第186話 ギルドマスターの過去
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なんでやる気が無かったのかも聞いた。
回答はいたってシンプルで、目標を見失っていたからの様だ。
冒険者として軌道に乗った頃、膝を怪我し仲間を目の前で殺され、高位の冒険者に助けられた。
最初は自暴自棄になっていたが、冒険者仲間に喝を入れられ何とか復帰・・・冒険者活動を再開させた。
今までが大剣で1撃必殺の攻撃をしていたが、膝の怪我で負担が大きいので大剣を捨て色んな武器を使い我武者羅に強さだけを求めて進んだ。
そのかいあって高位の冒険者となることが出来たのだが、膝が悪化し冒険者ギルドのマスターになった。
しかし、強さを求めるのは止められず仕事の傍らで鍛えていた・・・だが、限界が見えてきた。
膝に負担をかけずに戦うのは、全身にかなりの負担がある・・・強い魔物と戦うのは時間がかかるため、挑む事も出来なくなってしまった。
強さを求めているが証明となる魔物との対決も出来ない・・・こうして、ギルドマスターはやる気が無くなってしまったようだ。
そんな時に1級冒険者である俺やミズキさんが現れた。
ギルドマスターはサブマスターのベントゥラ以外の報告は余り聞いたりしないので、やる気を出してもらう為に強い冒険者が来ていると紹介する手はずだったらしい。
強い冒険者と聞けば、手合わせを願い出ると考えた・・・その前に冒険者と俺達が対決する事になってしまったので焦ったようだが。
まぁ結果的にはギルドマスターが、やる気を出してくれたのを喜んでいる様だ。
全く迷惑な話だ・・・しかし、結果だけを見れば武器の使い方の訓練にもなり、金貨12枚貰えたので文句は言えない。
護送のクエストについても聞いてみた・・・思っていた通り盗賊に扮した他国の間者と思われる人の護送任務で、人数は少数で足が早い事が条件のようだ。
護送の任務をギルドマスターがやるのは異例だが、金に糸目を付けずに強い冒険者を依頼として出してるのだから良いとの事・・・サブマスターが文句を言っているが、全く聞く耳もっていない。
俺達に話が来なかったのは、どうやって依頼して良いか迷ったからだろう・・・一応王家の証のような物持ってるわけだしね。
国の揉め事は国同士で解決してもらうとしよう・・・話が終わり帰ろうとすると、サブマスターが話しかけてきた。
「すみません、カナタ様。 お持ちの魔石を売っていただけないでしょうか?」
「え? 魔石足らないんですか? 魔石ってこの国ではあまり使われないんじゃないんですっけ?」
「魔石は確かにあまり使用しません。 ですが、王都で大量に買われている御方が現れたのです。 そのおかげで在庫は全部王都へ行き、魔石の値段が今までの2倍近い値まで上がっています」
「なるほど、しかし売りません。 こちらも魔道具の試作等で使っていますので」
「そうでしたか・・・気が変わりましたらお願いいたします」
話は終わり、皆を連れてルーリンの家に向かう。
途中で雨が降ってきたため、俺とミズキさんがエアヴェールで雨を完全に遮りながら家に入る。
「えっと、今日の出来事で解ってくれたと思うけど、お金に困っていないんです」
「え? あ・・・そう言えばそんな話でしたね。 凄すぎて何も言えませんよ」
ナショウがハッとして言う。
「でも、俺より強い人がいるんだよ。 手合わせしても、全く勝てる気がしないんだよね」
「はぁ・・・強さの次元が違いすぎて悲しくなるばかりです」
「そう? あ! 話して無かったと思うけど、ある程度強くなって貰うからね」
「ある程度とはどのくらいですか?」
「ん~、どの位だろう。 オーク3匹の群れを1人で倒せるくらい?」
「あの、カナタ様達の強さを基準にしないでください。 普通はパーティを組み不意打ちで1匹倒して、他の2匹を倒すのがセオリーなんですよ」
「そうだったんだ。 でも、セラン君14歳とベトニア18歳の2人は1人で3匹くらいなら倒せるよ?」
「はい? いえ、あり得ないですよ。 そんな子がいるのなら天才じゃないですか」
「ん~でも、14歳になった全員、1対1でオークを倒せるからね。 最初の1ヶ月くらいはきついと思うけど、慣れると思うから頑張ってね」
皆一様に不安そうな顔をしているが、10歳の子供でもついていけてるんだし大丈夫だろう。
外は雨だし、何もやる事がないな・・・
「そう言えばルーリン、家があるんだったら王都に行くまでここに住む?」
「できれば宿で一緒に・・・」
「あぁ、ごめん。 1人じゃ不安だよね」
「いえ、そうではないんです。 薬草の栽培を部屋でもやっていまして・・・」
見た方が早いと言われ寝室へ・・・寝室に棚があり所狭しと様々な薬草やキノコが栽培され、1番下の隙間で3人寝ていたのか?
それだと、半畳位の大きさで高さも60cm程に1人寝てた計算になる、寝返りすら危ういな。
「リビングはある程度片付いてたけど、そこに寝たりはしないの?」
「私だけはリビングで寝てたんですが、寝具が置けないのでかなり寒いんです」
「寝具が置けない? 部屋の広さ的には置けると思うんだけど」
「薬草やキノコの影響を抑えるため藁が使えないんです。 なので古着を敷いたりして何とか寝てました。 狭い寝室だと古着だけで暖かいんですけどね」
ん? キノコの栽培とかだと下に藁を敷いたりとかすると思うんだけど・・・俺達の知らない薬草とかファンタジックな物があるのかな?
「そっか、皆と一緒にいてくれた方が何かと便利だと思うし、宿に泊まってて良いからね」
その後、小雨になるまでダラダラと過ごし、小雨になったのを見計らい王都に持っていく薬草類を採取し、キノコ類も毒を持つ物以外回収した。
何故植物は、そのまま回収出来るんだろう? 生き物では無いからなのか? それとも何かあるのか? 考えても答えはでないか・・・
とりあえず、便利だからいいと思った方が良いか。
ビアス子爵の所へ行き、盗賊達の尋問について聞く。
「カナタ様、兵士達について調べて見ましたが、他国との関係がある者は見つかりませんでした」
「そうですか、それは良かったです。 詳細を話していただけませんか? ビアス子爵の事を信じていますけど、ちゃんと自分で聞いておきたいのです」
「解りました。 兵士の巡回で盗賊を発見できなかった理由は、盗賊の中にいた賞罰がついていない者達のせいです。 賞罰がついていない者が、薬草の栽培で家を建てているという事で放置したようです」
「なるほど、でも家が多かったのに放置したのはいただけませんね」
「いえ、家の数が増えたのは最近のようです。 その報告を金銭の享受で誤魔化していたことも解っています。 事が事なので兵士の所業をどのように罰すれば良いか解りかねていたところです。 カナタ様はどのようにした方が良いと思われますか?」
「ん~、減俸とボランティア、そして公衆トイレを作る計画が来てると思うんですが、その掃除とかで良いのではないですか?」
「しかし、金銭を享受しなければ、もっと早く解決できたと思うのですが・・・」
「街の外に狩猟小屋等を建てる事は違法じゃないと聞きましたし、報告もその都度じゃなくても良いと聞きましたので1度目ならこの位で良いと思います。 ですが、2度目は無い事を全員にちゃんと告げてくださいね」
「畏まりました。 その様にいたします。 頼みたい事があるのですがよろしいですか?」
「ええ、良いですが出来ないこともありますよ?」
「難しいことではないです、すごく簡単なことですよ。 捕らえた盗賊を王都へ護送していただきたいのです」
「それはもちろん良いですが、冒険者ギルドにも依頼してましたよね?」
「ご存知でしたか・・・簡単に言うと、あちらは囮です。 カナタ様達は雨が上がり次第、首領のみを護送していただきたいのです」
「なるほど、解りました」
ビアス子爵との話は終わり、帰りがもっと遅れる事を通信機で言っておかなくちゃな。
今降ってる雨が上がるのは5日も後のことで、皆が大変な事になってた事を後で聞く事になった。