第16話 洞窟の中へ
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その後は何事もなく洞窟の近くに来れた。
そう、戻ってこれた! だが、もう夜も遅い。
洞窟の外の焚き火などももう消えている・・・どうするか・・・
『すみませんが、フランソワーズ様、グロスさん、ここで待ってて貰えませんか? 1人で仲間の元に行ってみます』
『うむ、それはよいが、危険ではないのか? こう・・暗くては顔の確認も出来まい』
『そうですね・・・たぶんですが大丈夫だと思います。服装も出たときのままですし』
言語理解のギフトをOFFにすれば、100%日本語で話せるだろうから、俺だと気づいてくれるはず・・・たぶん・・・気づいてくれたら良いな・・・
『解った、ここで待っていよう』
『ありがとうございます、いってきます』
そう言って、森の中から出て、洞窟に手を振ってみた・・・反応がない。
ゆっくりと近づきながら手を振る・・・反応が無い・・・一応ギフトをOFFにしておくか。
「皆~帰ってきたよ~」
近づきながら、手を振って出来るだけ小声で呼び掛ける。
男が2人出てくる。たぶん敬太と渉真のように見える。
持っていたハルバードを下におき、
「ただいま~、帰って来たよ~」
と言うと、ゆっくりこちらに近づいてくる。
2人が顔を見合わせてるっぽい動きをしている・・・よし、ダメ押しに、
「榊原 叶奏戻ってきました」
と言った瞬間、2人は武器を放り、駆け寄ってきた。
「「カナタさん!」」
「ただいま~、無事に帰ってきたよ~。みんなにも変わりはなかった?」
「詳しい話は後で、皆を起こしてきます」
「何処に行ってたんだ? 心配したんだぜ! ホントによぉ・・・この洞窟の周りだけじゃなくて、散々探しまわったんだぜ? まぁ・・・なんだ、無事で良かった」
「そっか、本当に心配してくれてありがとう。説明は皆と一緒でいいかな?」
「了解、そろそろ皆起きるんじゃないか?」
そう言った時、敬太が洞窟の前で手を振っていた。
渉真の方を向くと視線が重なったが、何も言わずに洞窟の方へ向かう。
「ただいま戻りました。ご心配おかけしました」
「カナタさん(くん)、無事で良かった」「おかえり、怪我はない?」「良かった~良かった~」
などと皆一様に喜んでくれている。
こんな風に迎えられるなんて、ものすっごく嬉しい・・・泣けてくるな。
「なんか痩せたね、なにがあったんだい? やせた秘密は何なんだい?」
「えっと・・・最初から説明します。その時でもいいですか?」
「ああ、解ったよ、絶対に痩せた秘密は説明しておくれよ! 良いね?」
「はいはい、了解ですよ、まずは、熊に襲われた後のことを説明しちゃいますね・・・えっとですね、何処を逃げ回ったのか解らなかったんですけど、必死になって逃げてる途中に、急な下り坂があって転んでしまったんです。熊と一緒に」
「え? 大丈夫だったんですか? 怪我なかったの? 怪我をしているのなら、すぐに言って下さい」
有華さんが、急に近づいてきて手足を見てくる。
「いや、本当に坂道ですって急な坂道。崖だったら死んじゃってるでしょ・・・
それで、熊が木の根に引っかかって動けなくなって、逃げ切れるって思ったときに魔法を使ってきたんです。熊が」
「魔法! あるんですか? どんなのなんです? 呪文は? どんな風に使ってたんですか?」
瑞稀さんが、いきなりつかみかかって来る。
「魔法あったよ、熊が使ってきたのはね、空気の玉みたいなやつ。はじける感じだったから結構当たったらヤバそうだったよ・・・空気の玉とか衝撃波の玉とかそんな感じじゃないかな?・・・それで、その時に獣人の女の人に助けられたんだ」
「獣人! いたんですか? 本当に?」
好未さんが、キラキラした目で見てくる。
「獣人の女の人!」
匠君が、驚いたように叫ぶ。
「うん、街に行ったら結構な数の獣人の人が居たよ」
「街はどんな感じだったんですか?」
良太郎が、気になったのか聞いてくる。
「ちゃんと見て回ってないけど、西洋風?・・・ごめんなさい、話を戻しますよ、でね、獣人の女の人と、会話が出来なかったんだよ・・・」
「それは、意思疎通が出来なかったと言うことですか?」
今度は敬太君が聞いてくる。
「いや、そうじゃないですね、ジェスチャーでも会話は出来たし、今は会話できるよ」
「いきなり会話できるようになったということですか? どうやって覚えたんですか?」
「待って待って、話をもどすね、何処まで話したっけ・・・
そうだ! その獣人の女の人はフランソワーズ様といって、街まで連れて行ってくれたんだ。
そこで、マジンというのを注射されて気絶して、起きたら会話できるようになってて、冒険者登録をしてここに皆を助けに来たんだ」
「待ってくださいカナタさん、マジンって何ですか? 魔物の魔に人? 神? って書くやつじゃないんですか?」
「異世界の文字だから、どう読めるのか解らないけど・・・どうなんだろう? とりあえず聞いてみたら、この国の人もマジンはなんだか解らないらしいよ・・・一応、神からギフトを貰うためのものって感じなのかな?」
「ギフトですか? プレゼント? 何か貰えたんですか? 何も持っていないように見えますが・・・」
「ギフトはスキルだよ、能力ね」
「能力(ですか)!?」
みんな一様に驚いた顔をする。
「そうそう。俺は、言語理解ってギフトがあって、それで話が出来るって感じかな?」
「その、マジンだったか? それは、副作用のようなものはないのか?」
忠さんが、まじまじと見ながら質問してくる。
「ありましたよ・・・注射したら、今までに味わったことのない激痛が来ました」
「だから痩せたのか?」
「どうなんでしょう?・・・解りませんが、痩せたのはその薬のおかげだと思いますよ。あと健康には支障がないと思いますので、大丈夫だと思いますよ、今は体が軽いですし」
「そうか、健康ならいい」
「痩せ薬かい! 欲しいね」「苦労しないでやせれるなら~何でもOK~」「あらあら、誰でももらえるのよね?」
女性達は、【ダイエット】の言葉に反応しているようだ。
「たぶん、誰でも注射してもらえるんだと思います。でも、注射されたときものすごく痛いですから覚悟してくださいね。そして、皆に聞きたいことがあったんです・・・助けてくれたフランソワーズ様もここに来てるんですけど、呼んでもいいですか?」
意見は2つに割れた。こうなることは大体予想できたが、実際この場に立つと、どうすればいいのか迷ってしまうな。
「フランソワーズ様は魔剣を持っていて、殺すつもりだったら最初から助けないと思います・・・しかも、みんなを助けに行け! 私も手伝うって言ってくれたんです・・・余り話してませんが、性格的にかなり真っ直ぐな人だと思います」
「あの・・・魔剣って・・・魔剣って言いませんでしたか? そんな物があるんですか?」
匠君が、手を上げながら恐る恐る聞いてくる。
「うん、あるよ、ダンジョンで見つけたって言ってたから、ダンジョンもある・・・話戻すね、みんなを助けるために、ここまでフランソワーズ様達と一緒に来たけど、出身国のこと・技術のことなど、こちらの不利益になるようなことも聞かれなかった。最初に敵か? みたいに聞かれたけどね、違いますって言ったら信じてくれたし」
みんないろいろ思うところがあったのだろうが、渋々了承してくれた。
現状このままでは手詰まりになってしまうから、仕方のない事なのだが・・・
「では、みなさん、呼んでくるけど、たぶん言葉が通じないと思うから」
それだけ言うと外に出た。
『フランソワーズ様、どこですか?』
戻ってみたけど、隠れているようなので呼んでみる。
『カナタか? 話は終わったのか?』
茂みから、2人が出てくる。
『はい、洞窟の中へどうぞ』
俺達3人は、出来るだけ静かに洞窟へ向かっていった。
2人を連れて、洞窟内に入った。
『な・・・なんだ・・・あれは・・・』
いきなり説明前にバスを見つけてしまい、2人とも非常に驚いている。
あ・・・説明するの忘れた・・・
『あれは魔道馬車でバスという名の乗り物です』
『魔道馬車とは何だ? 聞いたことすらないのだが』
『馬が引かなくても、自由に動かすことが出来る馬車のことです。運転には経験が必要ですが』
『馬がなくても動くのか? あんな重そうな鉄の箱馬車が?』
『その通りです・・・ですが、作り方・直し方などはわかりませんし、燃料という特殊なものが無ければそもそも動かせません』
『そうなのか・・・作る事も直すこともできず、燃料と言う物で動くのか・・・魔力で直接動く訳ではないのだな・・・残念だ』
『申し訳ありません』
周りでは皆が2人が何言ってるかわからない・・・などと言っている。
「カナタさん、そろそろ・・・」
良太郎さんが、痺れを切らしたのか話しかけてくる。
『すみません、おまたせしました。フランソワーズ様とグロスさんです』
「すみません何を言ったか解りません」
ありゃ? 喋る言葉が1つに統一されるって感じのギフトなのかな? 両方の言葉がわかるし・・・いや、テレパシーのように意思疎通が出来るとか?
「あ! ごめんなさい、フランソワーズ様とグロスさんです」
フランソワーズ様グロスさんにも仲間の紹介をしておいた。言葉が通じないというのは結構めんどくさいね。
「町に向かうのは明日、その前にドングリを拾う予定ですのでもう寝ましょうか」
あ・・・フランソワーズ様の寝るとこってどうしよう・・・バスの中? だいじょうぶか?
『フランソワーズ様何処で寝ますか? バスの中に入りますか?』
『何!? 入れるのか!! 是非そうしてくれ』
『お嬢様、危険です! おやめください』
やっぱり駄目っぽいか・・・明日バスの中に入ってもらえばいいか。
『では、明日入って貰いたいと思いますので、今日のところはテントでお願いいたします』
『そうか・・・しかたない・・・明日だな、解った』
渋々だけど何とかなったか。皆には明日バスの中の掃除を頼めばいいか~・・・じゃあ、寝よ。




