第192話 エルフの洗礼
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エルフの国に出発して、もう夕方に差し掛かった頃・・・特にイベントも無く、夕食の準備をしていた。
夕食は、ヒレカツサンドに豚汁といたってシンプルな物になった。
夕食を談笑しながら食べ、片付けをしている時にある事にふと気が付く・・・
あれ? 男俺1人だと見張りってどうしよう?
全員警戒か索敵を持っているので、魔物や盗賊が近くに来た場合警戒音を鳴らす事が出来る・・・だが、索敵出来る範囲が円状なので上空から接近されると分からない。
それに、水や土等に潜られていても索敵しにくいというデメリットが存在する。
それでも、魔物の名前登録が出来たり人の名前が登録が出来たりするので便利だ・・・デメリットは、登録出来る上限があるため全部を登録する事は出来ない点だろう。
基本的に俺の登録は人のみにしている・・・若かった頃はすぐに顔と名前が覚えられたのだが、今は時間がかかるし興味ない人だとすぐ忘れてしまう。
そんな事よりも、見張り順を考えなければ・・・
結局、最初はコノミちゃん2番目に俺、最後がミズキさんとなった。
いきなり敵が現れる事はないと思うが、土壁でぐるっと一数囲み、一応男と女を分けるために、土壁で男女を隔てその中に男女のテントをたてる。
これで寝床の準備も出来た・・・
順調にいければ、道のり的には明後日の夕方ぐらいには着く予定なのだが何があるか解らない。
というか、この世界に来てから何らかのイベントやトラブルに巻き込まれやすくなった気がする。
トラブルに巻き込まれるように仕組んだのが神・・・男性神ならぶん殴ってやる! 女性神なら、お説教だ!
そんな良く解らないことを考えていると、眠気が襲ってきたのでタオルで全身を拭き寝る事に・・・
魔物に襲われ少し遅くなったものの、2日の夜にはエルフの森の入り口付近に到着する。
完全に夜遅くって訳ではないのだが森の中は暗い為、目の前で野営することにした・・・簡易的な地図でも。
明日の朝にはエルフの国にいけると思うとワクワクが止まらない。
やはりこう言う場合は、全裸で待機・・・いや、1人じゃないから無理だな。
そもそも、全裸待機なんてした事ないし。
次の日の朝、軽く食事を終え片付けを終えて森の中に入る・・・森の中にはゴブリンとオークがいるようだ。
やっぱりエルフが捕まるとエロイ事されるのかな? 見てみたいっちゃ見てみたいな~。
「カナタさん、本当にここですか? 誰も・・・人が来てる? 木の上ですか?」
コノミちゃんが通信してくる。
「うん、ゆっくりと囲み始めてるよ。 人数的には6人だね」
「そんな! ど、どうするんですか? 白旗でも上げますか?」
「大丈夫じゃない? 表示的には敵対ってなってないし」
そんなのんきな会話をしていると、エルフの声が森に響く・・・
「おまえたち、ここは我等エルフ族の領地である! 即刻出て行け!」
「領地だって言ってくれるなんて親切だね~」
俺は通信機で皆に言う。
「何をのんきに言ってるんですか! どうにかして下さいよ!」
コノミちゃんが焦った様に言う。
俺は兜を脱ぎ、風魔法を使って声を届ける。
「すみません、パルメント様に来るように言われて来ました。 ちゃんと手紙もあります。案内してくれますか?」
「しばし待て! 確認の者がそちらに向かう!」
手紙を持ちながら、1人のエルフが到着するのを待つ・・・木の上を1人の小柄な人が飛んでくる。
ジャンプというより、何かに捕まえられて移動しているように見える。
エレメントマジックか・・・やっぱり便利だな。
エレメントマジックは、自分の魔力をエレメントに渡して使役し、魔法や攻撃を行ってもらう魔法だ。
基本エレメントは、見えない訳ではないが風のエレメントだけは本当に見えにくい。
しかも、風のエレメントは滑空が出来る・・・だが、重力に干渉している訳ではないようだ。
人間に掛かる空気の重さを消してるとか? とケイタ君に聞いたら爆笑されてしまった・・・
空気の重さは、地上の空気に乗っかるので人には殆ど影響しないとの事・・・いや、知らんよそんな事。
小柄のエルフが滑空して近くに来たときに、ある事に気がついた・・・このエルフ、女性だ! だって、膝丈のスカート履いてるし!
ここは風を操りパンチラを・・・いや、攻撃と受け取られかねない。
やはりここは、祈るくらいしか出来ないか・・・さぁ風よ吹け! 荒れ狂え! スカートを翻せ!
そんな祈りが届くわけもなく、普通にエルフが降りてくる・・・せめて、見えそうで見えないワクワク感くらいは味わいたかった。
そんなアホな事を考えていたが、エルフが手を出してきたので手紙を渡す。
手紙を一通り見て、ボソッと小声で何かを言うと他のエルフ達もこちらに向かってきた。
先ほど大声をあげていたリーダーっぽい男が、こちらに話し掛けて来る。
「私はスートーグ、このメンバーのリーダーだ」
「私はカナタです。 ミズキさんとコノミちゃんです。 よろしくお願いします」
「パルメント様が呼んだ事は解った。 里までついて来て貰うが良いか?」
「もちろん、その為に来たので・・・でもこの森の中に里があるんじゃないですか?」
「いや、この森の中には何もない。 もっと奥の森の中になる・・・走るがついてこられるか?」
「もちろん大丈夫ですよ。 本気で走って貰ってもついていけます」
「ほぅ・・・では、ついて来て貰おう」
そういうと、エルフ達は奥の方へ走って行ってしまった。
俺達は、魔法で身体強化して走る・・・木の上や地面を走っているエルフ達にすぐに追いつくと、驚愕の表情を浮かべられる。
木の上とか走ると忍者の漫画を思い出すな・・・そう思っているとエルフ達が走りながら1箇所に集まり始める。
何かありそうな予感がする、警戒しておこう・・・ミズキさんとコノミちゃんに通信する。
「ミズキさん、コノミちゃん、何かあるかも知れないから警戒して」
「はい(解りました)」
走って行くと森が切れ目があり・・・森が切れたとたん崖が現れる。
急な事で驚くが、警戒していたのですぐに対処をすることが出来た。
風の魔法で方向転換をし、ギフトの身体強化と魔法の身体強化をかけてミズキさんとコノミちゃんを片腕ずつで抱き崖を飛び越える。
飛び越えている時に気がついたが、崖の下に網が張ってあった・・・たぶん、腕を試していたって事なのかも知れない。
「言うだけの事はありますね! なら、これについて来れますか!」
そう言うと、エルフ達は直線に並び真っ直ぐに走って行く・・・1番先頭には風のエレメントが走っているようだ。
こうやってみると、自転車の競技のように見える。
しかし、俺達のように魔法で身体強化もしていないしギフトの身体強化もない・・・俺達にはアスレチックを遊びながら進むくらいしか感じられない。
「すみません、汗だくになってますけど大丈夫ですか? 1度休憩を挟んで走った方がいいと思うんですけど」
「いや、参った・・・ここまで涼しい顔でついてこれた奴は初めてだ。 相当鍛えているな」
スートーグは、そう言うと速度を落とし始めた。
良く見ると、全員が汗だくで息切れしている・・・何人かのエルフはへたり込んでしまった。
俺は、全員にポーションを5%含んだスポーツドリンクもどきを渡す。
ポーションの味改善で出来上がったのは、少し苦味の残るお茶・・・ジュース等に出来れば良かったのだが、難しかった。
全員が一息付くと、スートーグから驚愕の事実が告げられる。
「さて、エルフの里の森に案内しよう」
ここの奥がエルフの里じゃなかったんかい!