第179話 他国?
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宿に着くとオヤジさんと少し話し、空き部屋がないかどうか確認すると部屋へと向かう。
部屋の扉をノックし皆に食事とお酒を出してあげるが、今日はお酒は飲まないとの事・・・
お酒を飲ませて全員寝かせて、あわよくば・・・と思っていたけど人生上手くいかないようです。
「カナタ様、回復軟膏なのですが治療院と魔法薬を取り扱っているお店に置いてもらえることになりました」
「おお、凄いね。 どの位の量を置いて貰ったの?」
「とりあえず10個ずつです・・・なので、明日はもう少し量をいただければ」
「あぁ・・・急なんだけど、明日には出発することになると思う。 大丈夫?」
「私は問題ないですが・・・」
「何かやり残した事ある人は手を上げて下さい」
全員手を上げない・・・両親がいなくなったルーリンも手を上げなかった。
既に両親は亡くなっているというのを受け入れたわけではないようだ。
しかし、手紙をテーブルの上に置きついてくる事を決めたようだ・・・本当に強いと思う。
無理をさせない程度に鍛えて、一緒に街の周りの森を探索するのも良いかも知れないな。
両親の姿かたちや服装も知らない俺が捜すより、血縁者のルーリンが捜した方が形見を見つけられる可能性がある気がする。
今は、体力も無く弱すぎて一緒に捜すのは難しいしね。
「誰もやり残した事はないみたいだね。 じゃあ、この番号がかいてある袋の中に自分の私物とか入れといてね」
「はい、解りました。 あ・・・明日の朝は早いと思うので・・・その、早く寝ようと思います」
ナショウが挙動不振になりながら言う。
「そうだね。 昨日みたいに運動をいっぱいさせちゃったら、皆も眠れないかもしれないしね」
「か・・・かかか、カナタ様!!」
「ごめんごめん。いつも頑張って騎士のように振舞ってるのを見ると、ついね。 俺も戻るから、明日の為にゆっくり休んで」
俺は、領主の館に戻り明日のお弁当作りに取り掛かる・・・と言っても何を作ろう。
ザリガニ(エクビス)って泥抜きしなくても臭くないのかな? 茹でるだけで美味しいって言ってたけど・・・
「料理長、エクビスって茹でるだけで本当に美味しくなる?」
「はい、美味しいですよ。 私は爪の肉が好きですが、体の方もプリンとしていて美味しいですね」
「なるほど、ちょっと食べてみるかな」
ただ塩茹でし、殻を剝き食べてみる・・・噂どおり海老に近い味で美味しい。
というか、ハサミにも肉があって頭部に味噌まであるのか・・・ハサミの肉の方はカニっぽい気がするがどちらにしろ美味しい。
味噌はそこまでじゃないな・・・毛蟹の方が美味しいと思う。
味は解ったが、お昼は何にしよう。 ザリガニの殻を良く洗って出汁をとって、海老風味ラーメン・・・いや、出来れば持って食べれる物がいいな。
それなら、海老カツバーガーにでもするかね。
60cm位あるザリガニを数匹生のまま解体し片栗粉と塩で臭み等を取り、半分はすり身にして、もう半分は小さく切り、塩・コショウ・酒・片栗粉と一緒に混ぜる。
後は形を整え氷魔法で凍らせて、普通に小麦粉・卵・パン粉を付けて揚げる。
あとは、バンズをフライパンで軽く焼きレタスのような物と海老カツ・タルタルソースをはさみ出来上がり。
「そのような調理法もあったのですね。 やはり料理は奥が深い」
料理長が後ろで呟く。
そう言えばまだいたんだっけ・・・仕方がない、海老カツバーガーを半分渡して味見してもらうか。
包丁で半分に切り、料理長に手渡す。 臭いをかいだり指で触ったりしてから、一口食べる。
噛むスピードが一旦止まり目を見開いて海老カツバーガーを見ると、一気に食べてしまった。
というか、咀嚼のスピードが早過ぎるって! 見ているこっちが怖いから!
「カナタ殿。 パンの間に野菜が入っている物は人の街にあったので知っておりますが、これは別格といいますか。 同じように見えるのに味も食感も別物ですね」
「そりゃあそうだよ。 このタルタルソースはタダシさんが作った物だもん。 ほら手を出して、タルタルソースだけ食べてみな」
俺は料理長の手を無理やり取り、タルタルソースを手のひらに落とす。
「よろしいのですか? 私も料理人の端くれ、舌でレシピを盗んでしまうかもしれませんよ?」
「そうなったら、陛下への借りの1つを使って無理やり連れ帰るよ」
「なるほど、料理の神への挑戦をさせていただけるという訳ですな! 早速、何を使っているのか言い当てて見ましょう!」
ちょっと面白そうだし、小皿にタルタルソースを少し入れ料理長の前に置いておく。
料理長が羊皮紙と羽根ペンを持ってきて、唸りながら問題を解き始める。
その間に、俺は明日の昼ごはんの海老カツバーガーとフライドポテト、フルーツジュースを作りマジックボックスにしまう。
明日の朝ご飯は、俺が作ってあげますかね。
「料理長、明日の朝ご飯作ろうと思うんですけど何作っても良いですか?」
「え? あ、はい。 美味しければ何でも大丈夫だと思います」
「そっか、ありがとう。 じゃあ、エクビス出汁のラーメンでも作るよ」
エクビスの殻を浄化し茹で出汁を取る・・・殻を取り出すと、殻を細かく砕き濃く出汁を取る。
麺は、タダシさん特製麺だし手を加える必要はないだろう。
塩だけで味付けしたスープを一口飲むと、何か足らない。
タダシさんに聞くか? いや、こんな夜にかけると迷惑だろうし・・・俺には無理だったのかな?
カップめんだったら、カヤクとスープの素で出来あが・・・そうだ! 調味油、油だ油! 油が足らない気がする。
待てよ、ニンニクとか生姜なら油に匂いと味が付くよな・・・じゃあ、油に殻を入れたら海老っぽい味になるんじゃないか?
オリーブオイルをゆっくり熱しながら、細かく砕いたエクビスの殻を入れる・・・海老のいい香りがたちこめる。
出来た油を試しにスープに少しかけて飲むと、納得のいく味になった・・・うん、いい感じ。
タダシさん特製チャーシューを出そうと思ったけど、エクビスを殻付きのまま半分に切って焼いた物を上に乗せるのも良いかもな。
そう思い、白髪葱とエクビスの丸焼きを作りマジックボックスにしまい寝ることに・・・
料理長はタルタルソースを睨みながらぶつぶつ独り言を言っている・・・見なかったことにして寝よう。
執事の人がまだ起きていてくれたようで、お礼と明日の朝ご飯のことをいい部屋に戻って寝る。
明日には2つの緊急クエストの報酬の用意が出来ると言っていたし、受け取ったら王都に戻ろう。
寝ていると、ノックの音が鳴り起こされ通信機の時計で時間を確認する・・・いつも起きる時間よりも結構前だな、何だろう? 何かあったのかな?
「カナタ様、起こしてしまい申し訳ありません。 少々問題がおこってしまいまして・・・」
いつもの執事さんが、恭しく礼をする。
「解りました、すぐ起きます。 応接室に行けばいいのですか?」
「はい、その通りでございます」
すぐに普段着に着替え応接室へ・・・
「カナタ殿、朝早くに申し訳ありません。 盗賊を尋問したところ、お伝えした方がいい事柄が判明しました・・・単刀直入に言いますと、あの盗賊の頭は他国とつながりを持っているようなのです」
「なるほど、捕まえた人を他国に売って稼いでいたって事ですね・・・しかし、周りの国は友好国なのではないのですか?」
「その通りです。 しかし、奴隷契約ではなく魔法契約で縛れば少し遠い国でも連れて行く事が可能です」
「魔法契約と言うと、紙に名前とか書く奴ですか?」
「はい、その通りです。 高位の魔物の部位でも契約書が作れるのですが、その契約によって連れて行かれたのではないかと思っています」
ん? どういう事だ? なんで奴隷じゃ駄目なんだ?