第204話 とば
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設計し直して解った事は、幅と高さは1m以内で何とか出来る。
だが、長さは1mじゃ如何しても足らない・・・こりゃあ、相談した方がいいなもな。
「すみません、ジリコテさん。 ゴーレムの件で相談したい事があるんですが」
「ん? 何だ? やっぱり3人一緒に作りたいって事か?」
ジリコテさんが腕を組んで言う。
「いえ、実験的に作っていた魔道具にゴーレムの技術を組み込んで見ようかと思いまして」
「ほぉ、それで何をして欲しいんだ?」
「大きさを少し大きくしてしまっても良いですか?」
「それは構わんさ。 あれは目安であって絶対ではない。 好きな様に作ってくれて構わない」
「ありがとうございます。 早速作ってみます」
俺は了承を受け作りに戻ろうとすると呼び止められる。
「あ、待ってくれ! 大きさなんだが、2㎥くらいだよな? 昔に7㎥クラスの者を見せてきた奴がいてな・・・少し気になってるんだが」
「全長が少し長くなるくらいですね。 あ、そうだった。 自分で持ってきた素材も使って良いですか?」
「ああ、別に良いぜ。 パルメントさんの頼みだしな」
その後挨拶をして、貸家に戻る。
工房の1室を使っても良いと言われたが、今まで1人で作ってきたのもあって1人の方が落ち着くので貸家の1室を使っている。
もちろん後の2人も1室ずつ工房として使用している。
2人がどんな作品を作るのか楽しみだ。
バギーのボディをトレントの木材で作る・・・トレントの木材は鉄よりも脆いのでカーボンナノチューブで巻いてトレントの樹脂で固める予定だ。
こうすれば、鉄よりも硬く軽い物になるはず・・・その前に、トレントの木材を薄く切りスジが交互になるように並べて接着剤を塗り圧縮し接着させる。
その木材をバギーの形に合わせて切断し、鑢で綺麗に削る。
擦れて消耗する場所や木材同士を繋ぐジョイントは魔鉄を使う。
自分で考え自分で走行するバギー・・・ゆくゆくは、ウルフローナ国で電車やバスの様に走らせたい。
料金もちゃんと回収し、その利益の一部を学校の設備充実、育児支援に回したい。
料金をタダにする事も可能だが、将来的にみれば愚の骨頂になるだろうし。
木材を圧縮していると、夕食の時間近くになってしまった・・・さて困った、何も考えて無かったぞ。
「カナタ! 夕食だぞ! 今晩は何を食べるんだ?」
「ん~・・・何か食べたい物ありますか? お肉以外で」
「肉以外に食べたい物等ない! 肉が食べたい!」
「またですか・・・そう言えば野菜とかって持って来て貰えました? 持って来てくれるって言ってましたよね?」
「それは抜かりない。 他国からの贈答品も持って来たぞ」
「え? それって大丈夫なんですか?」
「そのそもこれは光茸の礼なんだ。 光茸を育てている俺達が貰って何が悪い・・・というよりも、誰も食べぬ物だからな」
「それなら良いですけど・・・キッチンで野菜を見せて下さい。 それを見てから、お肉料理を考えますよ」
「うん、頼んだぞ!」
キッチンに行き野菜を見せてもらう・・・アボカドやパプリカ、唐辛子、昆布、そして米があった。
他にも野菜やキノコやその他の香辛料等もあり物凄いありがたい・・・が、虫や幼虫の干した物等もありそれは返しておいた。
「パルメントさん、こんな量本当に貰ってしまっても良いんですか?」
「もちろんだ。 ここに持って来た物で1割もないから遠慮するな」
「ありがとうございます。 持ってきてもらった材料から、ファヒータでも作りますよ」
ファヒータは、日本で余り知られていない食べ物かと言えばそうではない。
トウモロコシの粉で作ったトルティーヤに肉や野菜を巻いたものだ・・・肉野菜炒めを巻いた食べ物と思ってもらえれば良いと思う。
同じような料理が色んな所にあるし、料理名が変わっていても間違いじゃないし問題でもない。
だが、頼まれたときに違う物を作ってしまう可能性があるから、名前を統一しておいたほうが良いとの事だった。
一緒に料理したりするから、同一の認識をしておいた方が何かと都合が良いのだろう。
「美味いなら何でも良い。 頼んだぞ」
「はい、了解しました。 きっちり作りますから待ってて下さい」
折角なので野菜も多く取れるように作ったのだが、かなり大きくなり食べにくそうだ。
仕方なく食べ易いように1cm位に切ったら、太巻きのようになってしまった。
ちょっとやりすぎたかな・・・しかし、味は甘辛くビール等に合う味に仕上がっているので文句はない。
タダシさんと一緒に冬にエールの酒造所を訪ね作り方を習い、作成したエールを出すべきだろう。
ホップが手に入らなかったため使用していないエール・・・香りが甘く濃厚な味わいの物。
エールはそこまで冷やさない方が香りが良いと言っていた・・・はず・・・1人で晩酌しないからあんまり覚えてないんだよなぁ。
俺とパルメントさんはエールをそのまま、ミズキさんにはオレンジジュースを加えてビター・オレンジにして出す。
コノミちゃんにはジュースをだしてあげた・・・この世界じゃ成人です! と言っていたが、却下した。
午前中は、鍛錬、朝ご飯、魔法の訓練。
正午にお昼ご飯、ご飯が終わったら色々疑問に思った事等を聞く質問タイム。
午後はゴーレムの試作、センサー類の作成方法や取り付け方のレクチャー等をして貰うと言うルーティーンが出来て数日。
ゴーレムの試作も殆ど終わり、後は調整等を残すのみとなる・・・エレメントマジックは、切っ掛けすらまだ掴めず・・・
そんな時、パルメントさんが朝早くに駆け込んで来た。
「あれ? おはようございます。 まだ朝ご飯じゃないですよ?」
「え? ああ、おはよう。 じゃ無くって! 賭場が・・・賭場が立っていたんだ!」
「トバ? 鮭とば・・・じゃないですよね? トバってなんです?」
「賭場は、金をかけてゲームするところだ。 なので、今日の魔法の訓練は中止する」
「解りました、皆に伝えておきます。 あと俺達も行きたいので、場所だけ教えて下さい」
「後で使いを寄越す。 朝ご飯は、簡単に摘める物を頼む」
それだけ言うとパルメントさんは走って行ってしまった。
もしかして、朝ご飯の催促に来たんじゃないのか? いや、まさかなぁ・・・
とりあえず、2人を起こしてキッチンへ向かう。
指示どおり、簡単に摘めるサンドイッチを作る・・・卵、ハム、チーズ、トマトやきゅうり等の野菜類、ポテトサラダ、コロッケやメンチカツ等の揚げ物類、様々な具材を挟んでいく。
ホットサンドも作り、ジャムや生クリーム、フルーツを挟んだデザートサンドも作った。
これだけ作れば、大丈夫なはずだ。
3人でサンドイッチを摘みながら、使いの人が来るのを待つ・・・が、少し遅い。
暇なので、工房へ行きゴーレムをいじり始めて1時間もしないうちに来訪の合図が鳴り響く。
扉を開けると、お淑やかそうな見た目のエルフの女性がいた・・・おお! 可愛い。
しかし、エルフってワンピースミニスカートじゃないのか・・・パンツを穿いてるのはファンタジーを冒涜してると思うんですよね。
「遅くなってすみません、パルメント様に頼まれて来ました。 ミルッフルと申します」
迎えに来てくれた女性は、笑顔の可愛い女性だった。
「はい、私はクランソメイヨシノのリーダーのカナタと申します。 よろしくお願いします。 他の2人を連れて来ますね」
貸家の中に戻り2人を連れてくる・・・コノミちゃんが木材を削ったカスで汚れていたが、風で吹き飛ばしておいた。
さて、この世界のギャンブルってのはどんなもんなのかな?
全く知らないゲームとかやっているのか、それとも地球でもやっている奴なのか・・・物凄い楽しみだなぁ