第210話 マジックバッグ作成の危険性
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「何が欲しいんだ? 出来る限りの事はするつもりだ」
パルメントさんが、腕を組んだまま言う。
「簡単な事ですよ。 マジックバッグの作り方を教えて下さい」
「やはりか・・・マジックバッグは危険だと言っただろう。 下手をすれば世界が滅びることになるんだぞ?」
「それはなんでなんですか? 説明されていないのに諦められませんよ」
「解った。 話すなら2人だけで頼む」
「解りました。 では、リッグスさんとの契約を先にしましょうか」
紅金貨1枚を返してもらい、紅金貨55枚を【ソメイヨシノ】からの借金として再契約をした。
紅金貨をそのまま貸してても良いと言ったのだが、苦笑いをして返された。
プライドなのかなんなのか全く解らなかった。
借金の主は俺だけでも良かったのだが、コノミちゃんとミズキさんが何かされたらかなわない。
なので、クランからの借金としてもらった。
残りの契約していたエルフの再契約も早めにやらないと面倒なことになる・・・契約上、何らかの理由がなければ利子が1月で4割になっているしね。
俺に移行した時点で全員一気に変更しようとしたのだが、契約書全員の血判が必要のようだ。
全く面倒な・・・一応個別に契約変更出来るようになってるので大丈夫だが、忘れたりしたら大変なので、出来る限り早めにしよう。
リッグスさんを含めた全員で、食事をする・・・前に作りすぎたサンドイッチを出しただけだが、美味しい美味しいと喜んでもらえた。
そこで、簡単にゲームのネタバラしをした・・・特に凄い手ではないが、1歩間違えれば負けていたと言うことに驚いていた。
その後、俺とパルメントさんの2人はジリコテさんの工房の1室へ。
「さて、ここで良いだろう。 まず最初に昔話を聞いてくれ」
「昔話ですか? マジックバッグとどんな関係があるんですか?」
「まぁ良いから、聞いていけ・・・老人からのアドバイスだと思ってな」
◆◇
まず俺は、転生者だ・・・と言っても、おまえ達と別の星出身だがな。
そこで俺は、スペースコンディショナーとして働いていた・・・どんな職かはそこまで覚えてないが、宇宙空間のゴミ清掃をしていたと思う。
まぁそれは良い、俺は宇宙で死んでしまいここに転生した。
それに気が付いたのは2歳になったときだった・・・最初は訳が分からなかった。
しかし、死んだときの記憶が残っていて納得せざる終えなかった・・・そこで、第2の人生を謳歌することに決めた。
その時に気がついた・・・自分が女に生まれ変わってしまったことを・・・
それでも前世の記憶があることが優位に働いていた・・・簡単に言うと神童と呼ばれていたんだ。
魔法も体術も色んな経験のあるのですぐに使うことが出来た。
まぁ、得意属性の無と普通に使える光と闇の3つ以外の全てが苦手属性なので使えても余り意味は無かったがな。
そしてそのまま大きくなり、光と闇のエレメント使いとしてこの国を出た。
エルフは強力な魔法使いとして有名だったから、パーティーの誘いに困った事はなかった。
そのお陰でそれなりに有名となり、ダンジョンの案内や革製の防具やバッグを売って暮らしていたんだ。
金も溜まり、装備を買いにドワーフの国に行き、そこで稼ぎ始めた。
そんな時にティンバーに会ったんだ・・・気性が荒い獣人なのに、優しく気の良い奴ですぐに仲良くなった。
2人でパーティーを組むのに、さほど時間がかからなかった。
そのパーティで色々な所に行き、冒険した・・・他メンバー達ともその最中に知り合っていったんだったな。
あぁ、すまん・・・脱線してしまったな。
そして、仲間の死を乗り越えLv100になったときに、スキルの使い方と無属性魔法を思い出したんだ。
あぁ、思い出したと言ったのは、使い方は元から知っていたが忘れていた感じだからなんだ。
スキルの使い方は、亜空間に自分のスペースを作るという物で、無属性魔法はそのスキルをバッグに付与させることが出来ると言う物だった。
驚いたよ・・・だが同時に、これで食糧問題がほとんど解決出来ると思った。
そうだろう? 大量に食料を運ぶのにはコストがかかる・・・だが、マジックバッグを持った人を使えばコストなんて殆どかからなくなる・・・
パーティー全員でエルフの国に行き、実験をおこなった。
何個ものマジックバッグを作っていった・・・が、1度もちゃんとしたマジックバッグが出来なかった。
何故か1つのピースだけが足らないようなそのような感じだった。
練習すれば何とかなると思い、寝る間も惜しんで作り続けた。
持っている素材の中で1番ランクの高い幼竜の皮が無くなり、どんどんランクの高い物から順に無くなっていった。
それでも仲間達は、応援してくれた・・・その期待にこたえようと、もっと努力をした。
今思うと何故そんなに焦っていたのか、時間をかけ考察しゆっくり作っていけば良かったのに・・・と。
マジックバッグを作っている最中に魔力切れに陥り気絶してしまった。
夢だったのかもしれないが、黒い空間に入り何かを聞いた気がしたんだ・・・それで最後のピースが埋まった。
気がついたら、作りかけのマジックバッグから魔物の腕が出てきていた。
魔力もまだ回復して無かったのもあり、仲間を呼んだ。
それが死闘の始まりだった・・・里のエルフ達も手伝いマジックバッグから出てくる魔物を倒していった。
しかし、どんどん増えてきた・・・俺達は、強行手段でマジックバッグを斬ることにした。
結果としては成功した・・・が、その切ったマジックバッグが黒い塊になり木と融合した。
それが、この国のダンジョンの成り立ちだ。
その後、ウェーブで活躍し英雄となった時、ダンジョンの管理と知識をお願いした。
その時に解ったこと何だが、管理神達が亜空間に魔王を結界を用いて封印している事を知った・・・マジックバッグの作成の失敗で、その結界と亜空間に無理やり穴を開けてしまったという事も解った。
知識をきっちり学ぶと、そのような失敗はしなくなったがマジックバッグの作成がどれほど危険かという事が解った。
今考えても、マジックバッグが暴走したあの時壊せなかったらと思うとぞっとする・・・この国はおろか世界すらも壊れていた可能性があるからな・・・
◆◇
「老人のたわごとと言っても良いが、本当にマジックバッグ作成は危険なんだ。 おまえ達がいくら強いと言っても多勢に攻められれば・・・解るだろ?」
「なるほど、それでも俺はマジックバッグを欲します。 どうか、教えて下さい」
俺は頭を下げる。
「解った。 恩を受けたのに返さないのは駄目だろうしな・・・しかし、試験を受けてもらう」
「試験ですか? どういったものでしょうか?」
「まぁまぁ焦るな。 この国のダンジョンをクリアしてもらいたい、クリア出来れば合格、できなければ不合格ってことだ。 良いか?」
「はい、その位なら問題ありません。 クリアするのはすぐじゃなくて良いんですよね?」
「ああ、特に期限はない。 頑張って見てくれ」
「了解しました。 では、エレメントマジックの指導も引き続きお願いします」
「ああ、任せておけ。 その代わり、飛びっきり美味い飯を頼むぞ」
「それは任せておいて下さい」
話が終わり帰ろうとした時、声かけられる。
「そうだ! 聞きたいと思っていたんだが、勝負で負けたらどうするつもりだったんだ? 今回は上手くいったが、相手が1つ手を加えたら駄目になってたんだろう?」
「負けても何もしませんでしたよ? たぶん悔しがるとは思いますが」
「ん? 助けてくれと言ったのはこっちだが、それは些か無責任ではないか?」
「いやいや、待って下さい。 もしかして、ギャンブルでエルフを助けたと思ってます?」
「はぁ? 違うのか? どう見てもそうだと思ってたんだが」
「あぁ、ギャンブルはあくまでゲームですよ。 エルフを助けるのとは無関係と言えますよ? だって、ギャンブルの前にエルフの人達は助け終わってたんですから」
「おい! どういう事か詳しく教えろ!」
パルメントさんが荒げた声で言う。