第167話 ねぐらの解体
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立ち上がれる3人の牢を壊し枷を握りつぶして外すと外に誘導する。
「外に出たら、温水が降る魔法を使うので体を洗って下さい。 皆さんも汚れたままだと嫌だと思いますし」
俺がそう言うと、良く解っていない顔をして頷く。
外に出た所でシャワーを使い3人の汚れを流す・・・お湯が体にあたって気持ち良かったのか、しきりにありがとうと言われる。
その時に麻布の手ぬぐいを全員分と石鹸を渡す。
やはり例に漏れず、新しい布を使うのは・・・とか、お返しする物が・・・とか言っていたが、上の2人を何とかしたいから急がせた。
渋々体や髪を洗い始めた・・・もしかしたら、虱とかいるかもしれないと思い浄化をこっそり全員にかける。
虱は浄化で死ぬ事がないが、髪を水で流すだけで取れる事は農奴の子供で実証済みだ。
というか、この世界の虱は魔物らしい・・・魔石も取れるようだが、小さすぎるし魔力量も殆どないので余り需要はないとの事。
ハエや蚊も魔物の括りだったし、この世界には普通の生き物がいないようだ。
「あの・・・貴族様。お考え事の最中に失礼いたします。 3人とも体を洗い終わりましたが、いかがいたしましょう」
3人のうち1人が俺に代表して聞いてくれる。
「あ、ごめん。 上の2人を助けてくるから、この服に着替えて置いて貰えるかな? 裸だと嫌でしょう?」
「恐れながら申し上げます。 上の2人を助けるのに私達もお手伝いをしてもよろしいでしょうか? もちろん、綺麗な服は汚れますので着用いたしません」
「良いの? 本当に、助かるよ。 正直どうしようか迷っていた所なんだよね。 じゃあ3人に依頼をする・・・上にいる2人をここに連れて来て、体を綺麗にしてくれるか?」
「はい、お任せ下さい」
そう言ったものの、他人の糞尿には触りたくないだろうと思い俺が先行して床に数箇所穴を開けお湯を2人にかけると同時に風で穴を開けたところに汚れた水を移動させる。
顔にかけないように気を付けたのだが、糞尿が髪の毛にまで付いていた。
3人に指示を出し、顔をこちらに向けてもらうと、5人全員に顔にだけエアベールの魔法をかけ温水の威力を上げる。
粗方の汚れが取れた所で5人を外に誘導しする。
3人には2人の汚れを落とし、自分の汚れも落として欲しいと言い麻布と石鹸を渡した。
皆も汚れていたので、こっそり浄化をかける。
反論しようとしたようだが、時間が惜しいので早くして貰う・・・渋々了承してくれた。
この2人は本当にただの気絶なのかな? 起きる気配がないんだけど・・・
シャワーの使いすぎで、足下に泥が溜まってきたな・・・仕方がない、木を切ってスノコのような物を作るか。
シャワーを維持しながら、森の木を数本切り少し離れた場所に2本の木を平行に並べ上側だけ平らに切る。
その後、1本の木の皮を削って板のように切ると平行に並べた木の上に並べる。
その姿を3人は、手を止めてポカンと見ていた・・・声をかけると驚いたように手を動かし始めた。
流石に気絶してしまっていた2人も起きたようで、3人に事情を説明されたが喜んでいるのか悲しんでいるのか判断が付かない。
全員に先程作ったスノコに乗ってもらい、ポーションを飲ませる・・・ただの水と嘘をついたが、飲んだ瞬間こちらを見てきた。
「先に自己紹介をしておくね。 俺はクラン【ソメイヨシノ】のリーダーのカナタです、よろしく」
全員に自己紹介されたのだが、名前を覚えるのはいつも代表として話している【ナショウ】というオポッサムという種類の女性の獣人だけでいいだろう。
「女性なのに男に見られるのは嫌だろうが、回復魔法を使えるから治したい箇所等あれば俺に言ってくれ。
どうしても言いたくない場合は、王都にいるから訪ねてきてもらうことになる。
訪ねてくれれば、聖女と言われているユカさんが居るから訪ねれば治してくれる事を保障する。
ただ、2回目以降に怪我をして治すときは金がかかるから注意してくれ」
嘘じゃないことの証明に、腕に出来ていた焼印のような物を軟膏と回復魔法で治す。
全員が驚きキョロキョロと周りの人の顔を見ていた。
「驚いているところ悪いんだが、怪我を治して服を着てもらいたい。 かわいい女性の裸を見れるのはありがたいが、夕方までに街まで移動したいんだ」
「失礼だと思いますが、本当に怪我を無償で治していただけるんでしょうか・・・後で、お金を請求されても払う事は出来ませんが」
ナショウが、俺に手を上げて言う。
そうか、そういう事か・・・無償で手を差し伸べても何かあるのでは? という恐怖が勝ってしまうという事か。
「いや、無償という訳じゃないんだ。 今使ったこの軟膏は、回復魔法の効果を高め、自己治癒力も上がると言う物・・・俺達のクランが最近作りだした物なんだけど、現在は余り他の街に知れ渡っていないようなので、その宣伝をしてもらいたいと思っている」
「え? それだけなんでしょうか? こんなに効果が高いんですから、放って置いてもどんどん売れるようになると思うのですが」
「そうかもしれないです・・・ですが、今この国は人材不足です。 魔物から街を守る冒険者達に怪我をされると、この国が困ってしまうんですよ。 その為に、この軟膏を広めたいと思っているんです」
「畏まりました。 宣伝を引き受けさせていただきます」
「という事で、怪我をした所等あれば言って下さい。 完全に治ってしまっている古い傷等は、治せないと思って下さい」
5人に軟膏を渡して互いに塗ってもらう・・・キャッキャウフフのの様な想像をしていたが、傷口に軟膏を塗るのが痛いらしく阿鼻叫喚・・・とまでは、いかない物のかなり痛そうだ。
「あのカナタ様・・・大変申し上げにくいのですが・・・お尻に塗りたいのですが・・・塗っても良いでしょうか?」
気絶していた1人が意を決した様に俺に言う。
「別に構わないですよ。 子供が間違えて食べましたが、体調に変化が無かったので無害だと思いますし」
「いえ、あの・・・見られていると塗りにくいと言いますか・・・はしたない姿をこれ以上お見せしたくないと言いますか・・・あの・・・」
「あぁ、申し訳無いです。 かわいい女性の裸を見れるのが嬉しかったもので・・・あそこの盗賊達の所へ行ってますので塗り終わったら呼んで下さい」
「本当にすみません。 ありがとうございます」
お尻か・・・痔にならなければいいけど。
というか、見えない場所の傷の回復か・・・いい実験になる気がするけど、流石にじっくりお尻を観察するのはだめだろうな。
そんな事を考えながら盗賊の所に行き、気絶している7人を1つに纏め背負子に括り付けていく・・・7人を一列に並べたのでかなり長くなってしまったが、背負う事は出来るので良しとしよう。
背負ったときは周りに注意だし、方向転換出来ないと思わないとだな。
「カ・・・カナタ様、終わりました」
「は~い、今行きます。 少し待ってて下さい」
まずは軽傷だった3人を回復させていく・・・回復した順に魔羊毛のサラシと下着、麻のシャツとズボンを渡していく。
前回の盗賊退治を踏まえ、女性物男性物の着替えをサイズごとに5着ずつ入れているのが役に立った。
気絶していた2人は傷が膿んでいたところがあり、魔力が多めの回復魔法をかけると目で確認出来る傷等は無くなった。
「見える所の傷は無いみたいだね。 どこか痛い所はない? お尻は大丈夫?」
「痛み等はないですので、大丈夫だと思います。 本当にありがとうございます」
「うん、お礼は全部終わってからで良いから服を着ちゃって下さい。 見せてくれると言うなら喜んで見てますがね」
5人全員が着替えて貰い、テーブルと椅子をマジックボックスから出して麦粥とミネストローネを5人に出す。
食事をして貰っている間に、宝探しをして武器や防具、金品等を根こそぎ奪うと5人の元へ向かう。
食事も終わり、背負子を森の近くに置き、ナショウ達を傍に呼ぶと塒の土地の真ん中に落とし穴を作り家を落とし、火の魔法で燃やす。
捕らえられていた5人は、何も言わずに俺の行為を見ていた・・・