第207話 賭場(3)
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昨日と同じように俺はポーカーをして、ディーラーとリッグス・グンスット会頭と仲良くなることを目指し、コノミちゃん達はブラックジャックで馬鹿勝ちしてもらう。
そんなこんなで、最終日・・・運命の日となった。
最終日前のエルフの借金は、紅金貨5枚ほど・・・コノミちゃん達が馬鹿勝ちしてくれたが、俺達の金額は紅金貨4枚まではいけそうというところ。
何とかなりそうと言えなくもないが、物納だとギリギリと言ったところだろう。
鑑定自体が、相手次第だと言うデメリットを抱えているのだから・・・
「いや~、リッグスさん楽しかったですよ。 しかも、良いお話も聞けました」
「いえいえ、カナタ様。 私の方こそ、あの1級冒険者クランである【ソメイヨシノ】と知り合う機会に恵まれたことに、神に感謝したいですね」
「はっはっは。 そう言っていただけると、こちらとしても嬉しいですよ。 それで、率直に聞きますがエルフはその後どうなさるおつもりで?」
「私どもの仕事は多種多様。 必要とされているお客様の所までお運びするだけですよ」
「なるほど。 では、私が必要としている場合は融通していただけないですかね? もちろん、お金はきちんと払いますよ。 馬鹿勝ちしていた3人は、私の仲間なので」
「今回は、先約がありますので・・・いや、どのくらい必要としているかによりますね」
「なるほど、私の心しだいという事ですか。 なるほど、ではギャンブルをしませんか? 場代は、これでいかがでしょう?」
俺はサイフから紅金貨1枚を取り出し見せて言う。
「はっはっは、豪胆な方だ。 私はそんな物を見せられたら受けざるを得ないじゃないですか」
第一関門クリア、血を見なくて済みそうだ。
「それは良かった。 しかし、ギャンブル中は手加減無用でお願いしますよ。 簡単に勝てる勝負等つまらないですから」
「それはもちろんです。 またポーカーで勝負をしますか?」
「いえ、ブラックジャックで勝負しませんか? 親と子の勝負ではなく、両方、子としての勝負でいかがですか?」
「ええ、良いですよ。 では、こちらにお願いします」
俺は、家に案内される・・・中に入ると、俺の貸家より数倍も良いマジックハウスだった。
そこの中で、今回のルールについて話す・・・場代を物凄い出したので、変なルールじゃなければ俺が決めても良いという事になった。
◆◇
ソメイヨシノとグンスット商会の勝負は以下のルールが適用される。
1.ディーラーは、ポーカーで世話になった人に頼む。
2.カードは今まで通り3セット分を使い、シャッフルせずにカードを使い切る。 また、途中で終わらす事は出来ない。
3.カードが無くなったら、今まで使ったカードをシャッフルしカードを引く、だがその勝負で試合は終わりとする。
4.ゲーム開始と宣言された後のイカサマは、見つかった時点で勝負は終了。 イカサマを行った方へ罰金を科す。
5.ローカルルールで5カード以降、カードを引く度に掛け金の2倍の支払いになる。(5カード2倍、6カード4倍、7カード8倍となる)
6.両方が子なので、両方バースト、同数字などはドローとする。
7.プレイヤーは最大2人、カードを配るのも引くのもプレイヤーのカナタからする。
8.片方がバーストして負けた場合は、倍の支払いとなる。(銀貨1枚賭けていた場合は、負けた方は銀貨4枚の支払いとなる)
9.賭けた人に対し、負けたプレイヤーは金額を払う義務を負う。
10.お金が足りなくなった場合は、10日で1割の利子を負う。
11.休憩やトイレなど、その他の事は全て自由。
以上の物をルールとする。 ルールを破った者には罰金が科せられる。
罰金は紅金貨100枚とし、全ての支払いは基本現金のみとする。
「このような感じでいかがでしょうか?」
俺は、書いた魔法契約書を渡す。
この魔法契約書は穴が多い・・・これで了承してくれれば楽なのだが・・・
「基本はブラックジャックのルールで良いという事ですか?」
「ええ、解っていると思って書かなかったんです。 ローカルルールの6カードやバースト等は大丈夫ですか?」
俺は、笑顔で言う。
「ええ、この方が面白い勝負ができそうです・・・が、1つだけ加えても良いですか?」
「はい、どうぞ」
「掛け金の最大は、大銀貨として下さい。 余りにも大きいと、大変な事になってしまいますから」
「はい、解りました。 じゃあ、我々の掛け金は大銀貨1枚までという事で」
「ええ、それ以外は大丈夫です」
12.プレイヤー2人の掛け金は、大銀貨1枚とする。 増やすことも減らす事も出来ない。
最終的にこれが加えられ、2人がサインし血判を押す。
よし、これでゲームが出来るな・・・しかし、ずいぶんと警戒しないもんだな。
まぁ、俺も10億あげるからカードゲームしない? と言われたら喜んでホイホイついていくけど。
「勝負は今すぐ始めますか? それとも軽く何か摘みますか?」
「何か摘んでからにします。 それと仲間を呼んで良いですか? お腹すいてると思うんですよ。 食べ物等は、私のマジックボックスにしまってありますので」
マジックボックスと言うと少し驚いた顔をされたが、すぐに笑顔に戻る。
「解りました。 では、私共で呼びましょうか?」
「大丈夫ですよ。 連絡を取れる魔道具を持っていますので・・・少し席を外しても良いですか?」
「ええ、見られたくない物でしたら隣の部屋をお使い下さい。 私はここで軽食をとろうと思います」
「解りました。 ですが、隣の部屋をお借りするまでもないです。 鈴の音がなるだけですから・・・しかし、トイレをお借りしてもよろしいですか?」
鈴の音がなる魔道具、仲間の鈴は結構有名な魔道具だ・・・と言っても、自作する物ではなくダンジョンで取る物なのだが・・・
宝箱の中には6個の鈴が入っていて、1つの鈴に魔力を込めると同じ宝箱の中に入っていた鈴がなる。
しかも、持っている本人しか聞こえず相手の位置の方角から鳴る優れもの。
結構高値で取引されているが、1級冒険者なら持っててもおかしくないだろう。
「はい、どうぞ。 ご案内をしてあげて」
リッグスさんはそう言うと、隣の男が礼をする。
トイレに入り、メールで商会の屋敷にいることを送り来て貰う。
メールを送り終わると屋敷の中がうるさくなった・・・何があったんだろう?
トイレを出ると、外で待っていた男が説明してくれる。
「現在エルフの長達が文句を言いに来ています。 今更言っても仕方ないと言うのに・・・」
「なるほど、だから騒がしいんですね・・・しかし、散々遊んでから文句ってのはどうかと思いますね」
「そうですね、私もそう思います。 では、戻りましょうか」
2人で先程の応接間っぽいところへ戻る。
雑談をしながら2人を待っていると、到着したと知らせが来る。
「すみません、お待たせしました」
コノミちゃんが頭を下げるとミズキさんも頭を下げる。
「2人とも、早速だけど何か食べる?」
「何ですか? その唐突な誘いは・・・せめて何故呼ばれたのか説明して下さい」
「ごめんごめん。 エルフの奴隷を買いたいなって言ったら、駄目って言われちゃってね。 どうしても欲しいと言ったらギャンブルで勝負しようってことになったんだよね」
「嘘ですね。 どうせ負け越してたから、リベンジでもしようと思ったんじゃないですか?」
「あ、ばれちゃった? まぁ、お金はあるんだし良いじゃない・・・てことで、ご飯いる?」
「要りますよ。 BLTサンド下さい」
「了解しました。 ミズキさんも一緒の物で良い?」
俺がそう言うと、1度頷いた。
さて、これで役者がそろった。
後は、ゲームをするのみ・・・面白いギャンブルになればいいな。
俺は下を向き手で隠しながら、ニヤリと笑う。