王都騒乱(2)
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-ケイタ視点-
さて、屋敷に着きましたがおかしいですね・・・何故門番等も居ないのでしょう? 嫌な予感がします。
「フラン様、門番が居ないのはおかしい気がします。 カルジャス隊以外を下げた方がいいと思われます」
「やはりそう思うか? 兵が屋敷を囲んでいるのに静かなのも気にかかる・・・まるで無人の屋敷のようだ」
フラン様が、顔をしかめながら言う。
僕は索敵を使ってみるが特におかしな事はない・・・いや、誰一人として映らないことが1番の異常か。
魔道具を使って隠れている? 隠蔽能力を持っている可能性もあるのか・・・能力が解らないと言うのはこれほど厄介だとは・・・
カナタさんがここに居たら、なんと言うんでしょう・・・駄目ですね、居ない人に助けてもらおうと考えるなんて・・・
「そうですね。 カルジャス隊は入り口を固め、他の兵士は屋敷の周りの警戒、僕達だけ中に進んだ方がいいかもしれませんね」
「ああ、そうするとしよう。 中に何がいると思う?」
「死神でも飼ってるんでしょうか? 見て見なくちゃ解りませんよ」
「そうだな。 出来る限り警戒して行くとしよう」
そう話ていると、ショウマが正面の扉を大きく開け放つ。
「お~い! 誰も居ないのか~? 返事してくれ~」
ショウマが大声で中に入り言う。
何でショウマは何も考えないんでしょう! 心配をしているこちらの身になって下さい!
「ショウマ! 何をやってるんですか!? 罠があったらどうするんですか? ちゃんと確認してから入って下さい!」
「あん? そんなもん入って見ないとわからねぇだろ! それに罠があったら、罠をぶっこわしゃ良いだけだ!」
「僕達だけなら良いかもしれませんが、周りに被害が出る罠があると言われたでしょう! ギルドマスターの話をちゃんと聞いて無かったんですか!」
「あ! そうか・・・俺達だけじゃなかったんだな。 悪かった」
「今回はなにも無かったから良かったですが、本当に気を付けて下さい」
素直は素直なんですが、短絡的な行動を何とか出来ないものでしょうか・・・
今はそんな事を考えている場合じゃないですね・・・先に進みましょう。
屋敷の中を調べ始めるが、1階には何も無く2階や食堂・厨房、ホール等も見て回ったが何も無かった。
そう、本当に何も無かった・・・装飾品や絵画、家具、食器等も見当たらなかった。
しかし、埃等はさほど溜まっておらず異様な光景に見える。
1階のエントランスに戻り、皆で話し合う。
「異常すぎますね・・・借金で家具等が奪われたという事でしょうか?」
「いや、それは無いだろう。 ウェーブの保証金等も払われ、数個の小さい街を治める領主だった人の奥方だ。 ちゃんと蓄えも備わっていたはずだぞ?」
フラン様がしかめっ面で言う
「では、何で誰もいなくなり、家具なんかも無くなったのでしょうか?」
「それは解らん。 本人を探し出し聞くしかないだろうな」
「一通り捜しましたが居ないとなると、隠し扉で地下に居るというのがセオリーでしょうか」
「または、隠し通路で逃げたか・・・だろうな」
フラン様の顔がもっと険しい顔になる。
隠し扉が見つからず、コノミさんに屋敷の部屋の地図を書いて貰うと空白の場所があることが解り壁を壊し中に入る。
「うぐぅ・・・ひどい臭いだな」
フラン様が中に入るなりそう言う。
確かにカビや埃の臭いが凄いと思いますが・・・獣人の方が五感が敏感なのでしょうか。
「この臭いには覚えがある・・・死人が居るようだ。 気を引き締めて行くとしよう」
まさか早速ギルドマスターが言っていたギフトの索敵が効かない場所のようですね・・・
しかし、どうやって用意したのでしょうか・・・そんな凄腕の錬金術師は、この国には居ないはずです。
しかも、そこまでして隠したかった物がゾンビですか? 何となく腑に落ちません。
ゾンビは、手足を切られても動く厄介な魔物ですが、弱点は心臓付近にある魔石と、脳の所にある魔核のどちらかを外すか破壊すると倒せます。
しかし、ゾンビはダンジョン外では見かける事が少ない魔物と聞いています・・・それは他の魔物に食べられてしまうからだと言っていました。
そんな弱い魔物を作ってどうするんでしょうか? それとも何かあるのでしょうか・・・
ゆっくり地下に進むと、そこは牢の様になっていた・・・左側の牢の中に多様な魔物の骨があった。
いや、魔物の骨だけじゃない・・・あれは人の骨のようですね。
使用人や兵士をゾンビに食べさせていた? もしくは、奴隷を買い食べさせていたとかでしょうか・・・
そのまま僕達は奥へ奥へと進む・・・1番奥の扉に辿り着き罠を警戒して開ける。
そこには、檻の中に入っている男と、檻の中の男に話しかける女性がいた・・・扉が開いた音が聞こえたのか女性がこちらを向き言う。
「ご機嫌麗しゅう、フランソワーズ様。 本日は、どういったご用件で?」
「そなたがソメイヨシノへの嫌がらせを依頼した事に付いて聞きたくてな・・・素直に話してくれるか?」
「ええ、もちろんです。 ちょうど偽物の聖女様もいらしゃっているようですし」
女性は笑顔で答える。
「あ! あなたは・・・そんな・・・息子さんをゾンビにしたんですか!?」
ユカさんは、女性にそう言う。
「いいえ、息子は生き返ったのですよ。 あなたなんかと違い本物の聖人様がいらっしゃって生き返らせてくれたのです。 ここにいるのが、あなたが回復させられないと言って見捨てた息子ですよ」
「フランソワーズ様! 御付の方々! お願いします・・・私を殺して下さい!」
檻の中の男性が僕達に向けそう叫ぶ。
「何を言うの? 今は不安定なだけ、もっと魔石を食べれば安定するはずよ。 聖人様もそう仰ってたじゃない」
女性は檻の中の男性に向け言う。
「そんなわけはない。 母上、私は魔物なのです! 母上お願いします、私を殺して下さい」
「あなたは、息子さんの死体を魔物に変えたんですか? 何故そんな酷いことを・・・」
ユカさんが女性に向かって言う。
「酷い? どこが酷いの!? 酷いのはあなたでしょう? 息子は生きているわ、なのに回復しなかったんじゃない! だから依頼したのよ! あなたを・・・あなたの大切な仲間を殺してもらう依頼をしたの、大変だったのよ迷宮都市まで行って来たんですもの」
「私に恨みがあるなら私だけを狙えば良かったじゃないですか! 何で周りまで巻き込んで!」
「私の痛みを1度味わってもらおうと思ったのよ。 でも駄目ね・・・安いお金で雇った者達は、結局失敗続きだった。 でも、もう大丈夫よ。 もうお金が無いもの、嫌がらせも終わりよ」
「では、捕まってくれるのかな? 元伯爵夫人殿」
フラン様が女性を見据え言う。
「いいえ、私が捕まったらこの子は殺されてしまうでしょう? ですから、私とこの子は街の外に逃げる事にするわ」
女性がそう言うと檻の鍵を開ける。
檻の中から男性が出ると女性が優しく抱きしめる・・・本当に仲のいい親子だったのだろう。
そう思っていたが、男性が女性を強く抱き首筋を食いちぎる・・・勢い良く鮮血が飛びちる。
男性が女性を離すと糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「あぁ・・・殺して下さい、私を殺して下さい・・・ごろじてぐれ~!」
男性がそう叫ぶと、こちらに向かって走ってくる。
男性の走りは遅くもないが早くもない・・・しかし、何故か危険な気がします。
男性が腕をこちらに伸ばす・・・文字通り腕が伸びてくる。
ショウマが前に出て腕を殴り飛ばす・・・その腕から体液が撒かれる。
ショウマは危険だと思ったのか、体液がかからないようにすぐに飛び退く。
体液が当たった地面はシュウシュウといいながら溶けていく・・・これは厄介ですね。