情で頭を下げている・・・絡んでこないだけマシと言えるかな。
族長の後について行くと大きな屋敷に辿り着く・・・入り口を入ると使用人達が並んでおり一斉に頭を下げた。
そこで「お帰りなさいませ、ご主人様」が無いのが寂しいな・・・しかし、何の臭いだろう? お香とかか? 余り好きじゃない臭いだな。
廊下を進むと画廊のようになっており左右の壁には、色々な武器、鎧、魔道具が綺麗に飾られている。
なんと言うか、色々置いてありすぎて悪趣味だなぁ・・・なんて考えていると1つの部屋へ通される。
「こちらにお掛けになってお待ち下さい。 すぐにお飲み物を用意いたします」
「いや、大丈夫です。 話しをしたらすぐに帰りますので」
「そうですか? では、話しをしましょう」
グンスット商会と手を組んで他の里の者を奴隷に売ろうとした事や、パルメントさんが持ってきた光茸の販売の不正の証拠を説明しながら見せる。
族長は時々頷きながら大人しく聞いていた・・・何となく余裕があるように感じる何でだ?
「簡単に言いますと、皆さんがした借金を私が肩代わりしたので、借金を返して欲しいという事ですね」
「畏まりました。 実際には1人いくら払えば良いのでしょうか?」
「1人ですか? 里全体ででは無く?」
「はい、1人でです。 自由に動ける者を1人でもいた方がいいと思いまして」
「それは大丈夫です。 行動を阻害するような事は一切しません。 1月に銀貨1枚か同等の品物を里から渡してもらえれば、それだけで良いとなっていますので」
「そうでしたか。 それなら他国との取引も続けても言いという事ですか?」
「はい、そうです。 しかし、光茸を販売するのはパルメントさんの許可を得てからという事になっています」
「はい、それは大丈夫です。 では、契約をすれば良いのですかな?」
何だこの余裕? 気味が悪いし気持ち悪いな・・・
「あ、すみません。 もう1つ、借金中は奴隷を禁止しますので1度渡していただきたいのです」
あれ? 明らかに顔色が悪くなった・・・もしかして、奴隷で何かをしてるのか?
「奴隷も大切な財産です。 それを渡せというのは些か横暴ではありませんかな?」
「それならば買い取りますので、1度連れて来て頂きたいのですが」
「それは出来ません。 この里では一家に1人は奴隷がいますし、借金中でも奴隷を持つ事は禁止されていませんので」
「でしたら、奴隷の稼いだ金額とエルフの稼いだ金額を分けてもらえますか?」
「それも出来ません。 畑等で一緒に働いているのにどのように分ければ良いのか解りかねます」
「それならば、奴隷の畑とエルフの畑を分ければ良いのではありませんか?」
「それは良いアイディアとは言えません。 畑自体が我等の持ち物なので分けられません」
「そうですか、でしたら私が奴隷に新たな仕事を与えるので昼間だけ解放するというのはいかがですか?」
「家の中で出来る仕事と畑仕事を一緒にやっていましたので、いきなり奴隷の手がなくなるのは反発されると思います」
「そうですか・・・あの、畑ってどの程度の大きさなんですか? 里に入ったときには畑が見えなかったんですけど」
「奥の森にあります。 他国に卸すために作っているのもありかなり広いですよ」
「個人の畑なのに他国に卸すんですか?」
「ええ、そうです。 同じものを栽培していたりするので、重さで取り分を決めてるんです」
ん? 野菜を育ててるんじゃないのか? それとも重さで金額が変わる野菜とかなのか?
「見に行っても良いですか? そんな物なのか気になって」
「ええ、良いですよ。 しかし、パルメント殿はご遠慮願いたいのですが」
どういう事だ? 見られちゃ困る物を育ててるとかか? それとも、お金に代わりやすいものとか・・・見て見ないと何とも言えないな。
パルメントさんを置いて、畑を見に行くことに・・・畑の手前部分は野菜が育ててあり、奥の方には一面の茎の先に緑の卵がついた草が生えていた。
エルフが交代で野菜に成長促進魔法をかけ、収穫出来るようにしているそうだ。
緑の卵も果実のようで、果汁が薬になるらしくせっせと奴隷が果汁を採取していた。
しかし、なんかおかしい・・・緑の卵の畑は外から見えないように厳重に囲いがしてあり、緑の卵自体を隠しているように見える。
一応、コノミちゃんに写真を取ってもらいタダシさんに送って何か知らないか聞いてみることにした。
族長の屋敷への帰り道に、コノミちゃんが深刻な顔をして小声でタダシさんからの解答を教えてくれた。
「カナタさん。 さっきの草はケシ、卵状の物はケシの実です。 麻薬の・・・アヘンの素材です」
「え? マジで? 嘘・・・どうしよう。 そっか! アヘンを売ってお金を作ればすぐに借金を返せるという訳だったのか」
俺が立ち止まり、ブツブツ1人で独り言を言ってしまった。
「カナタ殿。 何かありましたか?」
「いえ、大丈夫です。 少し外の風に当たりたいので、パルメントさんも呼んでそこでお昼を食べても良いですか?」
「ええ、構いませんよ。 お食事は何を召し上がられますか? すぐに用意させますが」
「こちらに来る前にお弁当を作ってしまったので、結構です。 パルメントさんを呼んできてもらってもいいですか?」
「すぐに呼びますので、お待ち下さい」
パルメントさんにアヘンのことを聞いて見なくちゃな・・・