第218話 転移出来るかも?
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ある程度血が抜けた所で、土を台の様に使いマチェットナイフできれいに皮を剥がしていく・・・固定をしている尻尾の部分以外を剥がしマジックボックスにしまう。
横に積み上げられていた木材を貰い大きなスノコを作り出し、そこにグランネッツのレア種を置き血の回収樽に蓋をして同じくマジックボックスにしまう。
尻尾の皮も全部剥がしてしまい、俺専用の黒い太刀を出し浄化魔法をかけて肉を切り分ける。
出来る限り骨も綺麗な状態で取りたいので、少し多めに肉を骨につけた状態にする。
作業に集中しある程度の切り分けが終わった所で、肩を叩かれた。
「おい、カナタ。 もう夜になるぞ? 帰らないか?」
パルメントさんが、苦笑しながら言う。
「え? あれ?」
周りを見渡すと、日が沈みかけ辺りが暗くなりはじめていた。
「すみません、作業に集中しちゃったみたいです。 肉の分配は後で良いですか?」
「無論そのつもりだった。 こんな大きさの物を短時間でここまで解体出来る奴等見たことなかったから、見とれてしまい声をかけるのが遅れてしまった。 本当に何でも出来るんだな」
「そんな事はないですよ。 じゃあ、片付けてしまいますね」
苦笑して答え、肉や骨をマジックボックスにしまい血が付いた地面を燃やす。
木材はそのまま捨てていくと言うので、全て回収する。
その時に、切り株から芽が少しでていることを確認し周りを見ると、切り株に手を当てて何かをしているエルフがいるのが見えた。
帰り道にパルメントさんに聞いたところ、魔法で切り株から新芽を出していると言う。
根がしっかりしてれば新芽が出てまた木になるそうだ・・・種から発芽させるよりも成長が早くなるとも言っていた。
貸家に着き、ミズキさんとパルメントさんに使用人達を紹介する・・・のをコノミちゃんに任せ、全員が座れるようにテーブルや椅子を出していく。
話しを遠くから聞いていたが、パルメントさんは他の里の奴隷だったと言うのを気にした様子もなく「頼む」とだけいっていた。
オーブンで焼きあがったグラタンを全員で食べる・・・奴隷の皆は遠慮していたが、無理やり席に座らせ全員で食べた。
話題はだいたいミズキさん無双の話し・・・エルフよりも魔法が得意な人を初めて見たと言って喜んでいるパルメントさんと、少し照れているミズキさんが印象的だった。
食事が終わり片付けを任せて、ミズキさんの装備を渡してもらい点検する・・・防具は汚れているだけだが、杖の方は回路が溶けて無くなってしまっていた。
ミズキさんの1撃をサポート出来ただけ上出来だろう。
トレントの素材で同じ杖を作っても良いのだが、折角なので新しい杖を作りたい。
構想を練って置いて、トレントの上位種のどれかを倒したら作ろう。
コノミちゃんも杖が欲しいって言ってたし、ミズキさんにも了承を得ないとな。
コノミちゃんとミズキさんを呼び、新しい杖について話す。
「新しい杖を作るなら、エレメントマジックを習得してその補助も出来るようにしませんか? 話しを聞いてただけですけど、ファイヤーボールみたいに直線で飛んでいく魔法を、相手の死角から撃てるのは魅力ですし」
コノミちゃんが、腕を組んで言う。
「そうなんだけど、全然エレメントマジックを使える気がしないんだよねぇ」
俺の言葉にミズキさんも頷く。
「カナタさん、なんか卑怯な裏技とか無いんですか?」
「いや、そんな物あったら俺が使え無いのおかしいでしょ」
「しかたないなぁ・・・何でも習得機! みたいな物を開発して下さいよ」
「待て、青いロボットじゃないぞ! 四次〇ポケットっぽい物は持ってるが・・・あれ? 四次〇ポケットってさスペ〇ポケットってあったよね?」
「ありますよ~。 それがどうしたんですか?」
「あれってさ、1つのポケットの出入り口を2つにしてるってことだよね?」
「え? どういう事ですか?」
「えっと・・・ポケットの中身と呼べる四次元空間は1つなのに、出入り口が2つってことだよね?」
「カナタさん! それって転移に使えませんか!? マジックバックはどこにいても同じ空間にアクセス出来ますし、その空間の出入口をもう1つ作ることが出来れば転移が出来る可能性があるってことですよね?」
ミズキさんが立ち上がり大きな声で言う。
「うん、なんで気が付かなかったんだろう? 映画やアニメなんかでも、違う空間を経由してワープするってのはありきたりな設定なのに・・・」
「カナタさん、早速作りましょう! それが出来れば、何も使わない転移も出来るかもしれませんし!」
「待って待って、マジックバッグの作り方教わって無いんだし今すぐ作るのは無理だよ。 あと、それで思いついたんだけど、飛行魔法も出来るかもしれない」
「え? え? え!? どうやったら出来るんですか! 説明して下さい」
ミズキさんがズンズン近づいてきて、テーブルの上に手をドンと置き顔を近づけて聞いてくる。
「近い近い、近いって・・・えっと、マジックバッグやボックスは移動しながらでも使えるでしょ? そのバッグの中に紐を入れて、【重量移動】の付加を付ければ外にいる自分は軽くならないかな? ってさ」
「やはりマジックバッグは必須ってことじゃないですか・・・明日にでもダンジョンへ行きましょう。 すぐにでもマジックバッグの作り方を学ぶべきです」
「流石にすぐには無理だよ。 明日もエルフの里に行くんだから・・・でも、それが終わったらダンジョンに行っても良いかもね」
「分かりました。 明日はサッサと終わらせましょう」
「あの、ゴーレムはどうするんですか? 作りかけなんですけど・・・」
コノミちゃんが、俺達2人を見て言う。
「そうだね。 それも終わらせてからダンジョンかな? 1つずつやっていこう」
「解りました。 早速ゴーレム作って来ます」
「私も行って来ます~」
2人と分かれ、俺も工房へ。
バギーはほとんど出来ている・・・こつこつと調整を続けたので後は試走をしてみないと解らない。
一応、家の中を走ってみた限りは特に不具合も出ず大丈夫だと思う。
しかし、タイヤを作ったのが初めてなので、どのくらいの出力まで保つのか解らない。
こんな事なら、ワイヤーが入っている以外の情報も調べておくんだった・・・
そんな事を考えながら部屋の片付けをして、鎧等をマジックボックスにしまい寝る。
次の日、少し早くに起き使用人達を連れて訓練に使っている広場へ行く。
使用人の皆と一緒にストレッチをして過ごしてもらう。
その間に、バギー型ゴーレムを出し試走をしてみる・・・どんどんスピードを上げていく・・・
サスはこんなもんで良いかもしれないけど、タイヤのサイドウォールをもっと硬くしても良いかもしれないな。
衝撃吸収を付加させた素材を使えばノーパンクのようにしても良いかもしれないな。
そんな事をしていると警備兵のエルフ達が来て、運動をし始める。
時間を短縮するために魔法の身体強化をかけて、ランニングしはじめる・・・今までは魔法の身体強化を使わずにやっていたが、ミズキさんの魔法を見ていることだし隠してもしょうがないと思い使った。
使用人達は早々にギブアップし見学、エルフ達は何とかついて来れたが形をしている時にギブアップする物が多数。
組み手までたどり着けたのはスートーグさんのみ・・・だが、体力がもう底をついており組み手は出来なかった。
俺は、その後素振りと筋トレをして貸家に戻った。
使用人やエルフ達は先に帰って良いと言ったのだが、最後まで俺の動きを見ていた。
見取り稽古なら組み手をしているときが良いような気がするが、止める必要も無いし好きにして貰った。
さぁ、今日は最後のウヌリアンの里へ行く・・・絶対になんかあるだろうな・・・