第198話 ランドセル?
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パルメントさんに言われて後をついていくと、そこは木材の工房のような所だった。
「お~い、ジリコテ。 いないのか~?」
パルメントさんが、工房の中に入り大きな声で叫ぶ。
ジリコテ? どっかで聞いた名前だ・・・なんだったかな? う~ん、思い出せないな・・
「おう! 今行くぜ!」
エルフなのにマッチョな男が爽やかな笑みを浮かべて出てきた。
「パルメント様か。 前に頼まれていた物が出来上がったぜ!」
「ジリコテ、本当か!? ようやく完成したのか!」
「ああ、これで両手をフリーにしたまま魔法を放てる」
杖は今完成したってことか? 未完成の物でも参考にはなると思うけど・・・
2人が先導し中に案内される・・・そこにあった物は、四角い箱型のランドセルのような物に腕が1本上に生えているような物だった。
まさかと思うけど、これを背負って戦うのか?
そう思っていると、ジリコテさんが置いてあるランドセルを背負う。
「さぁ、見てくれ! 魔法ボックス改だ! 良い出来だろう」
ゴツイおっさんがランドセル背負ってるのを見ても何とも言えないんだが・・・
後ろにいる2人を見る・・・ミズキさんはいつも通りだが、コノミちゃんは口を半開きにして止まっている。
うん、まぁそう言う反応になるのは解る。
だが、後ろの方にヘルメットの上に丁髷の様に杖がついている物もあるんだよ。
それに比べたらまだマシなんじゃないかな? という目線を送ったが、良く解らなかったようだ。
「おお! 無骨なたたずまいが何とも言えずにいいな。 うん、男心をくすぐるデザインだ」
パルメントさんが、ぐるっと一周見て言う。
え? エルフと俺達のセンスが違うのか? どう見てもランドセルに腕が生えてるような物なんだが・・・
でも待てよ、海外でランドセルが流行った事があったよな? そんな感じなのか?
あれ? でもさっき、男心をくすぐるって言ってたな・・・どう解釈すれば良いんだ?
「驚いてくれているようだな。 まぁ無理もない、この斬新なデザインだからな」
パルメントさんが腕を組んでドヤ顔をして言う。
「デザイン性は良いですので、どういった装備なのか教えてもらって良いですか?」
「ああ、まずこの本体の中には魔法陣、魔晶石をはじめとした物が入っている。 魔晶石の魔力を使い魔法陣に登録されている魔法を放つ」
「それじゃあ、魔法発射装置って感じですか? でも、それだとメリットはあるんですか?」
「ああ、聞いて驚け! 普通の魔法だと、苦手属性だと著しく威力が落ち魔力の消費も大きくなる。 しかしこれにはそう言ったデメリットがない。 しかも、音声認識のみで使用可能だ」
「あの、音声認識のみだと近い声の人の声で誤作動しませんか?」
「その辺は問題ない。 背負っている者の音声と魔力の認証装置が付いている。 しかも、木製ゴーレムの技術も応用してあるので、ある程度なら敵を自動追尾してくれる」
「おお! 木製ゴーレム! どんな奴なんですか? 二足歩行ですか? それとも獣型とか?」
「あぁ、そうかゴーレムはまだ見た事がなかったんだな・・・後でそっちも見せてやろう。 でな、この本体の魔法陣の素材は幼龍の血液とオリハルコンの混合体と言うかなりのレア素材を使ったんだ。 凄いだろう?」
「え? 金属に手を加えても魔法陣って発動するんですか?」
「ん? ああ、そうだぞ。 というか、その防具も血塊脈の物だろう? 当然知っていると思ったんだが・・・」
「金属に素材を溶かし込めるってのは知ってますけど、素材を溶かし込んだ金属が魔法陣に使えるのは初めて知りました」
「そうなのか? 獣人族は魔道具を殆ど使わぬから、武器の方しか伝承されなかったのかもしれんな」
「ということは、皆知っている知識って事なんですか?」
「ああ、しかし魔法陣に使える素材を手に入れる事が難しくなっているからな。 特に使わないだろうと思い基礎の修練に時間を回したんじゃないのか?」
「その可能性もありますね。 魔法陣に使える素材ってだいたい何級の魔物からなんですか?」
「1級からだ。 詳しく言うと2級・3級の魔物でも使える物はおるのだがな」
「なるほど、そんな魔物の素材など早々手に入る物じゃないですからね」
「ああ、そうだ。 武器の性能を上げる魔化は6級から出来たとしても、精密な魔力の流れを必要とする魔法陣は1級からってことだ。 あと、これを見てくれ! この本体に使われているのは何か解るか?」
「木材ですよね? トレントですか?」
「すまん、このままじゃ良く見えんな。 少し魔法陣を外に出すから待っててくれ」
そういうと、ランドセルの開け口の木のロックを外し上げる。 中には木の板が無数にしまわれており全部動かないようにロックされている・・・ロックを外して1枚外に出して渡してきた。
「ほら、これで見えるだろ? この魔法陣の回路にコートされているこれだよ、これ。」
渡された物は木の板に魔法陣が彫られて中には金属が流し込まれている。
周りも良く見ると、木の横側についている金属板に繋がっている。
簡単に言うなら、ファミコンのカセットのような感じじゃないかと思う。
回路の部分を光に当てたりしてみると、ニスのような物が塗られている・・・触って確認してみると、樹脂という事が解った。
しかし、何の樹脂なのか全く見当もつかない。
「樹脂ですよね? 何の樹脂ですか?」
「サウザンドエルダートレントの樹脂と、血塊脈で出た使わぬ黄色っぽい水を混ぜた物だ。 黄色い水には外に逃げてしまう魔力を集中させる効果があるのが解ってな。 それを応用すると、魔法ボックス改の様に多くの魔法陣をしまう事が可能になるのだ」
「多段式魔法陣って事ですか。 それは画期的な物が出来ましたね」
「そうだろう? プラチナを使った物も昔に作って見てはいたんだが、金属同士で干渉して上手く行かなかったんよなぁ・・・しかし、ここまで完成出来たんだ。 感無量だな」
「あの・・・これって」
「コノミちゃん、ストップ! それは言わない方が良い、無駄な誤解を生じる」
俺は、コノミちゃんが言おうとした事をさえぎった。
「ん? どうした? 何かあったのか?」
「あの、これを見て下さい」
俺は、回復軟膏を取り出す。
「なんだ? オイルか? いや、保護クリームと言う奴か?」
「いえ、回復軟膏です。 塗った場所の回復魔法の効果を高めることが出来ます。 その材料が、先程言っていた黄色い水なんです」
「あぁ、なるほど。 それで慌てたのか・・・ふむ、話しを戻すぞ・・・」
その後も、パルメントさんの自慢が続き気が付くと夕方近くになってしまった。
まだ話したそうだったのだが、今日は家に戻らないといけないという事で解散する事となった。
ジリコテさんとも仲良くなり、工房へいつ来ても良いと言われた。
食事も終わり、まったりしている時にコノミちゃんから質問があった。
「あのカナタさん、なんで3D魔法陣に付いて言わなかったんですか?」
「ああ、それはね。 危険だからだよ」
「危険? 3D魔法陣は、便利な物じゃないんですか? 危険があるようには見えないんですが・・・」
「魔法陣自体が危険だって事じゃなくて、その作り方が特殊で危険があるってことだよ」
「メタルクリエイションの事ですか? でも、それって王都に住む殆どの人が知っていると思うんですけど」
「殆どと言っても、自分達に恩義を感じてくれている人だけでしょ? その人達が俺達に何かするというのは考えずらいからね。 まぁ、エルフの人達がどうこうするか解らないけど、何かあってからだと遅いんだし慎重にやっていかなくちゃね」
「そうですね。 解りました。 一応、どういった危険があるのか教えて下さい」
って、解ってなかったのかよ!