冬の間(6)
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☆武者修行者とカナタ
色々な魔物を狩って、近接武器の心を取得し色々な武器が使えるようになったし、遠距離武器を本格的に練習してもいいかも知れないな・・・そう思い、ショートボウを作る。
複合弓にしなかったのは、色々な撃ち方を試す為。
今回のショートボウは、篭手を絶対にしないと怪我をする手の甲側に弦を引くタイプの物だ。
昔遊びで作って、手に弦を打ちつけて蚯蚓腫れになったのは良い思い出だ・・・
本当に痛かった・・・泣いてしまって、1人で作ってて良かったと本気で思った。
狭い室内で何度か弓を射ていると、ベトニアが呼びに来た。
「カナタ様、武者修行者の方が来ていますが、いかがいたしましょう?」
「え? ショウマ君は?」
「ショウマ様は、フランソワーズ様と兵士を鍛えに狩りに出掛けております」
「あら・・・じゃあ、ケイタ君は?」
「ケイタ様は、アカネ様と魔道具の事を調べに錬金の師匠の所へ出掛けると言って外出中です」
「あぁ、そういえば通信機にアシスト機能を付けたいとかって言ってたね。 人工知能のヒントか・・・見付かるのかね?」
「私には解りかねますが・・・武者修行の方はどうしますか?」
「仕方ない。 俺が出るよ」
普段着のまま玄関を出て、武者修行者と対峙する。
武者修行の冒険者は、犬の獣人でカタール(ジャマダハル)を佩いている。
「ほう、貴様が噂のショウマか・・・強そうには見えんな」
「いや、俺はカナタ。 ショウマ君はお出かけ中」
「なるほど。 では、待たせてもらおう」
「いやいや、邪魔だから帰ってくれない? ほら、雪降りそうな空もようだし」
「ふん、なるほど。 ショウマとやらは恐れをなして逃げたという訳か」
「はぁ・・・じゃあ、俺と勝負して貰える? 一応、接近戦闘のみでの戦闘ではクラン第3位なんだけど」
「くだらん・・・俺より弱い者と戦っても面白くない。 待たせてもらうぞ」
「あのさ・・・」
「何たる無礼! 僕と戦いなさい!」
俺が言うのを遮り、後ろからベトニアが大声で叫ぶ。
うお・・・驚いた・・・大きな声を出せるんだ。
う~ん・・・俺のために怒ってくれたのは嬉しいけど、危ないから止めて欲しいな。
「ベトニア、止めなさい。 相手の実力が分からない時は出来るだけ戦闘を避けるって聞いてるでしょ?」
「しかし、カナタ様・・・身の程を解っていない言動をしておりましたので・・・」
ベトニアは、こちらを見ながら申し訳なさそうに言う。
その時、屋敷の前をミズクサの街の冒険者ギルドマスターのグスターヴァスさんが通る。
「グスターヴァスさ~ん、こっちに来て貰えます~?」
グスターヴァスさんが、こちらに気がついた様で駆け足で近づいてくる。
何をしようとしたのか聞くと、膝の調子を確かめる為に魔物狩りに行く所だそうだ・・・やっぱりそうか、なら丁度いい。
今までの事を話し、武者修行の冒険者・・・略して武者修行君と戦って欲しいと言う・・・特に問題なく引き受けてくれた。
武者修行の冒険者も、冒険者ギルドマスターと戦えるとあって嬉しそうにしている。
そこら辺に落ちている小石を拾い、投げ地面についたら戦闘開始とした。
さて、武者修行君の強さはどのくらいなんだろう・・・ギルドマスターより強いのかな?
強さを確認する為、武者修行君がどんな構えをしてどんな風に戦うのかを見逃さないようにする。
勝負は一瞬だった・・・そう、グスターヴァスさんの勝利。
武者修行君の槍の構えは下段で、目線が動いたりし隙が多くありわざと誘っているのかと思っていたのだが、そんな事は無かった。
グスターヴァスさんが真っ直ぐ走って行き、足に向かって突き出された槍を避け顎を殴って気絶させた。
これならベトニアでも勝てたな・・・
「おい、カナタ。 こいつは、本当に武者修行できた奴なのか? 弱すぎて話しにならないぞ」
「いや、わざと隙を作って返し技を狙ってるのかと思ってました・・・ここまで弱いなんて」
「まぁいい、カナタ組み手するぞ」
「駄目ですよ、駄目。 まだ膝が完全に治ってないと聞いてますから?」
「ガッツリやらなきゃ、大丈夫だろう。 ほら行くぞ!」
「そう言って前にユカさんに怒られたじゃないですか・・・次に壊したら、痛みを軽減させないで治療するって」
「あぁ・・・止めておくか。 でも、治ったら1度戦ってもらうからな」
「それも遠慮したいんですけど・・・」
結局武者修行君は、グスターヴァスさんに気絶したまま冒険者ギルドへ連れて行かれた。
☆カナタと花街
外はパラパラと雪が降っている・・・積もったりするほどでは無いが。
今は屋敷の中で、ファッションショーが行われている・・・といっても、八重桜学園の制服の試作品を着てもらってるだけなのだが。
八重桜学園の制服は、セーラー服と学ランとなった。
セーラー服は、スカートではなくキュロットのようになっている・・・スカートの方が可愛いと抗議したのだが、却下されてしまった。
魔物もいるし、未だに犯罪も多い国でスカートは危ないという事になってしまったのだ。
治安の改善か・・・皆頑張っているのを知っているから何も言えない。
冬だと言うのに、今年は他の街や国から王都に移動してくる冒険者や商人が多いらしい。
その影響で、小競り合いがある・・・折角、下着が広まり始めたと言うのに残念だ。
俺は、見えそうで見えない・・・あの感じが大好きだ! その為に尽力をしたのに、まだ足りないのか・・・
力説したかいも無く、全て却下になるとは残念だ。
良し! 今夜こそ花街に繰り出そう! 性病についても調べてあるし、その対策の仕方も学んだ・・・準備は万全だ!
ふっ今の私に抜かり等ないのだよ。 どこからでもかかって来い!
良く解らない自身溢れる態度で、夜の街に繰り出して行く。
花街の中を散策する・・・時折客引きで軟派をしている女性の品定めをしているのだが・・・
なんかグッとクル人がいないんだよなぁ・・・ヤッパリ人気がある人は建物の中とかに居るのかな?
しかし、建物も見るからに怪しいんだよなぁ・・・何かされても逃げ出すのは容易いし、入るだけ入ってみるか?
でも、もしなんかあったら厄介だし・・・いや、虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言うし・・・
そんな事して入ると、不意に声をかけられる。
「カナタ様ですか?」
「え? そうですけど、何でしょう?」
振り返るとそこには、ぼんやりと見覚えのある兵士がいた。
解らない顔をしていたのだろう・・・その兵士が苦笑しながら言う。
「解りませんか? 元王城の門番です。 お久しぶりです」
「ああ! お久しぶりです。 違う場所であったので気が付きませんでした。 今は治安部隊に移動したんですか?」
「ええ、そうです。 しかも隊長を任されてるんです」
「おお! 出世じゃないですか! おめでとうございます」
「ありがとうございます。 それでカナタ様は、どのような用件でここに?」
「え? いや、俺も治安の確認・・・かな?」
あ、咄嗟に嘘ついちゃった・・・ヤバイかな?
「おお! そうですか! では一緒に回りましょう! ソメイヨシノの方がいるとなればドラゴンでも何でも来いと言う気になりますよ」
あぁ・・・ヤッパリ・・・ここは断った方がいいな。
「いや、1人で・・・」
「いや~本当に仕事熱心ですね。 リョウタロウ様が、花街の移転を検討しているのを知って視察に来られるなんて」
え? 移転の話があるの? 初耳なんですけど!
その後、兵士達に引きずられるように街中を見回りする事になる。
はぁ・・・これがスキルのデメリットなんじゃないか? まじで・・・




