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努力の実る世界  作者: 選択機
第2章 ティンバー・ウルフローナ王国
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第168話 ミズクサの街への旅路

ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。

「えっと、ここを真っ直ぐ進むと捕らえた盗賊の所に着きます。 行きますよ?」


「あの、この椅子のような物に乗っている盗賊を背負っていくんですか?」

 ナショウが、背負子に乗っている盗賊を指差して言う。


「え? うん、常に風の魔法をかけてるから、あんまり重くないよ。 でも、危ないから近づき過ぎないようにね・・・あと、サンダルが壊れたりしたらすぐ呼んで下さい」


 確かに背負子に盗賊が座っていて、その膝の上に盗賊が座っていて、その上にも盗賊が・・・となっている。

 1番ガタイが良かった人を1番下にして、上にどんどん乗せてったからバランスが悪い。

 しかも乗せてる最中に痛みで起きたので、顎にを叩き脳を揺さぶって気絶させた。

 魔力眼で見る限り気絶しているだけのようなので大丈夫だろう。


 出発をしたが、索敵をして見ても周りには敵がいないようなので、木の枝等を切り落としながら進んだ。

 助け出された5人は、森の道は慣れていなかったようだが誰1人文句を言わずに付いて来た。

 森を抜けると、殴り倒され放置された頭目と土で出来た椅子に座る突撃牙獣の皆さんがいた。


「すみません、お待たせしてしまって」


「いいさ・・・後ろの5人は、捕らえられていた人か?」


「ええ、そうです。 ミズクサの街出身の人がいるみたいなので護衛して移動しようと思います」

 俺は背負子に積んであった盗賊を縛ると檻の中に入れながら、笑顔で言う。


「そうか、解った。 俺達も一緒に行こう。 人数多い方が盗賊も手が出しにくいだろうからな」


「良いんですか? 本当に助かります。 そうだ、お礼に食事をご馳走しようと思いますが、好き嫌いはありますか?」


「いや、無いが・・・ここで作るのか?」


「いえいえ、もう出来てるんですよ。 私はマジックボックス化のギフトを持っていますので」


「えぇ! マジックボックス! 本当に持ってるんですか!?」

 エルロッタさんが、大声を上げると恥ずかしくなったのか座ってしまった。


「そうですよね。 商人にとって物凄くほしいギフトですもんね。 これを食べてみて下さい」

 俺は子供達が作った肉まんを渡そうとするが、手が少し汚れている。


「皆さん手が汚れているようなので、手を洗って下さい。 これを渡すのはその後にしましょう」


 手を洗って手ぬぐいでふき取ってもらうと、肉まんを渡していく。

 渡された直後に食べ始め、温かいとか美味しいとか嬉しそうな声が聞こえてくる。


「もう1つ貰えないか? もちろん、かかった代金は色を付けて払う。 頼む」


「代金はいりませんよ。 他にも色々あるので食べてみますか? それとも、今渡した肉まんだけで良いですか?」


「図々しいと思うが、色々食べてみたい・・・良いか?」


「いいですよ。 気に入ったのなら、王都で販売してますので来て下さいね」


 宣伝もしながら、コロッケパンや串焼き、トンカツ等々色んな料理を堪能してもらった。

 全員、料理に舌鼓を打ち「あれが美味しかった」「俺はあれが1番だ」とか言っている。

 食べ過ぎて動けなくなった人もいたが、手伝ってくれると言うんだし仕方がない。

 助け出された5人が、羨ましそうに見ていたのでウドンを小さい器に移し変えて肉味噌を少しトッピングして食べさせた。

 急に固形物を食べると内蔵がビックリしそうだし、良くないと思って少量にした。


 一応5人に集まって貰い、盗賊を殺したいのなら殺しても良いがどうする? と聞いた・・・5人は、少し相談しますと言い話し合った。

 それぞれの意見の衝突があったが、1つの結論が出た。


「恨みは持っていますし殺してやりたいですが、それだと盗賊と同じになってしまいますので我慢します」

 泣いている子もいたが、拳を握って耐えているようだ。


 本当に凄い、良く耐えられるもんだ。

 捕らえた盗賊を、数人なら殺しても構わないと思っていた俺とは大違いだ・・・俺は情けないな。

 何かしてあげられることがあれば良いんだが・・・


 遅くなってしまうという事で、俺が荷車を引き馬車と共にミズクサの街に移動を開始する。

 馬車の速度は、少し速めの歩行ぐらいだった・・・他の馬車もこんな物か聞いたら、商人の馬車は商品を乗せているので重く速度が遅いが力の強い馬を使っているらしい。

 大商人だと、リザードやラプトルを使用するのである程度速いとの事だった。

 だから商人の馬車は狙われやすいのか・・・積荷を満載に積まないと勿体無いし仕方ないのかな?


「あのさ、無理して歩かなくて良いんだよ、ナショウ」


「はい、お気遣いありがとうございます。 しかし、ここの景色は見覚えがあります。 後1時間弱で街に着くと思いますので、鈍った体を動かそうと思いまして」


「まぁそれなら良いんだけど・・・というか、皆って帰る宛あるの?」


「私は騎士見習いとして、伯爵様に仕えていましたので大丈夫です」


「あぁ・・・伯爵は、犯罪奴隷になったよ? 今は子爵が治めてるんだよね」


「えぇ! どういう事ですか? 何かがあったんですか?」


「ウェーブの慰安金を自分の懐に入れてたのと、その家族を騙して奴隷として売ろうとした罪で死罪だったんだけど、今まで勤めていた温情で犯罪奴隷になった感じだと思う」


「そんな・・・私はどうすれば・・・」


「なら、うちに来る? カルジャス隊になら入れてあげられると思うんだけど・・・嫌なら、ヴォルスト様かオルトウス様に頼んで・・・って聞いてる?」


「オルトウス様・・・って、【圧砕の槌】と言われているオルトウス・ザルツサーレ辺境伯様ですか?」


「うん、そうだよ。 ヴォルスト様は、大将軍だしね」


「だ・・・大将軍閣下!! 失礼ですが、本当に貴族の方ではないのですか?」


「うん、冒険者だよ。 他の皆も行く宛無いなら言ってね。 お店とかもやってるからすぐに働けるよ」


 話しを聞くと全員行く宛が無く、働き口が無かったら娼婦として働こうと思っていたらしい。

 全員王都へ一緒に移動する事になった・・・帰りはもしかすると1日コースになるかも知れないな。


「あの僕も質問良いですか?」

 商人のエルロッタさんが言う。


「はい、良いですよ? なんですか?」


「王都にいたと言ってましたので、桜食堂と言うのはご存知ですか?」


「うん、知ってると言うか。 俺達が作った食堂だね。 どうかしたの?」


「本当ですか! なら、小麦と豆を売りたいんですが・・・って、すみません。 王都のお店に運んだら買って貰えたりしませんか?」


「今買っても良いよ? マジックボックスに空きもあるし」


「良いの!? マジックボックスの空きは大丈夫なの?」


「ん~と、空きは・・・最低でもその馬車10台分くらいはあると思うから大丈夫だよ」

 本当は、王都半分くらいあるんですけどね。


「んな・・・失礼しました。 物凄い大きいマジックボックスですね」


「うん、そうだね。 街に着いたら買わせて貰うよ。 じゃあ、王都に小麦売るために行商に行くつもりだったの?」


「そうなんです。 王都に行って小麦を売ったら、櫛と財布を買い付けに行くつもりだったんです」


「そうなの? じゃあ、作成者2人に手紙を書いておいてあげようか? 人気で手に入らない人がいるって噂だし」


「え? 知り合いなんですか?」


「うん、知り合いと言うか俺の師匠だしね。 試験に合格して、すぐに独り立ちしちゃったけど」


「という事は、職人であり冒険者であり商人でもあるんですか? 多才過ぎですね・・・」


 俺は、乾いた笑いしか返すことが出来なかった。

 俺の才能は後天的な物で、俺自身は知識が多いただの人なんですよね。


 まぁ当たり前のことだけど、貰った力だろうと努力して得た力だろうと使える物は何でも使うさ。

 デメリットがどんな物なのか気にはなるけどね。

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