第159話 強敵と書いてトモと読む?
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「さぁ、お集まりの皆様! 組み手と軟膏の回復のデモンストレーションはいかがだったでしょうか?」
俺は立ち上がると手を広げて周りを一周見る。
「いきなりのデモンストレーションで驚いた方もいらっしゃったと思います。 しかし、足の骨が折れ骨が少し見えてしまった青年でも9級回復軟膏を使うと共に回復魔法をかければ綺麗に怪我が無くなりました。
しかし、大きな怪我をしないで済むのが1番です。 しかし、外に出れば何があるかは分かりません! もしもの際にすぐ使えるように回復軟膏とポーションを持って狩等に出掛けましょう! では、ご静聴ありがとうございました」
俺が一礼すると、割れんばかりの拍手がなり皆思い思いの場所に向かっていく。
俺は、兵士に1度頷くと兵士がこちらに気が付き敬礼をする・・・遠目でこちらの事を観察するようだ。
本当に出来た兵士さんですこと・・・あとで出世させられないか聞いて上げるのがいいかもしれないな。
その前に3人の事を聞かないと・・・
「さて、冒険者ギルドの中で話しを聞かせてもらえるかな?」
「ええ、良いですわよ。 ただし他言無用に願いますわ」
リカムは腕を組んでこちらを見ながらそう言う。
「ユカさんの危険が無いのなら言わないことを誓うよ・・・じゃあ、ライナ君を運ぶからギルドに行こう」
俺達は冒険者ギルドの中に入る。
「まずは、ありがとう。 あのままだと私たちは捕まっても仕方がなかった・・・もちろんライナの怪我も」
ソップは席に着くなり俺に頭を下げた。
「いや、俺も面白がってやっちゃったから悪かった。 ごめんなさい」
俺も悪乗りをしていた事を謝る。
「でも、あなた強いのね。 聖女の仲間の中で1番強いとか?」
リカムは、面白そうに言う。
「俺の強さは大体3,4番目だよ」
「はぁ? もっと強い人いるの!? 何それ、呆れた・・・」
リカムは驚愕の表情をした後に呆れた表情をする。
「それで、ユカさんに何の用だったの?」
「勧誘よ、勧誘。 私達は、ダンジョンに潜ってるんだけどね、ちょっと詰まっちゃってて回復魔法を使える人材が欲しかったのよ。 最近帰って来た【炎蛇】ってPTが幅を利かせ出してウザくてね」
「おお! 炎蛇! イサオさんって人知ってる? 元同じクランメンバーなんだよね」
「あの新しく入った生意気な黒髪! なるほど、あなた達と一緒だったのね・・・どおりでおかしな強さだと思ったわ」
「まぁ気に食わなかったみたいで出て行かれちゃったんだけどね・・・それにしても勧誘なら素直に言ってくれれば案内したのに」
「あぁ・・・あれはね、聖女にライナの事を好きにならないようにお願いをしようと・・・」
「はぁ? え? 先にそれを言うために2人で探してたの?」
「ええ、そうよ! 好きになっちゃったんだもん仕方ないじゃない! 回復魔法使える聖女が入ったら取られちゃうかもしれないでしょ!」
リカムがそう言うとソップも首を縦に振る。
「羨ましいね~。 女の子2人から好かれる男か・・・う~ん、もっと痛めつけとけば良かったか?」
「それは心臓に悪いから止めて下さい・・・あの質問なんですけど、何級のクランなんですか?」
「俺達のクラン? 1級だよ?」
「えぇ!? 1級? じゃあ、龍とか倒した事あるんですか?」
「ネームドモンスターを倒した事はあるけど、龍はまだ倒した事は無いよ」
「何の名前付きをたお・・・」
「ぎゃぁぁぁ! 足! あれ? 足が何とも無い?」
リカムが何かを言おうとしたときライナが起き上がり、いきなり叫び声をあげる。
「あ、おはよう。 怪我はきっちり治しといたよ。 違和感とかも無いと思うけど」
「え? あ、ああ、大丈夫だ・・・足に違和感とかは無い・・・やっぱり完敗したのか・・・」
ライナは足を動かしたり立ち上がって確認すると落ち込みながら呟く。
「うん、そうだね。 失った血は再生できないからお腹すいたでしょう? 簡単な物だったらマジックバッグに入ってるけど食べる?」
「いや、そこの食堂に懐かしい物があったから、それを食べたいと思ってるんだ」
「懐かしい物? まさか転生者? とか?」
「え? まさか、あんたも転生者なのか!?」
「いやいや、俺は転移者。 ニホンから来たんだよ。 ライナって言ったっけ? 君もニホンから?」
「ニホンは知っているが、そこ出身かは分からない。 転生者は記憶を失ってる人が多いらしいからな」
「あぁ、なるほど。 1度亡くなって魂になった時の弊害か・・・で、食べたい物って何? から揚げ? ラーメン? ギョーザ?」
「肉マンだ。 醤油とカラシで食べた思い出があるんだ。 俺が、好きだった食べ物だと思うんだが、味なんかはすっかり覚えて無いけどな」
「肉まんか! 醤油はあるけど、カラシはまだ作れて無いんだ。 それでも良いなら食べる? 今持ってるよ?」
「本当にいいのか? 肉まん食べたら何か思い出せそうな気がするんだ」
俺は、3人の前に皿を置き肉まんを2個ずつ置いていく。
今置いたのは、子供達が作った肉まんの方だったりする・・・タダシさん、ヨシさん作の方は味が違いすぎて俺達以外に余り出さないようにしている。
「温かい内にどうぞ。 下についてる葉っぱは食べれるけど、要らなければ剥がしちゃってね」
「じゃあ、遠慮なく・・・こ、これだこれ! 懐かしい・・・良く食べた思い出がある! そうだ! コンビニ! コンビニで食べてたんだ! ピザまんとかも好きだったのを思い出した・・・懐かしい」
「はっはっは。ピザまんは作って無いけど、ピザはあるよ? 今度いてくれれば作れると思うから言ってね。 ほら、2人も食べな美味しいよ」
周りの2人は遠慮していたようだが、一口食べると顔を見合わせ「ん~」とか言い2人で叩き合いながら食べ始める。
その様子を見て、ちっちゃいおばちゃんが2人いるなぁ・・・とか思っていた。
「食べ終わった後にユカさんの所に案内しようか? 仲間になるか、ならないかはユカさんしだいだけどさ」
「いや、いい。 その代わり兄さんの弟子にしてくれ! 頼む! あれだけ完璧に倒されたのなんて初めてなんだ。 弟子にしてくれ!」
ライナは肉まんを皿におくと土下座をする。
おお! 凄い良い流れだな・・・これなら難なく魔法を教えてもらうことが出来そうだ。
「弟子にはしないけど鍛える事は出来るよ? 明日の朝に食堂の隣にある屋敷の前に来てみな」
「鍛えなおすことが出来るんなら、それでいい。 あ! 自己紹介まだだったな、俺は4級PT【ブレイブソード】のリーダー、ライナだ。 そして、こっちは魔法使いのリカム、こっちはシーフのソップだ。 兄さん、よろしくたのんます」
「うん、よろしく。 俺は1級クラン【ソメイヨシノ】のリーダーのカナタです」
「「えぇぇぇ!! カナタ(さん)!」」
リカムとソップが、同時に驚愕の声を上げる。
何だ? 俺ってそんなに有名だったっけ? 新薬発表してから結構経つからそんなに騒がれないんじゃないのかな? ライナだって騒いで無いんだし。
「ん? 2人は何か知ってるのか?」
ライナは2人を見回し質問する。
「何言ってるのよライナ! 死病の新薬作った大天才よ! 偏屈だって噂を一緒に聞いたじゃない!」
リカムがライナを見て言う。
「そう・・・しかも、3mを超える大男で笑いながら人を引き千切る事の出来る怪力って」
ソップがライナの腕を引っ張りながらそう言う。
俺って化け物じゃん・・・まぁその方が都合が良いんだけど、なんか納得いかないんですよね・・・
(だいぶ前に、噂を面白おかしくして広めてという効果が出ていますが、本人はその事をすっかり忘れているようです)
「俺ってもう1人いるようですね。 まぁ容姿を勘違いされてた方が動きやすいからいいんですけど」
「そうなのか? まぁいいけどよ。 ところで兄さん、エルフの国のパルメントのババァには会ったのか?」
「いや、春に会いに行く予定なんだけどなんかある?」
「いや、転生者を見つけたらババァの所まで連れて行く約束してんだ。 スキルの危険性について教えるって事でな」
「え? ギフトじゃなくてスキル? 何それ? どういう事?」