第177話 ノーマルワイバーン
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ワイバーンの近くに移動し良く観察してみる・・・ノーマルのワイバーンを見るのは初めてだな。
一番近いワイバーンをみると、青みの混じった灰色のトカゲもしくは青みの混じった灰色のプテラノドンに近いように見える。
1番奥のワイバーンは青色が少し濃く一回り体が大きい。
ブラッディルビーは全然違う形だった・・・ブラッディルビーは別格もしくは別の生き物に進化したのかな?
そんな事を考えていると、木の上からワイバーンを監視しているミズキさんから小声で通信が入った。
「カナタさん? ワイバーンが寝るまで待つんですか? それとも、突撃するんですか?」
「あ、ごめんごめん。 今から突っ込むよ、すぐに飛ばないと思うけどよろしくね」
「冒険者の皆さんは、右側の少し離れた所にいるワイバーンをお願いします」
「了解しました。 では、御武運を」
複合PTの斥候が、複合PTに戻っていく。
さて、ワイバーン狩りを始めよう・・・狩の時間だ。
俺は無言でワイバーンの黒大剣を持ち1番近くのワイバーンに向かって走る・・・ワイバーンは座った状態のまま蛇のように首を擡げこちらを見るが、既に1匹の首の脇まで来ており武器を振り下ろす所だった。
やはり武器の性能が良すぎるのか水を切る位の手応えで首を落とす。
周りのワイバーンは、何が起こったのか解らないようだったが2匹目の首を落とすと一斉に咆哮をあげる。
咆哮をあげるとゲームのようにワイバーンが硬直するんだな・・・そう思いながら、また1匹の首を落とす。
俺の防具は、咆哮を選択し聞こうと思わなければ全く聞こえないほど密封されている・・・だが、ここまで大きな音であれば鎧に振動が伝わりある程度聞こえる。
7匹の咆哮でも問題にならないほどなら、龍でも大丈夫そうだな。
咆哮が終わるまでにもう1匹の首を落とす・・・後6匹、内俺が倒すのは後5匹だな。
このタイミングで1番端のワイバーンに冒険者達が攻撃を開始する。
大盾を持っている冒険者が、槍で盾を叩いて喚きながらワイバーンの前に出る。
その他の冒険者は扇状に広がり、前衛が槍で後衛が弓やボウガンで攻撃している・・・最初に翼膜を切り裂き飛べないようにする作戦のようだ。
しかし、翼膜は外套の素材として人気があるのに勿体無い・・・
そんな事を思いながら、視線を戻すと1番近い1匹が突進して来ている・・・その他のワイバーンは口の中に光が見える火炎弾のようだ。
仲間ごと撃つのかな? 魔物が考えている事は解らないか・・・
羽根を広げ突進してくるワイバーンの足元の土を盛り上げ、転ばせると首を落とす。
火炎弾に、倒したワイバーンが燃やされては勿体無いと思い回収を先にする・・・その間に飛んできた火炎弾は、ミズキさんのアイスボールとぶつかり爆発する。
目の前で自分の吐いた火炎弾が爆発し驚いている1匹の首を落とし、隣にいたワイバーンに注意を移すとノーモーションで羽根を羽ばたかせバックステップして距離を離されてしまう。
流石のミズキさんも短距離の羽ばたきには反応出来なかった様だ・・・いや、1番大きいワイバーンの方で大きな音が鳴り転んでいるという事は、飛ぼうとしたのを邪魔されたのだろう。
その隙に1番大きいワイバーンに近づいていく・・・大きいワイバーンの隣にいたワイバーンが俺に突進してくる。
そのワイバーンを踏み台にしジャンプでかわし、大きいワイバーンに襲いかかろうとするが口の目の前で火炎弾のような物が爆発し衝撃波で少し戻され剣の距離まで届かなかった。
すぐにかけ出しワイバーンに近づこうとするが、大きいワイバーンが立ち上がりバク宙をして尻尾で攻撃してくる。
尻尾を横に避け首が下に来たタイミングで首を落とす。
上位種のように感じるので直にマジックボックスにしまう。
火炎弾を吐こうとしている遠くのワイバーンを無視し、俺の背後から噛み付こうとしているワイバーンの攻撃を飛び込み前転で避け、すぐに起き首を落とす。
やはり、火炎弾はミズキさんが対処してくれたようだ。
しかし、これだけ仲間を倒されたら普通逃げるのに逃げないんだよなぁ・・・まぁ逃がす気はないんだけど。
火炎弾を吐き出したワイバーンは、ミズキさんを見つけターゲットにしたようだ。
ミズキさんに火炎弾を吐き出そうとしているが、俺を無視するのは駄目だろう・・・
火炎弾を溜めているワイバーンの脇まで行き、首を切り落とす。
やはり思った通り簡単に終わったな・・・そう思い倒したワイバーンを回収する。
全部回収し終わると、冒険者の方を見る。
ワイバーンは羽根がボロボロになり、あらゆる所から血を流している。
現在は2PTごとにワイバーンに当たって、1PTは水等を飲み休憩している。
誰も大きな怪我をしていないって事は、安全策でゆっくりと倒しているのだろう。
お、1PTが交代した。 結構綺麗に交代するもんだな・・・連携の練習でもしてたのかな?
上手いな、足を攻撃して転ばせた・・・首の所に槍が突き刺さっていく。
おお、倒した・・・皆が大声で叫んで歓喜を表している。
「おめでとうございます。 5級冒険者への道を1歩進みましたね」
俺は、拍手しながら冒険者へ近づく。
「ありがとうございますっす。 こんなに簡単にワイバーンを狩れるなんて嬉しい限りっす。 もう1匹くらい貰って置けばよかったっすね。 しかし、1級ともなると桁外れの強さなんっすね」
鹿の獣人が、頭を下げながら嬉しそうに言う。
「そうですね。 皆さんも鍛えれば、すぐにこの位になりますよ。 もうすぐ夕方になると思いますが、皆さんは野宿するんですか?」
他の1級の事なんて解らないので、話は適当に流したけど大丈夫だろう。
「そうっすね。 今日は戦闘で疲れたんで、休んで明日の朝早くに移動しようと思ってるっす。 折角ワイバーンの肉が手に入ったんっすから、パーティーをしようと思ってるっす」
「そうですか。 私達は移動しますので、またどこかで」
鹿の獣人を含む18人から感謝の言葉が降り注ぐ・・・俺は手を振ってミズキさんと一緒に街に向かって走って行く。
途中サブマスターと帰ってった冒険者達がいたが、見つからないように少し遠回りして帰る。
折角殺さないようにして帰ってもらったんだから、ちゃんと有効利用しなくちゃな・・・
死ぬ最後まできっちり働いて、命が尽きる最後まで人々の役に立ってもらう計画なんだし。
日本でも、禁固刑ではなく刑の重さに準じた借金刑のような物にして畑や水田等を最低賃金換算でやらせれば良いのに・・・
今でも休眠中の水田とか結構あるんだし・・・そんな事を考えながら、入場門へ行き事情を説明する。
冒険者達の名前とかは覚えていないが、サブマスターと一緒だし解るだろう。
さて、冒険者ギルドにも冒険者達のことを報告しておいた方がいいだろうな。
冒険者ギルドに行くと、グラントエクビスを倒したときにいたギルド職員が戻っていた。
ギルド職員に冒険者のことを報告し、陛下から貰った木札を職員に確認させ犯罪者としておいた。
これで逃げ道は無くなっただろう・・・さて、子爵の館に戻りましょうか。
そう思った時に、エルロッタさんが冒険者ギルドに入ってきた。
「あ、ようやく見つけました。 依頼が終わりましたよ、お渡しはいつでも行えますよ」
「ごめんごめん。 新しい食べ物が欲しかったから、ちょっと狩りに行っててね」
「そうなんですか。 倉庫の場所をお教えしておきますね」
「いや、いいよ。 今からとりに行くから案内して貰っていい?」
「はい、解りました。 あと、少し量が多くなっちゃったんですけど大丈夫ですか?」
「お金の心配? それなら大丈夫だよ。 無駄にいっぱいお金持ってるから」
「無駄に? それは何ですか?」
エルロッタさんが、不機嫌そうな顔をして言う。
あっちゃー、怒らせちゃったかな・・・