第211話 ネタバラし
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「落ち着いて下さい。 どうしても聞きたいですか? 謎は謎のままの方が面白いと思うんですが」
「良いから話せ。 いったいどういう事なんだ? ギリギリの勝負をしていたあの勝負は遊びだとでも言うのか?」
「そうですね、勝負の方は遊びと言えなくもないですね。 しかし、助けた方法を聞きたいですか? あんまり手の内をさらしたくないんですよね・・・人間性を疑われるんで」
「無論だ。 どういう方法で助けてくれたんだ?」
「仕方ないですね・・・教えますけど、本当に誰にも言わないって約束してくれます?」
「もちろんだ、何度も言わなくても解っている。 なんなら魔法契約書も書いてやっても良いぞ」
「そこまではしなくても良いですけど・・・」
俺は、リッグスさんと勝負した時にルールを書いた魔法契約書を出し手渡した。
「これは魔法契約書か? あぁ、勝負の前にルールの確認をしていたやつか。 勝負が終わって一緒に破棄してたただろ? それがどうしたんだ?」
「契約更新のため破棄したんですが、この魔法契約書は普通のと少し違いませんか?」
「うん? 素材は・・・グランネッツか。 外側に模様の入った銀枠も付けてかなり綺麗だし、本文と名前のところの間にも模様入りの銀枠があるというのも凝っていて良いと思う。
後ろに付いている銀の板の下敷きか? なるほど、ボコボコしないようにと言う配慮か。
それにしても、分厚いな。 もう少し薄く・・・何! これはプラチナの板と枠だったのか!
コストを下げ、見た目にもかなり気を使っている素晴らしい契約書だと思うぞ」
「プラチナの板を使っていて、分厚いって所まではあってます。 他には何か気がつく事はありませんか?」
「いや、特にこれと言っておかしな点はないな」
「そうですか。 じゃあ、契約書を貸して下さい」
破棄した魔法契約書を返されると、名前と本文の間のプラチナのラインにナイフを入れて、ルールを書いた本文を剥がしていく。
「二重構造だと! そんな・・・プラチナの板を下に付けていたのは間のプラチナに気が付かれない為と二重の厚みから意識をそらせる為。
しかも、綺麗に加工し枠とすることで契約書同士がくっ付き繋がらないようにし、相手には気を使っていると思わせたという事か・・・」
パルメントさんは、剥がした魔法契約書を見ながらブツブツと言っている。
「そこまで考えたわけじゃないですよ。 ただ自分だったら騙されると思ったので、こんな形に作ってみたんですよ。 結果として大成功でしたが」
「ああ、俺でも騙されるな・・・しかも、ギャンブルの結果に関わらず、エルフの国の借金をソメイヨシノに譲渡する。 ギャンブルの結果の損失は支払わなければならない・・・か。 おまえの掌で全員転がされていたって訳か」
「そこまで大した物じゃないですよ。 たまたま今回は運が良かっただけです」
「コノミとミズキの2人は知っているのか?」
「いや、話してませんね。 お願いしたのは、最後の勝負と俺が言ったら紅金貨をかけて欲しいだけです」
「手紙にあったよりも恐ろしいもんだな・・・その知識を使えば、何でも好き勝手に出来るんじゃないのか?」
「買い被りすぎですよ。 そこまで万能じゃありません」
俺は苦笑しながら答える
「そう言うならそれでも良いが、全てを壊したくなったりしたらここに戻って来い。 試練の祠と言うのがあるからな」
「試練の祠ですか?」
「ああ、そんなにたいそうな物ではない。 ただの石のベットがある洞穴だ・・・一説には、古に神が闇に落ちるのを防いだとされる場所だ。 そんな資料は神の資料にも載ってなかったし、我等エルフの口伝だから、当てにはならんかも知れんがな」
「へぇ~見てみたいですね。 面白そうです」
「見ても面白い物なんてないぞ。 まぁ精神修行には使えるがな」
「精神修行ですか・・・修行したら性格が真っ直ぐになりますかねぇ?」
「そこまで歪んでいるのだから無理ではないか?」
「事実とはいえ、酷いことさらっと言いますね。 自覚してますから良いですけど」
「なるほど、自覚はあるのか。 ん? そういえば、魔法契約書にサインしなかった場合はどうする気だったんだ?」
「ネタバレはこれ以上しませんよ。 まぁ、人死にがでなかったのは運が良かったですよね」
「まさか、商隊を殲滅する気だったのか?」
「それこそまさかですよ。 俺は何もしないつもりでしたよ。 ただ、死に行くのを止めるつもりもないですが」
「どういう事だ? 何があるんだ? 意味が解らん」
「エルフを奴隷として連れて行くとしたら、どうします?」
「魔法を使えないようにして、鎖に繋いで連れて行くが・・・」
「魔法使えないエルフを連れて行けば足が遅くなりますし、魔物の格好の餌ですよね。 しかも、商隊の護衛は10人、だいたい6級くらいの冒険者・・・魔物がどのくらい来たら瓦解すると思いますか?」
「そんな物やって見なけりゃ解らんが・・・まさか、魔物の集団が!」
「様子見に行くのなら、討伐隊を組んだ方が良いと思いますよ。 遠いところだったんですけど、結構な数の魔物がいましたから」
俺は朝の鍛錬の一環で、スートーグさんと警戒を生業としているエルフ達と共に森の中をランニングしていた。
ランニングしながら索敵をする訓練をしていたのだ・・・索敵は、レーダーのような感じに映るので目を開けたままだと本当に見難い。
その時に、結構な魔物が遠くにいたのを確認した・・・倒しに行っても良かったのだが遠いし、一緒に鍛錬したいというエルフが体力切れを起こしていた為断念してそのままになっていた。
まさか、それが布石の1つに使えるとは思わなかった・・・使わなくて良かったとは思うのだが・・・
「カナタ・・・おまえは何者だ? 目的は何だ? どこまで考えている?」
「いや、今回は本当にたまたまですよ。 でも、目的はありますよ。 仲間の12人を・・・いや11人になっちゃいましたけど・・・皆を1度故郷に帰すという事です。 約束したんでね」
「そうか、約束か。 その約束が無かったとしたら・・・重荷が何も無かったら・・・と思うとゾッとするな」
「それはどうでしょうか・・・たぶん、自分が生きていけるだけを稼いでゆっくり過ごしたと思いますよ。 選択を間違えない唯一の方法は、選択をしないことだと思ってますから」
「そうか・・・そう思っておこう。 さて、討伐隊を組むとしよう」
「今からですか? もう深夜ですよ?」
「明日は、おまえ達が全員に挨拶するんだろ? そうすると、俺達しか動けるのが居ないだろう」
「ああ、そっか。 そういえばそうでしたね。 じゃあ、先に寝ます。 朝ご飯とお昼は誰かを寄越してくれれば渡しますから」
「ああ、頼んだぞ。 おやすみ」
真っ暗の中、貸家に戻りシャワーに入りベットに倒れ込むとすぐに寝てしまった。
「カナタさ~ん、起きてくださ~い。 お~い」
「ん? おはよう。 何かあった?」
「疲れてるところ申し訳無いんですが、お腹が減りました。 朝ご飯良いですか?」
「あれ? もう朝? あっちゃー、すぐに用意するね。 起こしてくれて、ありがとう」
朝ご飯を食べている時に、ご飯等を俺1人で持ってるのは不便だという事で、冷蔵庫を設置し中に食料を入れておく。
冷蔵庫は魔力の消費が激しく、グランネッツの魔石とフラーレンで作成した魔晶石に魔力を一杯に入れても1日くらいしか作動しない。
回路の素材が銀しかなかったのでそうなってしまった・・・出来れば金で作りたかったが、素材がないとのことだった。
素材がいっぱい欲しい・・・やっぱりダンジョンに潜った方が効率よさそうだし、帰ったら行ってみるかな。
まったりしていると、パルメントさんの使者の人が訪れマジックバッグの中にお弁当等を入れておいた。
皆で食べるかもという事で、スープ等も鍋ごと入れておく。
一応、使者の人に食べ物の名前とどんなものかを書いた紙を渡しておいたし大丈夫だろう。
「さて、俺達も借金を貸してるエルフの人達に会いにいきますか」
「「はい(了解です)」」
全員準備を整え出掛けようとした時に、訪問のベルがなる・・・誰だろう?




