side story フランソワーズ
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「叔父上! 叔父上! どこですか!」
怒りながら、叔父を探す。
事の発端は、グロスから聞いたことだった。
数分前・・・
「ウェーブもようやく沈静化したようだな」
「そのようですな」
「今回のウェーブは、いつにも増してひどい物だったな・・・保身に走った貴族どもは逃亡し、村がほとんど破壊され、第1門は崩れた・・・人的被害が少ないのが救いだな」
「はい、その通りでございます」
「第2門の完全開門は今日か?」
「そうでございます。避難民への炊き出しも継続して行う予定です」
「そうか・・・では、この屋敷を使うのか?」
「その予定です」
「魔力が心許無いが、補充はどうなっている?」
「それが・・・・」
◇◆◇
「ここにおられましたか! 叔父上! どういうことか説明いただきたい!」
私は、掴み掛かるような勢いで詰め寄る。
「なんだ急に・・・何のことかさっぱり解らんが・・・」
叔父上は首をかしげ、本当に何も分かっていないようだった。
「ええい! しらばっくれるお積もりか! いくら叔父上とてあんまりですぞ!」
「まてまて、ちゃんと一から説明せよ・・・解らんぞ」
「お屋敷のことでございます。ティンバー・ウルフローナ陛下」
グロスが、説明をする。
「なんだ・・・そのことか・・・」
「そのこととは何事ですか! どういうことかご説明を!」
「ふぅ・・・今この国は危機に陥っているのはわかっておるな?」
「もちろんですとも」
「今現在この国には魔力を注げる者がいないのだ」
「私も兵たちもおります!」
「おいおい、兵たちの魔力を注いでしまった後に、魔物が来てしまったらどうする?」
「その時は、兵を・・・あ・・・」
「そうだ、魔力を注いでしまった兵では戦えぬ、民にも被害が出るぞ」
「しかし! ならば、エルフの方に救援を頼んで・・・」
「エルフの方に救援を要請し来て貰えたとしても1年後だ。しかも、兄上の病はどうなる? 折角の取引で薬となる光茸を貰う約束をしているのに、なくなるかもしれんのだぞ」
「ですが! ですが・・・そう! パルメント殿ならあるいは!」
「来てくれるとは思うが、パルメント殿の魔力で光茸を育ててると言っても過言じゃないのだぞ? 育つのが遅くなったらどうするのだ?」
「でしたら、冒険者に依頼を!」
「我らの種族は魔力が少ないのは知っているだろう・・・出すだけ無駄だ・・・」
「何か手はないのですか!」
「魔法使いの冒険者を探すしかない。ただ・・・この国で探すのは勇者を探すのと同じ位難しいがな」
「解りました、探して見せます! その時は勝手にしてもよろしいですね!」
「一ヶ月間の猶予だ、いいな?」
「わかりました! 失礼します!」
◇◆◇
冒険者の捜索をすること数日
街の中はあらかた探し終え・・・もしかしたら、ウェーブで怪我をして動けなくなっている冒険者がいないとも限らない・・・そう思い、街だけではなく外にも、範囲を広げていた。
それが功を奏し、領内を探索し冒険者、商人、村人、兵士を多く助ける事が出来た。
だが、魔法使いは1人も見つからなかった・・・
「見つからないものだな・・・いざ探すとなると・・・」
「やはり、ダンジョンの冒険者に来てもらったほうがいいのではないでしょうか?」
「ダンジョンでは、ウェーブ後に氾濫することが多い。冒険者たちは、それに備えているだろう・・・こちらに来てもらうのは流石にな・・・」
「かしこまりました。奥の方まで探しましょう」
◇◆◇
奥へと進んでいると・・・
ぐろぉぉぉぉぉ!
咆哮が聞こえてきた。
「行くぞ!」
グロスの顔を見て、言う。
「かしこまりました」
「ビッグベアか? 今の咆哮は」
「おそらく・・・ですが、少し違うような・・・」
「どっちだ?」
「こちらの方向でございます」
「音が近づいてるように感じるが・・・近づいてきているか?」
「そのようです」
行った先では、男とラッキーベアが対峙しており、
ラッキーベアが木に挟まって、身動きが取れない状態になっていた。
「あやつ武器を持っていない、助けるぞ! 先に行く!」
「かしこまりました、お気をつけて」
◇◆◇
「大丈夫か? おい」
男は頭を下げてくる・・・お礼なのか?
「フランソワーズ様!!」
「きたか」
「ご無事で!」
「おい、ラッキーベアの肉と魔石を貰っていいか? ほかは売って金は渡すが・・・」
男は、「どうぞどうぞ」と言っているようだった
「こやつ、マジンが機能していないのでは?」
「そんな事があるのか? 瀕死になり生き返ると・・・と聞いた事はないこともないか・・・・教会に連れて行ってやろう、いいな」
「かしこまりました」
黒髪だ! 闇魔法の使い手に違いないな!
人族で闇魔法使い、最高に運が良い・・これで屋敷も・・・
◇◆◇
「ラーモンいるか? おい! 居ないのか!」
しばらくすると、奥から出てくる。
「これはこれは、フランソワーズ様、どういったご用件で?」
「こやつのマジンが機能していないのでな、連れて来た」
「そんな・・・ありえませんぞ・・・いや、大昔に死にかけた冒険者が・・・」
「よい! 事実だ、もう一度注射は出来るか?」
「はい、注射いたしましょう」
◇◆◇
「お・・・おい! 大丈夫なのか? おい! しっかりしろ!」
「気絶しているだけのようです」
「驚いた・・・こんなこともあるのだな・・・」
「はい・・・初めて見ました・・・」
「ラーモン殿、この者が起きた時に探りを入れてくださらんか?」
「それはいいのですが、何でですか?」
「他国の手の者・・・とまでは言えんが、どのような人物か知っておかなければ・・・と」
「解りました、やってみます」
「ではな、明日の朝また来る! グロス行くぞ」
「はっ! かしこまりました」
◇◆◇
「フランソワーズ様、出てきてくださって大丈夫です。彼は、ギフトの確認へ向かいました」
そう言って、ラーモンは頭を下げてくる。
「そうか、どうだったのだ? 何かおかしな事を言ったか?」
「いえ、おかしなことがない・・・どころか、ずっと笑顔で表情すらも読めない・・・ある程度は人を見る目があると思っていましたが・・・彼は何者なんですか?」
「解らん、だが悪人って事ではないのだろう?」
「はい、私も悪人ではないと思います」
「そうか・・・では、私が探りを入れよう・・・いいな?」
「はい、お願いします」
◇◆◇
これで屋敷の崩壊も防げる・・・
1年間だけ・・・1年間だけでいい。
そうすれば、エルフ族が救援に来てくれるだろう・・・本当に良かった・・