side story 良太郎
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私の夢は、全世界を歩いてみて回ること。
旅行が好きで好きでたまらない・・・日本もそうだが海外も・・・
いや、知らない所、行った事が無いところ全てが大好きだった。
そんな私にも、ある転機が訪れた。
そう彼女だ・・・彼女は夜の蝶だった。
彼女も旅行が大好きで、いろんな所に行っていたそうだ。
趣味が同じと言うこともあり、直ぐに意気投合して店外で何度も会った。
何度も会ううちに、結婚を意識する仲になるのも仕方のないことだった。
彼女は、海外から留学しているらしい。
年齢も私より若くまだ学生で、卒業してから結婚すると約束している。
親に紹介した時には、あまり感触が良くなかった・・・外国人だからであろう。
だが、そんな事は関係なかった。
アルバイトを辞めて結婚資金をためるために、バスの運転手になった。
一緒に住むのは学校を卒業し結婚した後で、と言われたため必死に頑張った。
旅行よりも大切な物を見つけたと思っていた。
その後、彼女は学校を卒業したらしい。
その記念ということでもないが、合鍵を渡しておいた。いつでも来れるように。
私と結婚式を挙げるため、彼女もアルバイトをしながら貯金もしてくれた。
ちゃんと、夜のお店はやめてくれたらしい。
親も反対しなくなり、父と母が相談し、父が母に贈った婚約指輪を彼女に贈ってくれた。
嬉しい・・・心の底から感謝と涙が溢れた。
結婚資金がいくらあるのか解らなかったので、彼女に通帳と印鑑を渡し1つに纏めてくれる様にたのんだ・・・
これが一番やってはいけないことだった・・・
家に帰ると、本当に何もなくなっていた・・・
残っていたのは下着と洋服が数着、制服。最初訳が分からなかった・・・
何かの犯罪なんじゃないかと思い警察を呼んだ・・・
結婚詐欺だった・・・・
結局彼女は捕まらなかった・・・
仕事を辞めたかったが、親の指輪位弁償したい・・・そう思い働いていた・・・
指輪の代金を渡し終わった今ではほとんど吹っ切れたが、親に申し訳がなく、今でもちゃんと働いている。
その日も特に何もなく始まった。
バスの点検をしている時に人に呼ばれ、バス内にハンマーを置き談笑していると、出発の時間が近くなっていたのに気が付き急いで出発した。
そんな事があったくらいで、1日が終わるはずだった・・・
いきなり前が暗くなり、バスが移動している感覚があったのでブレーキを思いっきり踏んだ・・・
「ブレーキが・・・利かない・・・とまれ! とまれ!」
ドガーン・・・
気が付くとブレーキを思いっきり踏み、ガラスが少しかかった自分が居た。
事故を起こした!・・・不味い! けが人は居ないか? そう思いながら後ろに向って行った。
気が付くとひたすら謝っていた・・・
訳が解らない・・・皆をまとめた方がいいと思う・・・だが、頭が回らない・・・
榊原さんが助け舟を出してくれた・・・もう、どうすればいいのか・・・縋る思いだった。
榊原さんが皆をまとめてくれたお陰で何とかなった・・・
なんと言っていいか、リーダーはこの人の方がいいと感じた。
1日が過ぎ、朝起きると家に居ると言う希望は打ち砕かれた・・・
やはり夢ではないらしい・・・
榊原さんに寝てもらい、3人で周りを探索に行く。
私と五十嵐 渉真君、中山 啓太君の3人だ。
兎や魚などは見つけられたが、家や道は見つからなかった。
初めてみる景色に少しワクワクしてしまい、ちょっと不謹慎かな・・・と思っている時、
ギャギャギャ・ガガギャなどの声が聞こえた・・・3人はそっと声のする方を覗き込んだ。
そこには緑色の子供? が居た・・・もう1度身を隠し、
「なぁ、あれ現地人か? 緑色だけど」
五十嵐 渉真君が、緑色の子供を指差して小声で聞いてくる。
「その可能性もありますが、モンスターの方がしっくり来ると思いませんか?」
中山 敬太君が、答える。
「解りませんが、武器を持っていますので危ないと思いますね」
私は、自分の意見を言う。
「話しかけてみればいいんじゃないか? 走って逃げれるだろ」
「危険です! 一度戻って皆に話しましょう」
「そうですね、僕も良太郎さんの意見に賛成です」
3人は洞窟に戻って、皆を集めた。
「現地人と思われる緑色の肌の子供がいたんですけど、どうすればいいと思いますか?」
皆に向かって報告すると、一様に驚きの表情をしている。
「現地人を見つけたのに話しかけなかったのか! 助けを求めるべきだろ!」
三沢 伊三雄さんが、掴み掛かってきそうなくらい近づき、大声で言ってくる。
「待って下さい、その子供は槍や剣などを持っていたんです。危険だと判断したのですが?」
中山 敬太君が、三沢 伊三雄さんに向かって言う。
「アフリカの原住民も槍を持っていたりするだろ!? そんな事だけで、ためらう理由になるわけ無いだろ! 腰抜け共め! もういい! 俺が交渉してきてやる!」
私は危ないと解っていたが、反論が出来ない・・・いや、しようと思わなかった・・・
危険を引き受けてくれるのなら、嬉しいとさえ思った。
話しかけに行っていたが、思ったとおり緑の子供に追い掛け回されていた。
そして、緑色の子供は少しずつ洞窟に近づいてきている。
榊原さんを起こすしかなかった・・・
◇◆◇
いきなりの事態に遭っても動じない・・・この人は何なんだ? 普通はパニックになると思うんだけど・・・
しかも、作戦を考えていたのか、見た瞬間考えたのかわからないが、何でこうもスラスラと・・・
悲劇の英雄・・・そんな言葉が浮かんできた。
悲劇がなければ、決して輝くことの無い英雄・・・輝かないことを望まれ、輝いたら縋られる。
いや、そんな事はない。
私はリーダーの器ではないが、この人のサポートなら出来るはず・・・いや、サポートしよう。そう心に決める。
◇◆◇
街の探索が終わりかえると、叶奏さんの姿は無く・・・泣いている人が・・・何が・・・
そんな・・・あの人は死なない! 死なないはずだ! 探そう!
私の力では難しいかもしれないけど、助けよう。