第18話 お屋敷
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6/13 改稿あり 加筆あり
『今日はもう遅い、この屋敷は祖父がウェーブに向け建てた屋敷だ。部屋は余っているから好きなところで休め』
『お気遣い感謝します、フランソワーズ様』
「えっと、今日はこの屋敷の中に泊まってもいいみたい」
皆は、「疲れたー」「やったー」とかはしゃいでいる。
屋敷はかなり大きく、入り口から入って目の前に階段があり、左右に分かれるみたいだった。
階段を前にして、右側が女性、左側が男性となった。
左右の部屋で変わりはないらしいので特に問題はない。
フランソワーズ様が呼んでるのか? 手招きしてるように見える。
『何でしょうか? お呼びですか?』
『うむ、この屋敷の事を言っておこうと思ってな』
ん? 今日泊まるだけなんだから説明なんて要らないはずじゃないのかな? 宿泊費かな?・・・なんて事を考えていると、
『変なことではない。むしろ両方に利益があるものだ』
『何でしょうか? 全く予想も出来ません』
階段下にある1つのへ部屋に案内される。階段下収納と言うのが1番しっくり来る部屋に、台みたいな物があり、ミラーボールの透明版のような物が上に乗っかっていた。
『まず、この家はマジックハウスだ』
『マジックハウス? ですか?』
『そうだ、魔力を補充して水や火などを作り出し、壁なども自動で修復してくれる。空間拡張魔法もあるので、部屋数なども変更できる最高の家だ』
『すごい! めちゃくちゃ便利じゃないですか!!』
『そうだろう! そうだろう! 自慢の家だ・・・だが、難点がある・・・』
『難点ですか? こんなに便利なのに』
『うむ・・・魔力の消費が大きすぎるんだ・・・ウェーブ時に兵士や冒険者を泊まらせるために、家を拡張させすぎてしまった・・・この家は、拡張は出来るが縮小は出来ないのでな』
『なるほど、魔力が切れるとどうなるんですか? 便利機能が使えなくなるとかですか?』
『魔力が切れると、壊れる・・・いや、崩れるんだ』
崩れちゃうのか・・・いきなり崩れたら危ないよなぁ・・・周りに人が居たら大変だ。
『そこで・・・だ、すまぬが魔力の補充をしてみてくれないか?』
『それはかまいませんが、どうやって補充するのか解らないのですが・・・』
『注ぐように意識するだけだ。注ぎすぎて魔力がなくならないように気をつけてくれ』
『魔力が無くなったらどうなるんでしょう? 前に言ってたように最悪死んでしまうとかですか?』
『いや、頭痛・めまい・吐き気・身体が動かなくなり、そのあとは気絶だ・・・外で気絶すれば死ぬしかないからな・・・危なくないように注意しただけだ』
『なるほど、そうだったんですか・・・では、注いでみますね』
ミラーボールに手を当て水を注ぐように意識してみる。
身体から吸われている感じが解る・・・三分の二位注いだような気がするところまで注いでみたが、全く身体に変化がない。
『魔力ってどのくらい注ぐと頭痛とかしてくるんですか?』
『20%切った位から軽く痛くなると言う感じだが、人それぞれだ』
『魔力量が多い人でもですか?』
『うむ、エルフ族が言っていたので間違いないだろう』
会話しながらも、ゆっくり注いでいくが全く頭痛とかに襲われない・・・なんでだ?
そろそろ魔力がなくなる気がするんだけど・・・何事もないな・・・
『魔力切れを起こしても大丈夫な人っています?』
『居ることは居るが・・・英雄・・・壁を越えた者のみだぞ?』
『壁を越えた者? なんですか? 仰々しい呼び名ですけど』
『Lvは無限に上がっていくと言われているが、99から100に上がる時に壁があるんだ。壁を越えたものは、後の世で英雄と呼ばれることが多い・・・なので、みな総じてLv100になる事が出来た者を英雄と呼んでいる・・・本当は、ウェーブで群を抜いて活躍すると英雄と言われるんだがな』
『なるほど、勇者になるなら、最初の目標として英雄を目指すのがいいって事ですね』
『はっはっは、そうだな、勇者を目指すなら、そのくらいは登竜門と同じで軽く越えなければならんだろうな・・・しかも、ウェーブで活躍して英雄になると、簡単な願いならかなえてくれると言うぞ。この国もそうやって出来たとされているしな』
あ・・・全部持っていかれた・・・会話に集中しすぎた・・・でも、なんともないな・・異世界人だからか? なんか特殊な理由でもあるのか?・・・分からんね。
『一応終わりましたけど、どうでしょうか?』
『おお! すごいではないか! どうなっているのだ? いや、聞くのはよそう・・・1週間保持する程度の魔力量が入っているとは・・・カナタよ、この家を1年間貸したいと思う。どうだ? かりてくれぬか?』
『え?・・・かりる? 貸して頂けるんですか? お金持ってませんけど・・・』
『いや、金を要求する気は無い・・・ただ、かりて欲しいのだ・・・今の現状では魔力をこの家に注ぐのは難しいのだ。魔力の補充の依頼を他国にすると、この国が弱っていると勘ぐられかねんしな・・・』
『なるほど、そういうことですか・・・私共が魔力を注ぎ家を維持する代わりに、住んでもいいということですね』
『そうだ。兵士が魔力を注いでしまうと、戦闘で使えなくなってしまう。モンスター共がいつ来るか解らない現状では、家を捨てるしかないんだ・・・どうだ? 双方に利益があるだろう?』
そう言いながら、にっこり微笑む・・・この家に思い入れが多いのだろう、安心したように微笑んでいる。
魔力切れまで注いでも、身体の変調としては少し体が重くなった程度だから気にする事も無い。
魔力を限界まで使うと魔力が増えるって言うし・・・漫画だと・・・この世界に当てはまるか知らないけどね。
『こちらとしては願ったり叶ったりです。よろしくお願いいたします』
『そうか! そうか! Lvを1にすればもっと魔力が増えるだろう。明日、皆と協会に行きLvを上げてきたらいい』
え? Lvって勝手に上がるタイプじゃないの? まぢ? 俺まだLv0なの・・・なん・・・だと・・・
『そうですね、会話も通じませんから仲間と一緒に行こうと思います・・・Lv上げた時に痛みとかってありますか?』
『あるぞ。ただ、一気に上げた時だけだ。1日1Lvなら特になんとも無いはずだぞ』
『そうなんですね、またあの痛みが来るんじゃないかとヒヤヒヤしました』
『あそこまで痛がるのは初めて見たな。気絶した時死んでしまったかと思ったぞ』
『お騒がせしました、本当に』
『うむ。では、屋敷のサブマスターの任命をするぞ! 手を出せ』
『サブマスターの任命ですか?』
そう言いながら手をかざす。
『1人のマスターと、20人のサブマスター、大勢の鍵管理登録が出来る。
マスターは機能の全てを使え、サブマスターは拡張以外のものが使えるが、サブマスターの登録・抹消はマスターしか出来ない。マスターが居なくなった場合はサブマスターの古い順にマスターに繰り上げられると言うことだ』
『鍵管理登録とはどんな物なんですか?』
『鍵管理は、開けられる扉を指定してキーを登録する形だ。例えば玄関と自室として使用する部屋の1室のみ開けられるように登録すると言う感じだ。わかるか?』
『はい、サブマスターにも鍵管理登録は出来るんですよね?』
『もちろん出来る。ただ登録・抹消にも魔力が必要だ・・・水を使う火を使う何をするにも魔力が必要だ』
『魔力は全員で注ぎますので大丈夫なはずです。安心してください』
『よし、サブマスターの任命が終わったぞ』
『部屋1つずつに鍵がかけられるということは、部屋に誰も入れないんじゃ?』
『安心しろ。現在は玄関以外の全部屋の鍵が開いている。普通の扉と一緒だ』
『良かった、取り乱して申し訳ありません』
『よい、気にするな。もう遅いので寝るとしよう』
『はい、お休みなさいませ』
思わぬ収穫となったなぁ。皆も助けられたし、家もただで借りれたよ。
1つ気になるのは、金貨の価値・・・結局いくらなんだろう?
買い物の時解るだろうし気にすることはないか。