第17話 街までの移動
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「・きろ、起きてくれ、かなたさん」
寝ていたら、渉真君に起こされる。
「ん? なに? どうかしたの?」
「すまん、起こしちまって・・・フランソワーズさんが話しかけてきたんだが、わからねぇんだよ助けてくれ」
「そっか、了解・・・あ、あと、おはよう」
起きてみると、フランソワーズ様が敬太君に話しているところだった。
『魔道馬車の中に入りたいんだが駄目なのか? 昨日入れてくれると聞いたが・・・』
「まだ、中で寝ている方もいますので駄目です」
おお! まじか! ジェスチャーで会話が出来てる! すごいな、敬太君のイケメンスキルかな? もてそうだし。
『おはようございます、フランソワーズ様朝早いですね』
『おお! やっと起きたか・・・待っておったぞ、さっそく魔道馬車に入ってみたいんだが』
『今は待ってください。あとで色々お教えしますので』
「敬太くん、おはよう、ありがとうね」
「助かりましたカナタさん、伝わっているか解らなかったので」
『カナタ、昨日約束したであろう、何故駄目なのだ?』
『今はまだ朝が早く、中で寝ているので後でちゃんと入っていただけます』
『そうか・・・解った、我慢しよう』
『ありがとうございます、せっかく早起きしたので、白竹の実を見てみてください』
『うむ、それもあったのだな、解った見てみよう』
「魔道馬車に入るのは後でってことにしておいたよ。あと、今日移動するから2人は仮眠取っちゃって。周囲の警戒はしておくから」
「魔道馬車? なんだそりゃ? そんな物はないだろ?」
「バスのことでしょう。科学があまり発達していないから、バスと言っても解らないと名前を付けたって事ではないですか?」
「ああ、そうか・・・まぁ寝るか」
「解っていないだろ・・・全く・・・まぁいい・・・僕も、仮眠を取ろう」
2人が洞窟の奥に行き、フランソワーズが外に出るところだったので追いかけた。
『フランソワーズ様、見張りをしながらなので、ここにある白竹の実を確認してみてください』
『うむ、解った。見てみるとしよう・・・して、何処にあるんだ?』
ビニール袋に入っていた白竹の実を1つ取り出し持って行った。
『その袋は何なのだ・・・薄く透明・・・青い模様・・・綺麗だ・・・』
そうか! やっちまったな・・・ビニールなんて見たことないよね・・・あぁ! 昨日に続いて・・・考えても仕方がないか。
『その袋は軽くてある程度丈夫で、しかも水も汲めますよ』
『なんだと!? 触ってみてもいいか?』
『かまいませんよ、新しい物があれば後で差し上げます』
ゴミ袋を1枚取り出して渡す。
『いいのか!? こんなに綺麗なものだ、高価な物なのだろう? こんなに薄く輝く袋など見た事がない』
『差し上げますよ、皆と会えたのもフランソワーズ様のおかげですし。気に病むようでしたら、移動の時は、よろしくお願いいたします』
『うむ、それはもちろんだ! それでそれが白竹の実なのか? ほんとうに・・・』
『そうなんです。大きいと思いませんか? 焼いて食べましたが美味しかったですよ』
『ものすごく大きいな・・・形は白竹の実だが・・・こんなに大きいものは初めて見たぞ』
『まだ外にもあると思いますので、いっぱい取って帰りましょう』
説明していると、有華が起きてきたので、移動の準備とバスの中の片づけをお願いしておいた。
仮眠中の2人以外が起きてきたところで、食事の準備班とドングリ拾い班に分かれて行動した。
『フランソワーズ様、魚も居ますので一度見てみませんか?』
『池の中の小さい魚だろう? 食べられないことはないと思うが・・』
ん? 小さい魚? でっかい魚ではなくて? どういうことだ?
『とりあえず、一度見てみましょう』
皆にフランソワーズを池に案内することを告げて、3人で向かった。
『でかいな・・・昔見たものは稚魚だったのか? それにしてもでかい・・・食べる事も出来るのか?』
『ええ、もちろんです。生魚なので日持ちしませんが・・・』
『そこは大丈夫だろう。グロスのマジックバッグは時間経過遅延効果が付いているからな』
『え!? そんな便利機能があるんですか?』
『うむ、パルメント殿と懇意にさせて頂いているので、付けて貰えたのだ・・・魔晶石への魔力供給は多いらしいがな』
『是非一度お会いしたいですね~、パルメント殿に』
『難しいかもしれないが、聞くだけ聞いてみよう。外海の者だと言うのなら、向こうも会いたがってくれるかも知れんからな』
『ありがとうございます、よろしくお願いします』
話のキリが良かったので、朝ごはんを食べに洞窟に向かった。
昨日夜は食べてなかったから、猛烈にお腹がすいている・・・お腹減ったなぁ・・・
朝ごはんは、黒パン、お肉、白竹の実、魚のアラで出汁を取ったスープだった・・・
俺が居ない間に、新しい料理が増えてる・・・魚のアラのスープにはツミレも入っていた。
しかも、起きた時にグロスさんが、調味料を真田夫妻に貸したらしく、すごく美味しくできていた。
どうやって会話をしたんだろう? 調味料ってジェスチャーで伝えるのは、鬼のように難しい気がするんだけど・・・
そう言えば、この肉って何の肉だろう?・・・ファンタジー的に言うとオークとか? 豚肉っぽいし・・
『フランソワーズ様、この肉って何の肉なんですか?』
『オークの肉だ。美味いだろう?』
やっぱりか・・・思ったとおりだよ・・・コンチキショウ。
『はい、とても美味しいですね~、生きている時を気にしなければですけどね・・・』
『どんな食べ物も生きているときのことは考えない方がいいだろう。それにしても、このスープ美味いな・・・ここにある材料だけで出来ているのだろう? 神の業のようだ・・・』
『忠さんは料理人だったんですよ。その腕が発揮されたのではないでしょうか?』
『うむ、料理か・・・(名物料理があれば・・・いやしかし)』
『どうなさったんですか?』
『いや、なんでもない』
食事が終わり、バスの中の片付けも終わっていたので中を案内することになった。
その間に皆には白竹の実、魚を取って貰うことにしたが、マジックバッグがグロスさんしか使用できないため、佳さんと俺とフランソワーズ様の3人で見ることになった。
フランソワーズ様と二人っきりは駄目ってことだ・・・しょうがないよね。
『これは椅子か? 木ではなく何から出来ているんだ? 座るとポンポン跳ねるのだな』
『こちらは基本的に鉄で出来ていたはずです。スプリングと言う素材を使い、上にクッションと布を張った物です』
『何? これは鉄の椅子なのか? 耐久力に優れ座り心地も良いということか・・・もって帰れないのが残念だ・・・』
『仕方のないことです。街は食糧難になってしまっているみたいですので、食料を優先しなければ・・・鏡類は一応持っていけますし、隠しておけば盗まれないと思いますので』
『そうだな、ガラスも外せれば良かったのだが、綺麗に外すには時間がかかる・・・食料の方が優先だからな』
全部終わったのはお昼前になってしまったが、収穫も多かった。
まず、山菜? 野草? が多く取れた・・・グロスさんが、食べられる野草の知識を少し持っていたため、いろいろ摘んで見せて回収する感じだった。
この世界のものは何が食べれて、何が毒かわからないしね。
真田夫妻は、食べれると言った物をちょっとだけかじって味を確かめてたよ・・・お腹壊さないでね。
出発の準備を整えた時、武器が結構増えていることに気が付く。ゴブリンが結構居たみたい。
ちゃんと魔石(仮)も取ってくれてた。持っているのが2個、渡されたのが5個。
いくらになるか解らないけど、お金はあるに越したことはないしね。
そう言えば、金貨ってどの位の価値あるんだろう? ちゃんと聞いてなかったな・・・
今度聞いてみよう。今は街に行くのが先決だ。
敵に遭わないように気をつけながら進んだせいか、行きよりもだいぶ遅い3日と半日で廃村に着き一泊することになった。
次の日の朝早くに出発する・・・その際に勇者の話を聞いてみる。
フランソワーズ様が、ゆっくりと語り始めた。
◇◆
ある国がモンスターの進行に喘ぎ、神に助けてくれるように願った。
ある日、その国に光が舞い降りる。
勇者が世界に現れた。
勇者は3人。剣、弓、杖を持っていた。
剣の勇者は言った。
「女神に頼まれ、異世界より魔王を倒すために来た」
国の王や臣下、民にいたるまでその勇者達を歓迎し大いにもてなした。
数ヶ月たつと、その国の周りにいたモンスターの数が激減し、勇者達も最初より強くなっていた。
弓の勇者が言う。
「この国で悪さをするモンスターは、ほとんど駆逐しました。もう安全です。
そして、私たちは世界中を巡り最後は魔王を目指します」
勇者たちは、世界中でモンスターに苦しめられている人々を救い続けた。
いつしか、勇者達に3人の現地の仲間が加わり、魔王の元へと辿り着く。
剣の勇者が言う。
「お前を倒し世界を平和にする! 覚悟しろ!」
6人で力を合わせ、魔王の討伐を果たす。
6人は女神の元に呼ばれ、元の世界に送り返されることになる。
弓の勇者が言う。
「お別れね、またいつか会いましょう」
3人の現地の英雄が言う。
「この世界は、我らが守ります。ありがとう」
3人の勇者は、元の時間、元の場所に戻りたいと女神に願い、その後異世界で幸せな人生を送った。
◇◆
『昔の勇者の話は、確かこのような物であったはずだぞ・・・街に着けば、絵本や本などもあるが読んでみるか?』
フランソワーズ様は、きらきらした目で俺を見てくる。
『いえ、話していただいた物だけで十分理解出来ました。やはり自分たちは勇者を目指すのが帰る近道のようですね』
『うむ、勇者を目指している者を国のお抱えにすることは出来ないというのも、女神の意思とされている』
『勇者を目指すと勧誘されることがなくなるということですか?』
『そうではない。勧誘はされるが、最終的な決定は本人にさせる・・・そんなところだ』
『なるほど、強引な勧誘がないわけではないんですね』
『うむ、無いとは言えぬ・・・しかし、仕官を断る者が少ないのも事実なのだ』
『そうですね、安定した職に就くのは大変ですもんね』
『そうだな、真に勇者を目指すのなら困難に立ち向かっていって欲しいものだ』
『そうですね~、出来る限り頑張ります』
その後、1日かけて街に着いたが真夜中だったため、門の手前のお屋敷に連れて行かれて寝ることとなった。