第193話 エルフの里へ・・・
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エルフの先導で薄い霧の中を進んでいく・・・
「エルフの里の森は、この霧によって守られています。 我等と一緒に入るか、護符を持っていないと入る事が出来ません。 この装置は神より授かった物だとされています」
「へぇ~、霧に入ると自然と外へ出てしまうとか。 もしくは道に迷うとかそんな感じですか?」
「そうです。 でも、昔からずっと霧を出していた訳ではないのです・・・最近は減ったのですが、帝国の奴らが仲間を攫いに来ているので、霧をずっと出さざるをえなくなってしまいました」
「なるほど。 帝国ですか・・・噂程度にしか聞かなかったですが、嫌な国家のようですね」
「ええ、帝国は人族が1番だと思ってる国で、信仰なんかもその様になっているようです。 神がその様に信託を下すはずはないと思いますし、人種など魔物の前では無意味だというのが解らないのでしょうか」
帝国か・・・色々きな臭い噂を聞くが、世界征服でもたくらんでるんだろうか・・・
まぁいい、ちょっかいを出してきたら対処しよう。
「それで我等エルフは、人族を良く思っていません。 もちろん、私を含めてですが」
スートーグは俺の顔を見て、顔を顰めて言う。
「そうですか。 人族に生まれて、すみません」
俺はそう言うとにっこり微笑む。
微笑んだ顔を見て、エルフは驚いたような表情を浮かべた。
「怒らないのですか? 大抵はこう言うと、人族の中にもいい奴は沢山居るんだ! と憤慨するの人が多いのに」
「怒っても仕方がないでしょう。 良い人がいれば悪い人もいる・・・そんな物言うまでもなく解っているはずですし、面と向かって嫌いですと言える人なんてそうそういませんよ。 そうなると、エルフの皆さんから嫌われていると言う、私達に向けてのアドバイスと受け取れなくもないですから」
「あっはっはっは、大したものですね。 自分自身は、あなたが嫌いになれないようだ。 そして、エルフの里へようこそ」
そう言われると、霧の中から抜け出しエルフの里が目の前に現れる。
エルフの里の建物は木の上にある・・・建物同士に橋が渡され移動出来るようになっている。
ポーと見上げていると、スートーグから「こっちです」と声が掛かる・・・そこに向かって走ると、1本の巨木の根元に扉が付いている。
扉を開け入ると、中には階段があり上に向かっていけるようになっている。
なんでも、この空間は魔法によって人工的に広げた物で、ちゃんと木の成長の邪魔にならないように配慮したらしい。
本当に魔法って何でもありなんだなぁ。
というか、トレントが多いって聞いていたけど里に着くまでの間の索敵だと魔物があんまり居ないんだよなぁ。
狩場でもあるのかな? 素材が欲しいし居る間に狩りに行きたいなぁ。
そんな事を考えながら、階段を登る・・・出口のような物が見えてきたときに、スートーグから声が掛かった。
「最後にもう1つアドバイスです。 【ウヌリアン族の族長の息子のエディアン】には気を付けて下さい。 嫌がらせをして、転生者を数人追い出しています」
「アドバイスありがとうございます。 心に留めておきます」
階段を上がりきると、ホールの真ん中に出る・・・ホールの壁にベランダのようなでっぱりがある事から、迎撃用のホールといった所だろう。
周りを見渡していると、3人の女性が立っていた。
真ん中が少し年上と思われるが、かなり整った顔立ちの美魔女のエルフの女性、左右の女性は簡易的な革の胸当てを付け弓をすぐ射れる様に弦に矢を当て立っている。
3人を観察し終わると、真ん中のエルフから声がかけられる。
「よくぞ来た、転生者。 いや、転生者ではないようだな・・・まぁ良い。 俺はパルメント、転生者の後見人って所だな」
えっと・・・一人称が俺なのか? どうにも違和感がぬぐえない・・・
「私は、クラン【ソメイヨシノ】のリーダーをやっているカナタと申します。 仰る通り転生者ではありません・・・言うなれば転移者と言ったところですね」
「転移? ってことは、勇者なのか?」
「いえ、勇者ではないですよ。 ただ、勇者を目指していますけどね」
「ふむ、なるほどな。 その強さなら、魔王を倒して真の勇者になれるだろう」
「え? 強さが分かるんですか?」
「ああ、俺は観察眼を持っているから相手との強さの差が解る。 気になっているようだが、ステータスを細かく見る事は出来ない。 あくまで合計値での測定だ・・・が、少なくとも俺の3倍はあるって事だな」
パルメントさんの言葉で周りにいるエルフ全員が驚愕の表情に変わる。
「パルメント様・・・それはいくら何でも冗談が過ぎます。 巨大な魔力を持ってるパルメント様のステータスの合計値3倍ある人族なんているはずがないんです」
俺達と一緒に来た1人のエルフがパルメントさんに言う。
「前にも言ったが種族で強さが決まるわけじゃない。 そいつがどのように生きてきたかって事だ・・・しかし、負けるなんて悔しいね~」
パルメントさんはそう言うと、あっはっはっはと笑い出した。
「笑い事ではありません。 そんなに強いのなら、何もしなくてもいいのではないですか?」
「確かに強い・・・だが、何も知らずに放り出すのは良くないだろう」
置いてきぼり感が拭えないが、話が纏ったようだ。
放り出そうとするなんて、本当に人族嫌われてるな・・・
「こちらで勝手に話して、すまんな。 今日は疲れているだろう、空家に案内するからゆっくり休んでくれ」
「お心遣い感謝します」
その後、預かっていた手紙をパルメントさん本人に渡し、空家に案内される・・・外から見ると少し大きめの平屋位だが、マジックハウスのようだ。
中に入る・・・ウルフローナ国の屋敷よりもだいぶ小さいが、田舎の大豪邸かと言うほど大きい。
周りの家を良く見ると魔晶石が玄関前にあったり、ドアノブのようになっている。
この様子だと、この里全部の家がマジックハウスなんじゃないかと思う。
木の上にあるツリーハウスだし、マジックハウスで重さを軽減しているのかも知れない。
(マジックハウスに多くの物を入れても重さは変わりません)
3人で話し合い自分の部屋を決め荷物を中に運んでいく。
あれ? もしかして、執事やメイド達が居ないこの家って・・・シェアハウスっぽくね? となると、色々面白展開が・・・
「カナタさ~ん、ベッド硬いんで持ってきたベッドと交換して貰えませんか~?」
「ついでに私のもお願いします」
そうですよねぇ・・・そんな都合よく面白い事なんて起きませんよね~・・・
「はいよ~、今行くから待ってて~」
ベッドを交換し、使わないベッドを使用しない部屋に置く・・・さて、暇になっちゃったな。
2人から預かった武器と防具の損傷や汚れが無いかどうか確認し、損傷は無かったので綺麗にしたら部屋の前に置いておく。
その後、自分の武器と防具を確認する・・・黒剣シリーズは相変わらず綺麗なままなので拭いて綺麗にしてしまい。
魔鉄の趣味装備を確認する・・・トマホークやクナイ、投げナイフは少し欠けたりしている。
作りなおしても良いのだが、削りオイルを塗っただけでしまう。
投げている武器をいちいち作り直していたらとんでもなく手間がかかるので仕方がない。
こんな事をしても、まだ夕方前といった所か・・・片付けをしていると、来訪者を知らせるベルが鳴る。
こんな時間に誰だ? 俺達を訪ねてくる者なんて居ないと思うんだが・・・2人を呼ばずに扉を開ける。
そこには5人のエルフがいた。
「何をやっていたんだ! 【ウヌリアン族の族長の息子エディアン】様が訪ねてきて下さったのだぞ!」
5人のエルフの1人が、真ん中に立つ偉そうに腕を組んでいるエルフを掌で指しながらいう。
「あぁ、すみません。 田舎者なので、挨拶等が遅れてしまって申し訳ありません。」
「ふんっ、頭の下げ方が足らないのではないか? 目上の者には敬意を払うものだろう!」
あぁ・・・面倒なのに絡まれた・・・