第202話 魔物と魔王
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次の日は小雨が降っていた。
小雨の降る中ミズキさんがエレメントマジックの練習に出掛けるのを必死に止めた。
いや、未だに止めていると言うのが正しいかもしれない。
「そろそろ諦めない? マジックハウスだから出口は1つしかないんだし」
「あの・・・すみません。 やはり練習したくって」
「切っ掛けすら掴めてないんだから1日休んでも一緒だよ。 あと、この屋敷にも少なからずコアがあるって言ってたし、それを見つけてみたら良いんじゃない?」
「解りました。 諦めます」
素直に部屋へと戻って行く・・・この光景見るの何度目だ?
はぁ・・・不意に、溜息が出た。
今の時間は、朝の鍛錬を開始するための準備運動をしているくらいだろう。
さて、何をしよう? そう思ったが何も思い浮かばず時間が過ぎる・・・折角だし色んな物の復習をしよう。
そう思い新しいことを考えずゆっくりお茶を飲み、自分のノートを開いて読んでいる・・・贅沢な時間の過ごし方だな。
そんな贅沢な時間の使い方をしてると、パルメントさんが朝ごはんを食べにやってきた。
「さあ、朝だぞ! カナタ! 朝ごはんは何だ? 肉か? 肉なのか?」
朝一番から元気だな・・・見た目的には30代後半の女性が、小中学生の食べ盛りの子みたいな言動をしないで欲しい。
「朝から元気ですね。 朝ご飯のメニューは考えてませんでしたけど、肉以外でリクエストはありますか?」
「そうだなぁ・・・それならば、手紙にあった餃子が食べたい! 野菜も入ってて、しかも肉汁が凄いとかいてあったぞ」
だから、肉以外でのリクエストを言って欲しいんですけど・・・
「わかりましたよ。 餃子は晩御飯が良いでしょうから、朝ご飯は昨日言ったように山菜の天ぷらを作りますか」
「おう! 良いぞ良いぞ! 早速作ってくれ」
「解りました。解りましたから、焦らないで下さい・・・って、あの。 俺たち帰った後の料理どうするんですか?」
「前に戻るだろうな・・・俺も拠点をウルフローナに移すかな・・・」
「それも良いかもしれませんが、俺達が帰る前に誰かに料理を教えましょうか?」
「本当か!? でも、良いのか? 料理レシピなどは、調合のレシピと同じで財産なのだろう?」
「ん~・・・そうかも知れませんが、レシピを教えた事によって他の人が新しい料理を生み出すかも知れないじゃないですか。 それを見て味わって、料理を盗んだ方が利益が大きいでしょう?」
「そうか、なるほどな。 そう言う考え方もあるもんなんだな。 今まで色々やって来たが、まだまだ未熟だったようだ」
「未熟かどうかは解りませんが、俺も初めて聞いた時驚きましたよ」
「何!? カナタの考えでは無いのか? 心底感心して損をした」
「はっはっは、1つの考えを知る切っ掛けになってよかったじゃないですか。 では、天ぷらを作りに行って来ますね」
そう言うと朝ご飯を作りにキッチンへ・・・
フランソワーズ様も、パルメントさんもなんかずっと一緒にいるよなぁ・・・美人だから良いんだけど。
お、端の先から小さい気泡が出てきたな・・・
天ぷらを美味しそうに食べるのは良いのだが・・・やはり和食にはご飯が欲しい。
ご飯と言えば、タダシさん達は大丈夫かな?
まぁ、亀の甲より年の功だよな・・・俺に解決出来ない事でも色々何とかしてくれるだろう。
「カナタ、そう言えばこの世界の事を聞きたいと言ってなかったか?」
「はい、疑問に思ってる事が結構ありまして・・・」
「何だ? 言ってみろよ。 これでも俺は、レティア様の所で知識を学んだ事があるんだぞ?」
「あの、俺達の体の中に入っているナノマシンを作ったのも、スキルをギフトにしたのも同じ人なんですよね?」
「ああ、その通りだ。 しかし、詳しくは知らんぞ? その人族の情報や知識は、禁書の間へと補完されてるらしいからな」
「そうなんですか、出来れば聞きたかったのですが・・・まぁ、本筋の質問をします」
「ああ、答えられる物は答えてやる」
「ナノマシンを作れる人族がいた位の文明を持っていたのに、今の技術力は低すぎませんか?」
「それは俺も思ったんだ。 調べたら簡単な理由だったよ・・・使える人間ほど前線に赴き死んでいたからだ」
「使える人から死んで行ってしまったと言う事ですか? それでも資料くらい残ってそうですけど・・・」
「資料は残ってるんだが・・・字が汚くて読めないと言われたし、見ても全く理解が出来ん」
「なるほど、暗号のように書いてあるって思えば良いんですね」
「まさにその通りだ。 魔物の弱点や生体等を書いてあるだろう資料も、絵の部分は解るが文字が達筆すぎて線にしか見えん・・・昔の奴らってのは何がしたかったんだ?」
「ああ! そうそう魔物! 魔物って人を滅ぼす為に魔王が生み出したんですよね?」
「ああ、その通りだ。 悪意・・・いや、魔素の方が解りやすいか・・・それが最初に固体化したのが、魔王と呼ばれる者だ。 最初の魔王は、自身を分裂するように分け、魔物の形に変え襲ってきたらしい。 しかし、1体1体はそこまで強く無かった。 なので、戦闘開始初期は対処も簡単だった様だ。 戦いを続けるうちに、魔王や魔物の動きがどんどん変わっていった。 戦いの中から様々な事の知恵をつけ、戦いに生かしていたらしい」
自身の分裂に、知恵を付ける? まさか・・・いや、まさかな。
「その後、その分裂した魔王は倒されたんですか?」
「1人の神が、全ての魔王と魔物を倒したとされている。 だが、次代の魔王もゆっくりとだが、進化していたと資料に書いてあった。 なので、現在の魔王の一部になってるとも考えることが出来る」
「なるほど、多くに分裂し過ぎてしまって倒せたのかどうか分からないという事ですか」
「まぁ、そう言うこったな。 話しを戻すぞ。 現在のように、魔物が星の彼方此方に魔物が出始めたのは、次代の魔王になってからという事。 そして魔物は、他の星の生物や伝承の生き物を混ぜたような見た目をしている事。 しかし、それらが何でなのかと言うのは解っていないんだ」
「そうなんですか。 何かが変わった・・・もしくは、力を付けたとかも考えられますね」
「そうだな・・・詳しい資料は閲覧禁止で読めなかったんだ。 もう少し情報が無ければ考察する事も出来ん」
「なるほど。 それで質問なんですが、魔物の素材は最初から使う事が出来たんですか?」
「初期の魔物からって事か? 確か・・・魔物の骨を使って戦ったとも書いてあったと思うし、肉を食べたとも書いてあったと思うぞ? きっちり覚えて無くてすまん」
「いえいえ、大丈夫です。 魔物の肉や素材は今も昔も有用だった・・・しかし、魔物はこの星の人々を殺す為に作られた。 かなり矛盾してませんか?」
「ん? いや、しかし肉に毒を持った魔物もいたんだぞ?」
「でも、全ての魔物じゃない。 それに気を付けて魔物を食せば良いだけ・・・そう考えると、本当に魔物は敵なんでしょうか? 人類全てを滅ぼす為に作られたなら、全ての魔物に毒を持たせれば良い。 しかしそれをしない、という事は一種の救済処置・・・人類を殺さない為の処置とも取れます」
「いやいや、話が飛びすぎだろう。 現在も魔物の脅威があり人が殺されているんだぞ? それを理解して言っているのか?」
パルメントさんが、顔を顰めて静かに言う。
「いや、ただの推測ですよ。 それに、魔物が死ぬだけのために生み出された生物というなら子供を作って育てるのは少しおかしい気がしますしね。 ・・・少し休憩しましょうか、お茶を出しますよ」
「休憩なら、ポップコーンのバター醤油食べたい!」
「はいはい、良いですよ。 ただ、お昼前なので少しだけですよ」