第171話 ミズクサの街の散策?
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ミズキさんに連絡を取ると、今は食堂のような所で休憩中だと言う。
その食堂の名前を聞き、とりあえずジャケットとネクタイを取りしまうと、茶色のパーカーを出して羽織る。
歩いてる人に聞きながら食堂へ向かうが声をかけると非常に驚かれた・・・やはり珍しい服だからなのかな?
食堂に着くと3人が俯き、2人が慰めていた。
ミズキさんは、ノートのような物の切れ端に鉛筆で何かを書いている。
ミズキさん・・・こう言う時は落ち込んでる子を慰めてあげようよ。
「おまたせ、遅くなって申し訳無い」
「いえ、大丈夫です」
ミズキさんが、俺に返事をする。
だが、他の5人はこちらを見て指差しながらポカンとしている。
なんだろう? やっぱり珍しい服だと注目されちゃうのかな?
「魔シルクの真っ白な服を着てる・・・」
「貴族様じゃないって事は」
「王族・・・なんじゃないですか?」
「すみません、今まで大変失礼な真似をいたしていました。 寛大な処置をお願いいたします」
5人が、ぽつぽつと話始めるといきなり土下座をした。
「いやいや、王族じゃないから・・・なんで白い服だと王族とか貴族とかなの? というか、椅子に座って」
俺がそう言うと皆立ち上がり椅子に座ると話し始める。
「魔シルクの白色は元々高いですし、何度か洗うと色が付いてしまうので貴族様か王家の方くらいしか着れないのです」
なるほど、アヤコさんが井戸水には鉄分があって色が付いてしまうといっていたな。
俺達は【流水の水差し】ででた水を使って洗濯してるから色移りがしない。
今考えたらシルクって手洗いしちゃ駄目じゃない? ファンタジー物質だから良いのか?
「なるほどね。 今度から魔シルクの白色は貴族の社交場等でしか着ないようにした方がいいかも知れないな。 それで、3人は何で落ち込んでたの?」
「最初は私のようですね・・・私が攫われたのは半年前ほどなんですが、一人っ子という事もあり両親が捜しに行ってしまったようです。 しかも、隣のおばさんが5日ほど顔をみていないと言ってたので・・・もう既に・・・」
「なるほどね、外に出たと言うのも確認したの?」
俺がそう聞くと、彼女は無言で頷く。
「それだと捜しようがないな・・・家は無事だったの?」
「はい、全部無事です。 どうすれば良いのでしょうか?」
「選択肢は幾つかあると思うよ。 まずは、この街に残り両親を待ちながら仕事を捜す。 俺達と王都に行き仕事をする。 冒険者になり自ら捜しに行く。 何もしない。 パッとあげられるのはこれだけだけど、どうする?」
「気持ちの上では捜しに行きたいですが、私1人では死にに行くだけだと解っています」
「じゃあ、明日の朝に俺が周りを確認して来てあげるよ。 何かしら見つかったら儲けもんだと思う程度でいてね」
「はい、ありがとうございます。 じゃあ次話してみて」
「はい、解りました」
「どうしたの? 何があったか言ってもらえる?」
「私は、1年以上前に弟と一緒に近くの商家で働いていたのです。 しかし、商家が無くなっていました。 ウェーブが来るからと迷宮都市に行ってる筈なのですが連絡する手段がありません。 皆無事だと良いのですが」
「なるほどね。文字とかは書けるの? 書けるなら冒険者ギルドに手紙を出してみたらいいんじゃない? 商家なら、商いで冒険者ギルドで手紙を受け取ったりするだろうしさ。 料金は貸してあげるよ?」
「本当ですか!? 是非出してみたいです! お金が働いて返しますので良いでしょうか?」
「働いて? 商家と連絡取れたら、商家に移るんじゃないの?」
「いえ、私は年季奉公で1年更新だったのでとっくに期限が切れてます。 なので、王都で働かせて下さい」
「うん、解った。 じゃあ、手紙が出来たら言ってね」
「はい、畏まりました。 ご主人様」
「名前は呼び捨てでカナタでいいからね。 あと、商家に勤めてたって事は、伝手とか少しはあるってことだよね? 宣伝をして来て貰ってもいい? 駄目元でいいからさ」
「解りました。 今から行って参ります」
「待った待った。 もう夕方になるから宿を取ってから行ってきな」
「はい、申し訳ありません」
「さてと、後はナショウだけだけど何があったの?」
「やはり、私の兵籍が無くなっておりました。 実家に戻ってもいいとは思いますが、兄弟達の為に家を出たので戻りたくありません。 私も働かせていただけないでしょうか?」
「うん、最初からそのつもりだったし大丈夫だよ。 他の2人はどうする?」
他の2人は口減らしのために村を出たようで、帰れないとの事だった。 人材ゲットですな。
今は誰が何に向いてるか解らないから色々やってもらおうかな。
その後、宿を捜すがどこもいっぱいで、かなり高級な宿の6人部屋を取った。
流石小麦の一大生産地! 脱穀後の小麦を求めて商人が殺到してるので1室しか取れなかったよ。
檻の中で励ましあってたというし、今更隠し事なんてないといってるからいいだろう。
借金になるのでは? と、お金の心配をしていたが、1泊朝食付きで銀貨3枚(3万レティア:約30万位)なので奢ってあげることにした。
5人とも、物凄い頭を下げていたが働いてもらうしいいだろう。
銅貨位なら後で返してね。と、借金にしてあげても良かったのだが、銀貨だとさすがにね・・・心安らかに眠れるといいけど。
宿を取ったので、5人に銅貨を1枚ずつ渡し帰りに適当な店で見た事のないフルーツ等を買い、ミズキさんと一緒に領主の館に戻る。
子爵にミズキさんを紹介し、料理の準備に取りかかるため厨房へ。
オカラハンバーグは、約3割がオカラで照り焼き味にした。
味噌マヨドレッシングを使ったサラダも作るので、大豆製品は大方使用した事になるだろう。
自分達が作っている物がどんな物になるのか解らなければ作るのに身が入らないかもしれないし、重要な物じゃないと思われたら俺達が困っちゃうしね。
そんな事を考えながら、料理を作る・・・でも、そんなに見なくてもいいと思う。
現在、俺の後ろから料理人達が腕組みをしながら見ている。
本当に気が散ってしょうがない・・・ギフトのおかげで失敗は余りしないんだけどさ。
最初に作っていたジャガイモと豆乳のポタージュが出来上がったので、料理長に味見をお願いした。
まぁ、タダシさんのレシピどおりに作ってるから不味いわけないと思う。
後ろでヒソヒソされるのは気になるから、一口食べれば話のネタになるだろう・・・一応、スープ皿ごと渡した。
料理長が一口食べると、いっきにスープの入った皿を飲み干す・・・いや、火傷するから!
「閣下は、神の料理人タダシ殿の弟子だと伺いましたが、本当でしょうか?」
スープを口の端に付けたまま、料理長は俺に言う。
「タダシさんの弟子である事は認めるけど、何かあった?」
「不躾なお願いなのですが、私を神の料理人タダシ殿の弟子に推挙いただけないでしょうか?」
「え? 俺はいいけど、周りの皆が困るでしょ? 皆を困らせる事はしないよ?」
「では、閣下の弟子に」
「いや、駄目だって。 王家の料理長も副料理長も弟子入りは出来なくて、週に1回くらい通ってるんだから」
「副料理長だと! あの野郎! 既に教えを受けて居やがるのか! 料理の達人とうたわれた料理長の教えを受けただけでは無く・・・」
料理長が、口汚く罵りながら一人で叫んでいる。
「すみません。 料理長は、王家の副料理長とは幼馴染でライバルなんです」
料理人が1人スッと出て来て俺に説明してくれる。
なるほど、ライバルが新しい技術を覚えてると聞いたからこうなったのか・・・この後嫌な予感しかしないが、面倒だから放置しよう。
こうして俺は料理に戻る。