第215話 襲われた後処理
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「さて、皆さんに質問です。 自発的に俺達を襲ったんですか? それとも、誰かから言われてそうしたんですか?」
「何を言っているんだ? 自ら進んでやったに決まっているだろう」
リーダーエルフは、睨みつけながら言う。
「それだとおかしいんですよね。 だって、さっき行った里と今から行く里のエルフが1人も出て来てないんですもん」
「そんな事は知らん! 俺は・・・」
リーダーエルフが言いかけるが、その隣のエルフが喋り出す。
「もういいだろう、俺達は負けたんだ。 しかも、こいつは知っていて言わせようとしてるんじゃないのか?」
隣のエルフがそう言うと、俺はにっこりと満足そうな笑顔を向ける。
いや、流石にそこまで知らないけど・・・勘違いしてくれないかな?
リーダーエルフは苦い顔をしながら下を向いてしまう・・・隣のエルフは、言葉を続けた。
「ほらな・・・おまえらが調べた通りだ。 だから、せめて何も知らない里の奴らを殺さないで欲しい」
隣のエルフは、頭を下げる。
「それじゃあ困るんですよ。 ちゃんと全員に分かるように口で説明してくれないと・・・俺だけが知っていたら、俺が嘘を言っていると勘違いされちゃうかもしれないじゃないですか」
「解った解った・・・それなら、頼みがある」
「なんでしょう? 出来ることなら、してあげても良いですよ?」
「俺達の命の保障と、何も知らない里の仲間を助けてくれ。 どうだ?」
「ん~、そうですね。 それなら叶えられると思います。 ですが、首謀者には相応の罰を与えますがよろしいですね?」
「言えた義理じゃないが、出来るだけ穏便に頼む。 長達2人にも家族がいるからな」
「解りました。 出来る限りのことをしますが、ことが事だけに不問という訳にはいかないので了承して下さい」
「ああ、それで構わない。 では話すぞ・・・」
莫大と言える借金があり、返せる見込みがないことを長と副官から官僚達に説明され、長と官僚達はどうするべきか話し合った。
しかし全然話が纏らず、年齢が上の者達を生贄にして若いエルフの助命を頼むこと等が第一候補となった。
その時、長が借金の主が死ねば借金がなくなるんじゃないか・・・と呟いたことを切っ掛けに暗殺する計画が立てられた。
しかし、暗殺の準備するまでの時間が少ない事と、クランからの借金とされていることが判明したことにより、正面から挑み倒す事となった。
クランが借金の主なら、正面から倒せないと借金にずっと怯えて暮らすしかないからな。
仲の良い隣の里に長と官僚が話しを持っていくと二つ返事で了承してくれ、最終的にこの通路で挟み撃ちにすることにした。
話し合いが終わった里の奴らにどんなメンバーなのかを聞き、警備隊のスートーグと秘書のミルッフルがいることが解り30人なら確実に勝てるだろうと踏んだ。
俺達は、警備兵で他の奴らよりも腕っ節が強く、襲撃するメンバーに志願したという訳だ。
「エルダートレントを狩ることに成功している精鋭と自分では思ってたんだが・・・手も足も出ないとはな。」
隣のエルフの話し終わったようだ。
「それで、長と官僚達が首謀者だったと言うんですか?」
「ああ、その通りだ」
「それで、何故その話しをあなたが知ってるんですか? 長と官僚達が何を話したかなど普通は知らないと思うんですけど」
「ああ、それはな・・・」
隣のエルフは、リーダーエルフの方を見る。
隣のエルフとリーダーエルフの目が合う・・・その時、隣のエルフが頷く。
リーダーエルフは、観念した様に話し始めた・・・
「話の内容を知っていたのは、俺だ。 俺は長の息子で会議にも出ていたんだ。 頼む、俺と父はどうなっても良い。 ここにいる警備兵達は命令されてただけなんだ、助けてやってくれ」
「なるほど、そういう事だったんですか。 それで、『俺達の命の保障』と言ったんですね。 うん、良い友人に恵まれましたね。 そう言うのは嫌いじゃないですよ。 ここにいる人達と、里で家から出ないように言われていただけの人達の命の補償はします。 ですが、これからの態度しだいです。 反発や反抗をしたらどうなるかは分かりますよね?」
「ああ、もちろんだ。 絶対に逆らわないと約束する」
素直になってきたのでエルフ達の腕の骨も治し、誰も出てこなかった里へ戻り長と官僚の手足を縛り土壁の檻に入れる。
そして、何も知らずに家から出て来ない様に言われたエルフ全員に、襲ってきたエルフ達が声をかけ周り外に出て来て貰う。
1箇所に集まって貰い、土を盛り上げて台のようにして話し始める。
「皆さん、借金の主になったクラン【ソメイヨシノ】のリーダー、カナタです。 いきなりこの場に出された理由が分からず混乱していると思います。 長達から家に閉じこもってろと言われたみたいですが、その理由がなんだったのか、今から順序を経てて説明します」
賭場のことや借金の事、俺が借金の主になった事、そのせいで襲われた事や首謀者のことを言う・・・かなりざわめくエルフ達だったが、これまでのエルフの里と同じ条件で借金を返してくれれば何もしないことも説明した。
しかし、俺の説明だけだと説得力がないので、襲撃に参加していた長の息子にも証言してもらった。
ざわめきが前より大きくなり憤慨したエルフ達だったが、何とか契約変更をすることが出来た。
契約変更が終わった9の里のエルフ達が10の里へ向かってしまった・・・何となくいやな予感がする。
長と官僚をパルメントさんの里にある牢に移動したいが、人数が足らないので魔鉄にカーボンナノチューブを巻いて強化した移動用の檻に入れ10の里へ引いて行く。
10の里に着くと、長や官僚が引きずり出されボコボコにされ磔になっていた。
10の里の人達も憤慨して「殺せ!」「面汚し、死ね」などと長と官僚に罵声を浴びせていた。
エルフって平和主義じゃないの? 怖いんだけど・・・何このいらないギャップ・・・
10の里のエルフ達も集め、同じ説明をして契約を変更して行く・・・長と官僚を移動用檻に入れ、スートーグさんの案内でパルメントさんの里の牢へ案内して貰う。
その時に、石を投げるエルフもいたがそういう事はしないで欲しいと頼むと大人しくなった・・・いや、罵声が大きくなった。
仕方ないので気にしないで移動する・・・その場で犯罪奴隷にしたかったが現状では無理だ。
犯罪奴隷にするのなら、奴隷紋を刻まないといけない・・・ただ、人数が多いので持ってる物だけでは足らず作る物があるからだ。
それは、奴隷紋をかくインクだ・・・インクは魔石を入れたり毒草を入れたりと少し特殊な作り方なので、マジックボックス内の物を加工し作成するしかない。
そして、特殊インクで奴隷紋を紙に描き、紙にかいた奴隷紋を人に転写する・・・奴隷紋は魔法陣の派生系らしく特に問題なく覚えられた。
奴隷紋は冬の間に、奴隷商の人にお願いして覚えた・・・奴隷を一挙に買っている事と、陛下からの注文を紹介したことの代金として・・・
本当は奴隷紋を解除する方法を開発しようとして、教えてもらった・・・奴隷紋を解除すると魔法が使えなくなったり、死んでしまったりすると言う情報を得たからだ。
何とか、冤罪の犯罪奴隷を解放出来ない物かと頑張っている。
ゆくゆくはセードルフを解放してあげたい・・・が、手がかりは何も無い。
教えてもらったときに奴隷紋を広めたり、無闇に使わない様に言われたのは言うまでもない・・・奴隷商はやはり人の恨みを買い易いらしく、襲われる可能性が高いそうだ。
しかし、こんなところで役に立つとは・・・世の中何が役に立つのか解らない・・・