side story 好未
ブックマーク・評価 本当にありがとうございます
私は、肌荒れが人よりも酷くて、少し人見知りで、人よりも少し漫画やアニメが好きなだけだった。
ただそれだけでオタクと呼ばれていた・・・
しかし、幸運なことに仲間たちに囲まれている。
沙希は小学校からの同級生で、腐女子の師匠でもあり、何故かカップリングがほぼ一緒と言う稀有な存在だ。
響子は、小学校6年の頃の転校生で、同じ下敷きを使用している事が発覚してから一気に仲良くなった。
高校は別になると思っていたが、なぜか同じ学校に通っている・・・本当にありがたい。
「冬イベントはどの衣装で参加します? プリンスのキャラをやりたいと思うんですけど・・・」
私は、2人に提案する。
「そうですね! 良いと思います! 男装は響子が映えますしね! ただ・・・体型的にあたしは厳しいんですよ・・・これが・・・」
沙希が、自分の胸を見て呟く・・・
「沙希・・・そこで、胸の自慢を言わないで欲しいんですけど・・・」
響子が、沙希の胸と自分の胸を見比べながら言う。
「全くその通りであります」
私は、2人にたいして敬礼をする。
「もう! 悩んでるんだよ! 酷いよ2人して~!」
「「あはははは、ごめんごめん」」
「今回は好未も一緒にやらないかい?」
「え・・・いや・・・その・・・」
「そうか・・・まぁいいさ、大学は3人とも違う場所になるだろうし、来年は受験だから最後になるかもって思ったんだよ」
「うん、出来れば一緒がいいな・・・無理にとは言わないけど・・・」
「2人も知っている通り・・・肌が汚いからさ・・・」
「そこは化粧で何とでもなるさ・・・出来れば考えといてくれ・・・」
「うん、今回は最後になるかもしれないし、コスチュームはもちろんアクセサリーにも力を入れたいんだ」
「いつも作ってくれてありがとう。私も手伝うけど、何かあれば言ってね」
「そうだな、いつも悪いな・・今回は、私も手伝うぞ!」
「ありがとう、がんばるよ」
こんな時間がいつまでも続いて欲しいと思っていた。そんな事は不可能ってわかっているのに・・・
キャラクターの服は前回の夏に書いた同人(誌)のキャラクターが着ていたものにしようと思う。
知り合いのサークルの人が出店できたら、前回売れ残った物を置いてくれることになったので、売り子を手伝うためだ。
材料の買出しがほとんど終わったが、細かいパーツがもっと無いか自身の同人を持ち歩く毎日。
3人で頑張って作る楽しい日々・・・になるはずだった・・・
いきなり森にいた・・・材料に気に入らないところがあったから、ちょっと見に行くだけのつもりだったはずだ。
お金が足らないから、今回は買わずに家に帰る途中だった・・・なんで? どうしたの? 解らない。
意味が解らなかった・・・ただただ、泣いている事しか出来なかった・・
1日目の食事後に、皆話していた・・・私は気を使われているのが解っていたが、心ここに非ずって言う感じだった・・・何も考えたくない・・・
その後、榊原さんからジャージを貸してもらって、少しぽーっとしてると、ちょっと話したいといってきた・・・ジャージを返したほうが良いのかな?
なんか違う気がする・・・リーダーみたいな人が何のようだろう? 私のことはほっといてくれれば良いのに・・・
「ちょっといい?」
「なんしょう?」
あ!かんじゃった・・・
「いや、元気がないなって思ってさ」
スルーしてくれたのかな?・・・
「それは・・・」
「奥で2人で話さない? 皆から見える位置だから安心して」
「いいです」
「悪い話じゃない、趣味の話だよ、行かない?」
なんだろう? 趣味ってなに? ものすごく嫌な予感がする・・・だから、後を付いていく。
奥の方に行くと、向かい合って座る。
「犬耳って好き?」
「はいぃぃ? なんですか急に」
「ごめんね、バッグからチラッと見えたんだよね、同人誌っぽいやつ」
「な!・・・」
なんですと? 見えたとですか? 榊原さんの趣味の話じゃなくて、こっちの趣味の話なの? うわぁ・・・どうしよ、どうしよ・・・
「ここが異世界だった場合、獣人いるんじゃない?」
「え?なん・・・」
「獣人の美少年に会えるかもしれないよ、どう思う?」
会えるなら会ってみたいけど、会える保障なんて・・・
「もちろん会える保証は無いけど、0%じゃないでしょ? しかも異世界だよ! エルフなんかにも会えるかもだし・・・」
「でも、異世界かどうかも解らないですし」
「ただ、好きでしょ? 犬耳とか」
「それは・・・」
「希望に過ぎないけど、頑張ってみない? 騙されたと思ってさ・・・ね」
「頑張ってみます・・・でも、私じゃ・・・」
「自分なりの努力でいいんだよ、無理すれば歪みが出ちゃうよ・・・というか俺も獣人にあってみたいし。モフモフ系か、耳尻尾だけの系統か、それが問題だ!」
「ぷふっふっふっふ」
思わず笑ってしまった。いきなり力説するから、真顔で。
「笑ったね! うん、その方がいいよ、あっと・・・時間取らせてごめんね」
「いえ、元気出ました、ありがとうございます」
「うん、出来れば安全なところに行くまで、俺がオタクってことは内緒でね!」
にっこり笑って、親指をびしっと立ててくる。
それを見て「ぷふっくっくっく」って笑ってしまった。
明日から泣かずに出来る事をしようと思う。がんばろう。