第178話 大麦の買いつけ
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「言い方悪かったみたいですね。 お金は大切な物だと解っていますが、使いきれないお金があるって意味です。 不快な思いをさせてしまって申し訳ありません」
「いえ、少しの間ですが話してどういう人か解っていますので大丈夫です。 そして、感情が出てしまうのは私が未熟だからですのでお気になさらないでください」
その後、ミズキさんはナショウ達の様子を見てくると宿へ向かった。
俺は、エルロッタさんが借りていると言っていた倉庫へ向かう。
倉庫の前で突撃牙獣のメンバーが倉庫の前に集まっていた。
「エルロッタ、捜してきてくれたのか。 全部運び終わった所だ」
突撃牙獣のリーダーが笑顔で言う。
「エッダーシュありがとう。 早速ですが、中に入り依頼の品物の確認をお願いします」
突撃牙獣のリーダーさんの名前ってエッダーシュと言うのか・・・リーダーとしか聞いてなかったな。
「はい、確認させてもらいます。 中に入っちゃって良いですか?」
「はい、どうぞ。 ただし、私とエッダーシュも中に入ります」
「ええ、いいですよ。 不正等しないようにきっちり見張って下さいね。 あと、確認出来次第マジックボックスにしまっていきますので、しまった数をきっちり書いておいて下さいね」
倉庫の大きさはだいたい10畳くらいで、奥に米俵のような物があり中に大麦が入っているようだ。
米俵の表面の藁をずらし中を確認する・・・お願いしていた通り外皮がそのまま残っている大麦がそこにはあった。
他の俵にも全部に手を触れて、品質を確認するが余り良くないようだ・・・自分達で食べる分だと言っていたしこんなもんかな?
しかし、依頼して数日でこの量を集められたって事は商人としての腕は良いのだろうな。
「余り品質は良くないようですが、大丈夫なようですね。 報酬をお渡ししようと思います」
「え? でも、全部確認してないですよね? 大丈夫なんですか?」
なるほど、触れただけで品質が解る事を知らなければそうなるのかな? まぁいいや、勘違いしたままでいいだろう。
「商人は信用が第1、こんな所で信用を失うようなまねはしない。 そうでしょ?」
「もちろんそうですが、後で何を言われても返品や交換等はしませんよ?」
「ええ、もちろんです。 ちゃんと書面はありますか?」
「いえ、書面は作っていません・・・書面は作った方が良いのですか?」
「私にはいりませんがギルドや保証人等を通していない依頼ですから、書面がないと後で難癖付け放題ですよ? なので、簡易的な書面でも作っておいた方が良いと思います・・・それと書面を書いて貰ったときに冒険者ギルドカードなどで本人か確認した方がいいですよ」
「え? あ、はい。 そうですね、今後気を付けます。 では、書面を作成してきます」
「今回はいりませんから大丈夫ですよ。 色々言って申し訳ありません。 とりあえず、身分証だけ確認して下さい」
俺は、冒険者ギルドカードをエルロッタさんに渡す。
「き・・・金色! 1級冒険者だったんですか!?」
「ええ、そうですよ。 エッダーシュさん、強くなりたいのでしたら王都にある八重桜学園予定地に行くことをお勧めします。 詳しい場所や時間は冒険者ギルドに行けば解かります」
「予定地って事は、まだやってないんじゃないですか?」
エッダーシュさんが、首をかしげながら言う。
「今もやってますよ。 しかも朝早くから正午まですので、狩りには午後から出発出来ますよ。 実績としては、魔物と対峙したことがない14歳の子供達の6人PTが、半年訓練したらオークリーダーとオーク5匹の群れをかすり傷ぐらいで倒すことが出来ているくらいですね」
「はぁ? まさか、そんなこと出来るわけがないじゃないですか。 1対1でオークを倒せるって事は熟練者ってことでしょう?」
「信じられないと思いますが、事実です。 お金もかかりませんし、他の冒険者の人も参加しています。 読み書きも教わることも出来ますし、朝食が配布されますから1度だけでも来てみてください」
「時間があれば、参加して見ます。 ですが、何故そのようなことを教えてくれるんですか?」
「そうですね・・・皆さんが気に入ったからですよ。 では、料金を払いますね」
そう言うと銀貨3枚をエルロッタさんに渡す。
「え? 量で換算すると銀貨1枚と大銅貨2枚の契約のはずですよね?」
「ええ、そうですね。 多く渡したのは、小麦や大麦を王都に運んでもらう為の準備金と、突撃牙獣の皆さんへの報酬ですよ。 準備金については、私はここまで買いに来れないと思うので便宜を図って貰いたいという事ですね」
「そういう事なら受け取っておきます。 ちゃんと、優先して訪問しますのでご安心を」
「はい、お願いします。 では、館に戻りますので何かあれば領主の館に訪問して下さい」
「訪問出来ないので冒険者ギルドへ連絡を入れます」
エルロッタさんやエッダーシュさん達に別れを告げ、ミズキさんを迎えに宿屋へ。
宿屋の部屋の前に行くと5人とミズキさんが話していた・・・ミズキさんが質問攻めされているように聞こえる。
ソメイヨシノの話をしているように聞こえるが、1人だけ俺の事を事細かに聞こうとしてるのが分かる。
たぶん声がナショウに似ていることから、ナショウが聞いているのだろう・・・俺に興味を持ってくれると思うと嬉しいもんだ。
ノックをして部屋の中に入り、ミズキさんを連れて領主の館へ向かう。
館に行きミズキさんと別れると、子爵へ冒険者達のことを報告に行く。
報告が終わると厨房へ向かう・・・厨房へ行くと料理長が全員に指示を出しながら料理を作っている
今晩のメインディッシュは、焼き魚のようだ・・・薄塩にしてるみたいだけど何でだろう?。
ふとテーブルの上を見ると、見慣れた小さい容器が置いてあった。
「これって醤油? なのかな? というか、何でもうあるの?」
俺は思わずポツリつ呟く。
すると料理長が、笑顔で俺の問いに答えた。
「速達便の往復で送ってもらいました。 これをかけるだけで新しい味になるようですので魚を焼いているのです」
「なるほど、なら餡かけを作りましょうか。 本当なら魚の焼き方も変えるんですけど、餡かけをかけるだけでも美味しいはずですよ」
「餡かけ? とはどういった物でしょうか? 教えていただけませんか?」
「ええ、いいですよ。 一緒に作りましょうか」
街で売っていた玉ねぎとエノキのような茸を使って餡かけを作っていく・・・出汁を取る為にマジックボックスに入っている昆布と干ししいたけも使う。
ジャガイモから作った片栗粉と味醂も渡し、料理長が作っている所を後ろから指示する。
味醂は真田夫婦が作った物だが、少量なら大丈夫だろうし味醂は真田夫婦しか作れないから仕方ない。
やはり料理長だから手際がいいな・・・というか、ギフトが上位の俺よりも流れるように動いてる。
やっぱりギフトだけじゃ駄目だって事がわかるなぁ。
料理のことを料理長に任せて、武器や防具についている汚れを外で流し風で乾かしていると、ミズキさんも着替えを済まし魔法使いのローブの様な装備を洗いに来たようだ。
そんなに汗かくような事して無いんだから拭くだけで良いんじゃないのかな?
「ミズキさんも防具を洗いに来たの?」
「そうです。 ずっと着ていると汗臭くなってしまいますので」
「そっか、調整が必要なら言ってね。 まぁ攻撃くらって無いから必要ないと思うけど」
「はい、必要になればすぐに言いますよ」
その後、ミズキさんの薙刀と杖を見せて貰い歪み等がないか確認し、自分の武器の調整も済ませると屋敷の自室へ。
自室に着く前に夕食が出来たことを教えられ、食堂へ。
子爵の家族も交え談笑しながら食事をし、俺はナショウ達の所へと向かう。
今日も出来ると良いなぁ・・・




