第189話 事務処理
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次の日のお昼、最初に王都に着いたのは突撃牙獣の皆さんとナショウ、ルーリン達5人だった。
5人の住居は今の所出来上がっていないので、同じ屋敷で一緒に住むことになった。
全員の無事な移動を祝って、タダシさんの料理が振舞われヨシさん特製のデザートを食べてもらうことになった。
最初は、子供達の料理を食べてもらって後で食事をご馳走しようと思ったのだが、成行きでそういう事になった。
食事が終わり、皆が動けなくなってしまったので食休みをする・・・あれだけ食べたら動けなくなるだろう。
食休み中に溜まっている報告書や希望を書いた紙等を読んでいく。
動けるようになったら全員の希望を聞き、どこで働くかを決めそこの責任者に引き合わせ挨拶周りしてもらうことに・・・
責任者に会わせると、俺は子供達の希望をかなえるために奴隷商へ向かった。
希望を書いた紙の中に生産職をやってみたいと書いてあったのが多数あり、鍛冶、革細工、骨細工、木工、錬金、石工などの職人を捜しに来たのだ。
奴隷商に着き、職人を捜してもらったのだが全くいなかった・・・子供の奴隷が明日には届くと言っていたが・・・さて、どうしようか。
俺達が教えても良いのだが、そうなると俺がいっぱいいっぱいになる事が目に見えてる。
1人で3教科教えるようなもんだしな・・・そうなると、やはりお願いして教えてもらうのがいいかも知れないな。
そう思い1番近いミミリさんの木工所へ向かう。
「あ! お帰りなさいカナタさん。 また樽ですか?」
「ただいまです、ミミリさん。 樽は出来てるのなら貰って行きますが、今日は相談に来ました」
「相談ですか? まさか・・・工期を早めて欲しいとかですか?」
「違いますよ。 木工を覚えたいって言う生徒がいるんですけど、基礎だけでもいいので教えてもらえませんか?」
「それは構いませんが、私よりカナタさんの方が技術が上になりましたよね?」
「俺のは魔法で加工してるので余り教えられないんです。 なので、お願いしたいんですけど良いですか?」
「ん~・・・良いですよ。 最近教え始めた新人ちゃんと一緒に教えますよ。
「ありがとうございます。 人数に関しては解り次第すぐに報告に来ますね。 あと、報酬はアイディア料から出してもらって足らなければ、生徒が使った木材と共に請求して下さい」
「解りました。 じゃあ、売値が高い木材を仕入れないとですね」
「程々にお願いしますね。 あ、そうだ。 冒険者の門番居なくなりましたけど大丈夫ですか?」
「はい、問題ありませんよ。 あと、ゴムの木の樹液(ゴムの原料)とサトウカエデの樹液(メープルシロップの原料)、紅葉の葉(染料の原料)が届いたんですけど持って帰れますか?」
「はい、持って帰ります」
樹液2つは樽に、紅葉は革袋に入っておりそのままマジックボックスに入れる。
樽よりも革袋の方が高い・・・早めに麻袋が広まることを願おう。
骨細工のヒリスさんの革細工のニムロフさんの2人にも同じようにお願いし、快諾を得ることが出来た。
鍛冶と錬金に関してはタクミ君やアカネちゃんに任せて、石工はリョウタロウさんがやってくれるようだ。
彫金はコノミちゃんが教えてくれると言っていた。
王都には彫金を主にやっている人はいない・・・金属のアクセサリーは、鍛冶師か錬金師が一応作っている様だ。
つまり、金属のアクセサリーは作りたい放題という事だ。
今までも解っていた事なのだが、ドッグタグや結婚指輪等広めるのも良い機会なのかも知れない。
生徒達が販路開拓で困らないように、道の雑草だけでも刈ってあげよう。
そして、コノミちゃんが生徒達に教えるついでに俺も教わる事を決めた。
折角なので、今まで覚えていなかったギフトを覚える為、視察と証して勉強を覗こう。
再度確認の為、木工、骨細工、革細工も確認しよう。
それまでに、高さ60cmを越える書類の束と教科書(文字、簡単な計算、小学校で習うような理科の教科書)とコノミちゃんに頼んでいた紙芝居の出来栄え確認、オモチに頼んでいる住民の希望調査(噂話等含む)、他にも制服の原案等も目を通さないと・・・
サッサと帰って仕事しないとな・・・とりあえず、書類の束に目を通し変じゃない物に印を押し解らない物は後回しにしていく。
印を押した物は、ベトニアを呼んで整理してバインダーに入れ棚にしまってもらう。
全部終われば次に計算があってるか確認する書類にとりかかる予定だ。
計算があってる物に印を押し間違いの物には、メモをクリップで付けて1度確認の為に返すようにする事にしよう。
1日もあれば、書類の束が計算等が間違ってる物と聞かなくちゃ解らない物になるだろう・・・
俺が甘かったです! 全然終わりません! 何だよこの報告書・・・1枚なのかと思ったらビッシリ文字が書いてあって、しかも4枚に渡ってかいてあるじゃねぇかよ! 結果何言いたいのかわかんねぇよ! そんな書類ばっかだな・・・
報告書を書いた農奴を呼んで聞かないと駄目じゃねぇか・・・
午前中は組み手等をして、空いた時間に書類整理、午後の選択授業(木工等)を確認したら、また書類整理・・・そして書類の整理に飽きたら、他の物に目を通して・・・
そんな事をしていると、ほとんど終わる頃には12月後半に差し掛かってしまった。
その間にルーリン(薬師)の家族が見つかった・・・ファウストさんの所に土下座をして動かない2人がいたのだ。
ファウストさんの奥さんが俺を訪ねてきて相談されたときに、もしかしてと思いルーリンを呼んで行ってみると案の定両親だった。
感動の再開になるのかと思いきやルーリンの怒りの鉄拳が叩き込まれた。
貴族街で土下座していた両親も凄いが、無言で走って行って頭に拳骨叩き込むルーリンも凄いと思う・・・その後、喧嘩になっていた。
なにはともあれ、一件落着・・・とはいかなかったものの、放って置けばその内仲直り出来るだろう。
一応家族で雇い、家を貸したがルーリンは未だに5人の家で共同生活している。
昔も薬について意見が別れて喧嘩していたようで、仕事場で会うくらいがちょうどいいらしい。
そして、街の整備は印を先に押した物から実行されていたので滞りなく出来ている。
だが、そんな事はどうでもいい! 時間を作りナショウと出掛けようと話し掛けるが、ほとんど断られている・・・何これ? 避けられてる?
何か変な事したっけ? いや、デートに誘うぐらいしかしていない・・・
と言っても、門の上に上がったり門の外に出てご飯を食べたりしてるだけだけど・・・
なんか気に触ることしたんじゃないのかな? でも・・・あ~、もう! どうすりゃいいんだ。
そんな事を考えてると、ルーリンが目の前を歩き薬草をザルに入れて調合部屋に持って行く所だった。
調合部屋は、6畳×6室の2階建ての建物で調合専用として建築した物だ。
そこに入るルーリンに声をかけ、相談に乗ってもらうことになった。
「なるほど、ナッチンに避けられている気がするって事ですね。 ふむふむ」
ナッチンってナショウのことであってるよな?
「一緒に住んでるんだし、何があったのか解ればなって思って」
「そうですね~。 タダって言うのもなんだと思うんですよ」
ルーリンがニッコリ笑いながら言う。
「解ったよ。 何が欲しいのか言ってみて」
「竜の心臓! それも古龍の奴が欲しいです!」
「無理だよ! どんだけ吹っかけるんだよ」
「え~、じゃあタダシ様の料理・・・いや、お金? でも、料理も食べたい・・・あ、ヨシ様のデザートもいいな・・・」
「あ~、解ったよ。 タダシさんヨシさんの料理にお金を渡せばいいんでしょ。 ちゃんと教えてくれたらね」
「あ、後1つお願いがあります・・・良いですか?」
2章(異世界探検準備編)も残すところ1話となります。
長くなってしまって、申し訳ありません。