第212話 エルフの里への挨拶周り(1)
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玄関を開けると、パルメントさんのお付のミルッフルさんと森で警護に当たっていたスートーグさんがいた。
「急に押しかけて、すみません。 パルメント様からサポートするようにと言われて来ました。 何か質問等あれば遠慮せずに訊いて下さい」
ミルッフルさんはそう言うと、頭を下げる。
「すみません助かります。 正直皆さんについて何も分からないので助言を貰えると助かります。 スートーグさんは護衛ですか?」
「いや、解っているだろ? おまえ達の監視役だ。 といっても、俺1人じゃ何も出来ないと思うがな」
スートーグさんが、腕を組んで言う。
「相変わらず真っ直ぐですね。 でも、心強いですよ」
「嘘をつけ、俺達が束になっても敵わない奴に言われたくない」
「そんな事言わないで下さいよ。 頼りにしていますから」
「先に言っておくが、他の里の奴らの強さは大したこと無いからな」
「ん? 一緒に訓練した皆さんよりも弱いという事で良いんですか?」
「ああ、そうだ。 他の里の奴らは弱すぎる・・・手加減を間違えると殺してしまうから気を付けろ」
「いや、戦いませんからね。 今回は話にいくだけですから」
「そうなのか? てっきり見せしめに誰かを叩きのめすのかと思ったが」
「俺は戦わないと気がすまない戦闘狂か何かだと思ってるんですか・・・」
「ん? 違うのか? あんな戦い方をしてたから、てっきり戦うのが好きなんだと思ってたんだが」
「あれは組み手です。 体力ありますし、何より皆俺と戦いたがっていたじゃないですか・・・だから、連続で組み手しただけですよ」
「まぁ、そういう事にしておいてやろう。 それで、どこから行くんだ?」
「どこかお勧めとかありますか?」
俺の問いにスートーグさんは首を捻る。
「それでしたら、私達の里と仲の良い所から回るのはどうでしょう? その方が早く話しが済みますし」
ミルッフルさんが、軽く手を上げて言う。
「その方が良さそうですね。 いきなり行って話しすら聞いてもらえないじゃ最悪ですもんね」
「あ~・・・それはないと思いますよ。 皆さんの機嫌を損ねたら借金奴隷に出来ますから」
「あれ? そう言う契約だったんですっけ?」
「そうですよ。 でも、すぐになる訳じゃないですよ。 借金を返せなかった場合や何か不備があった場合は・・・と書いてありますし」
あらら、ちゃんと読んでおけば良かったな・・・まぁ契約更新するからいっか。
「早速ですが案内してもらって良いですか? 早ければ早い方が楽ですし」
「はい、解りました。 ではついて来て下さい」
エルフの里は全12、パルメントさんの里は抜かして11の里となっている。
裏切り者のウヌリアン族を抜かすと10の里、その10の里で借金総額の半分の紅金貨4枚の借金を分けることにした。
全里で公平に分けてしまうとウヌリアン族だけが、現金を持っているため借金が少し軽くなり、他の里より先に借金を返し終わってしまう。
それは無いだろう・・・裏切っていたのに公平にとかありえない! と心情的にもそう思う。
なので、ウヌリアン族だけで紅金貨4枚の借金にしている。
そうそう、パルメントさんの里の者にも借金があるのだが、素材のお礼と今回の里の周りにいる魔物の討伐の素材で借金を返したという事にした。
最初の里は、ランニングで近くを通った里だった・・・しかも、勝負を見ていた長の1人が治めている里だったため何の混乱も無く話が終わった。
結構身構えて話しをしようと思ったのだが、拍子抜けだった。
まぁ、キノコの栽培を中心にしている農耕民のようなので血の気が多いわけじゃないようだ。
お土産にキノコを沢山貰えたのが嬉しかった・・・余り干したりしないようなので、干しキノコを見せてスープをご馳走し驚かれた。
美味しかったのか色々聞かれ、干しキノコを作ってもらえる事になった・・・借金の返済に充てて貰えるのでこちらとしても嬉しい。
ナメコもあったが、あまり食べないようで原木ごと脇に置いてあった。
ヌルヌルするから余り好まれない様だ・・・味噌汁に後で入れようと思い回収しておく。
2番目の里に着き、話しをすると1部の若いエルフが抗議に来た・・・が、スートーグさんが前に立つと萎縮して何も言わなかった。
話しが進まなそうなので、一応言い訳を聞いて見ると呆れてしまった。
今まで通り光茸で支払いをすれば良いとか、騙されてたから借金は俺達の物じゃないとか・・・
呆れてしまって黙っていると、俺が納得したと思ったのか契約しないとまで言い始める始末。
「契約しないのは良いですけど、借金は増える一方ですからね」
「俺達は騙されてたんだ! そんな俺達から金を奪うのか?」
「じゃあ、聞きますが賭場には全く出入りしていなかったという事ですね?」
「そんな事は関係ないだろう! 騙されてたんだ! 俺は悪くない!」
「賭場に出入りしていないのに名前を書き血判を押された・・・という事ですね?」
「だから関係ないと言っただろう! 騙されてたんだよ! 人族のクソ共とウヌリアンのクソ共に」
「解りました。 じゃあ、契約の変更はしないという事で良いんですね?」
「違うだろ! 俺達を解放するのが筋だろう! サッサと解放しろよ!」
「こっちは遊びでやってんじゃねぇんだよ。 賭場に出入りしてたことも、そこで飲み食いしてたことも知ってるんだよ! しかも、ツケでと言ってたよな? その料金はどうすんだ? 無銭飲食で犯罪奴隷が良いのか? どっちでも好きな方にしてやるよ、選べ」
その後、黙って何も喋らなくなってしまったので他の人の契約を変更していった。
一応家族での借金という事にしたので、後は家族に任せるとしよう。
出て行く際に、突っ掛かって来ていたエルフが父親と思われるエルフに殴られていた。
見なかったことにして、次の里へと向かう・・・仲が良い里と言っても色んな人がいるんだし、仕方ないと言えば仕方ないのかもね。
3番のエルフの里でも同じように反発する人がいたので、同じように契約変更しないで放置した。
後は家族でどうするのかを決めてもらおう。
里を出て移動中にお昼近くになったので、少し開けた所で昼食をとることになった。
屋根だけのテントとアルミ製の椅子とテーブルを出しハンバーガーとポテトと飲み物を出す。
談笑しながら、ゆったりとした時間を過ごした。
4~6番目の里も反発する人がいたが概ね順調に話し合いが進んでいった。
7番目は、反発する人が多くいたのか不意打ちを仕掛けてきた奴がいたので、手足を折り腰にカーボンナノチューブを巻いて引きずって里に入っていった。
その姿を見た長が抗議をして来たが、こっちは丸腰でエルフ達は革鎧を着て腰にナイフ、背中に矢筒を背負っているので抗議が上手くいくはずもなかった。
エレメントマジックの修行の格好のままだったことが、結果として最良の手となった。
半数越え位の契約変更をして、里を出る事となった。
あたりは日が陰り始めていたので、無理をせずに貸家に戻る事に・・・
1日目は比較的友好な里だったが、思いのほか反発があったことを踏まえて、今後俺だけ契約変更に向かうかどうか話し合った。
案の定2人から猛反発を受けて、3人で行く事に決まった。
そんな時、パルメントさんが帰ってきた。
「おい、カナタ。 何だあの数はヤバイどころの話しじゃないだろう! まぁいい、とりあえず飯をくれ」
パルメントさんは、部屋に入ってくるなりそういう。
「とりあえず、お風呂に入って来て下さい。 生臭いですよ」
俺がそう言うと、驚きの表情を浮かべる。