第152話 詐欺師現る
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出掛けようとした所でタダシさんに呼びとめられる。
「カナタ! 食堂のプレオープンの日にどこ行くんだ?」
タダシさんは、大声で言う。
食堂だけ先に作り、すでにプレオープンまで計画は進んでいる。
と言っても、屋台と言う感じなのだが・・・安いメニューはジャガイモ中心で、コロッケ、イモモチ、フライドポテト、マッシュポテト、ハッシュドポテト、蒸かしイモなど。
高いメニューは、オークの串焼きや餃子・ハンバーガー・肉まん・あんまん等も売っている。
本当はもっと売りたいのだが、キッチンのスペース的にこれが限界だと言われた。
料理人志望の子供達に1度キッチンを使ってもらったが、結構スペース開いてる気がするんですが・・・
現在は子供なのだが、大きくなったら困るだろ? と言われた・・・その通りですね。
「慰安金詐欺の連中が現れたようなので行って来ます。 プレオープンはお願いしちゃって良いですか?」
慰安金詐欺の連中は、ユリ達だけではなくかなりの人数の家族からお金を撒き上げている様だった。
一応、保護と言う名目で働いてもらっている・・・お金に関しては現在は渡してないので盗まれる心配はない。
代わりに服を貸し出ししたり、食材を渡して食べてもらっているので生活的には大丈夫だろう。
ちゃんと出勤した日や時間を計算し、ヨシさんとアヤコさんが記載してるのでお金は後で渡すつもりだ。
時間は、アカネさんがデジタル時計をケイタ君と作ってくれた・・・有機ELの試作品という事なのだが、物凄い役に立っている。
「ああ、そういう事か。 程ほどにやってこいよ」
「は~い、じゃあ行って来ます」
ユリも待っていてくれたようで、一緒に走って行く・・・最近人が増えてぶつからない様に走るのが大変なのだが、それなりの速度で走れる。
詐欺師が来た家の近所に付くと怒号が聞こえてきた。
「お宅の旦那が残していった借金でしょう! 返すのが筋ってもんだ! きっちり金を払え!」
「少し待って下さい! 今後見人の人が来ますのでもう少しだけ」
「そんな事はどうでも良いんだよ! 金が払えないってんなら身売りをして貰うしかないって解ってんだろ? 利子だけでも良いからさっさと払えって言ってるんだろ!」
「ちょっと、待って・・・あ! カナタ様すみません、お呼びしてしまって」
謝っていた奥さんが、俺に気が付き頭を下げる。
「いえ、頼んだのはこちらですので大丈夫ですよ。 借金取りの皆さん、後見人のカナタと申します。よろしくお願いします」
「おいおいおいおい! 兄ちゃん! あんたが代わりに払ってくれるのか? こっちは誰が払ってもかまわねぇ。 大銀貨900枚きっちり払ってもらうぜ?」
3人いる借金取りの1番下っ端ぽい男が、鞘に入った剣を方にとんとん肩に当て、下品な笑顔で言う。
「ちょっと! 前来た時は大銀貨500枚だったはずよ! 何で増えてるのよ!」
謝っていた奥さんが、大声で文句を言う。
「はぁ? 何言ってやがる! 契約書に書いてあるだろうが! 返済期限が過ぎた場合には利子がかかりますってよ!」
下っ端ぽい男が、いきり立って言うと腕を組んで静観していた剣士っぽい男が契約書を前に出す。
俺は契約書が出たので、気付かれないように素早く契約書を取り、元の場所に戻って読む。
「おい! お前いつの間に取りやがった! 返しやがれ! ぶっ殺すぞ!」
剣士風の男が取られた事に気が付きいきまいて言う。
無視して読み続ける・・・契約書には、ウェーブでなくなったときの保証金として家族にお金が払われるという趣旨のことと、受取人の名前と、遺族へのメッセージが書かれていた。
家族への愛、感謝、謝罪、強く生きてほしいと書いてあり、名前の文字よりもかなり綺麗なことから代筆で書かれたようだ。
ものすっごい腹が立つ・・・こいつらなら殺しても良いんじゃないか? むしろ殺すべきなんじゃ?
「おい! 借金取りの3バカども! この契約書の何が借金なんだ? 言ってみろ?」
俺は、圧力を無意識で放つ。
剣士風の男と大剣を持ったガタイの大きな男は、武器を抜いていたがガタガタと振るえだした。
しばらくすると、3人はこちらを見る事も出来ずに下を向き振るえている。
謝っていた奥さんも震え出してしまっていたのを見つけ、ハッと気が付き急いで圧力を解除する。
「奥さん、すみません。 この契約書は借金の物ではなく慰安金を支払いますという物で、旦那さんからメッセージも書いてありました。 素晴らしい旦那さんですよ」
俺が奥さんにそう言うと、奥さんは座りこんだまま堰を切ったように泣き出した。
奥さんの呟きから「良かった」「信じてた」等と聞こえてくる。
やっぱり、こいつら殺すか?
「さて3バカ、雇い主は誰だ? 時間が惜しいキリキリ吐け」
俺は、腰に付けていたマチェットナイフを抜き3バカに向けて言う。
3バカの下っ端の男が後ろを向き逃げようとしたので、両足を切断し回復魔法で切り落とした足も止血する。
他の2人は逃げられないと思ったのか、武器を抜き切りかかって来た。
1人は先行し、その後ろをもう1人が隠れるように迫ってくる。
先行して走る1人にウィンドボールの風をもっと圧縮させた風弾を足に当て転ばせる。
もう1人は転んだ男を飛んで避け、こちらに迫る・・・こいつバカか? 飛んでしまったら空中なんだから避けられないだろう。
俺は、飛んだ男の横を走りぬけながら足を切り落とし回復魔法で止血する。
先行していた男の足も切り落とし、回復魔法で止血する。
飛んだ男は足が無い為、着地をちゃんと出来ず顔面を撃ち付けていたがその傷は治すつもりがない。
足が無くなった3バカの武器と防具を回収し、3人を横に並べ黒幕を聞く。
「さて、ゴミ共。指示していた黒幕を大人しく言うか。 拷問の末死にそうになりながら言うかの選択が残されている。 どうする?」
「俺達が言うと思っているのか? 舐めるな!」
剣士風の男が言う。
「もしかして、聖女ユカさんに足を治してもらおうと思ってる? 先に言っておくけど、ユカさんは俺達の仲間だよ? 事情を話せば治さないと思うけど?」
剣士風の男は黙って俺を睨んでくる。 他の2人は青ざめ自分の足を見つめている。
「さて、そこで交渉だ。 足を治す代わりに黒幕を吐け。 言っておくが、足が駄目になるまで時間は少ないぞ、足が駄目になったらユカさんでも治せ無いからな・・・黒幕を吐くか、足を無くした状態で外に放置されるか選べ」
「言ったら治してく・・・」「喋るな! 次喋ったら殺すぞ」
下っ端の男が喋ろうとしたのを剣士風の男が止める。
「おいおい、折角喋る気になってくれたのに邪魔するんじゃねぇよ・・・屑剣士」
俺は、俺はそう言い剣士の右腕を蹴る・・・右腕が折れ骨が少し見えてしまった。
加減したつもりなんだが上手くいかなかったな・・・もう少し弱くても良いのか。
「さて下っ端君、君は素直だ。素直な奴には温情を与えるよ。 喋ってくれるね」
俺は、下っ端君と目線を合わせ笑顔で言う。
「へっへい、あっしらは・・・」
この街の南にあるミズクサの街の領主のセンカ・ミズクサ伯爵の四男の依頼で金を撒き上げていたらしい。
領主の四男は、ウェーブに志願し大した怪我も無く生き残り男爵に取り上げてもらった成り上がり貴族で、慰安金を配る任に任命された才がある男らしい。
対象者の文字が読める読めないを先にリサーチし、読めない者達にだけ慰安金の証書を渡さずに金を毟り取る計画を立てたようだ。
1度全員に慰安金を配って、調査等の目をくらませる徹底振り。
最初はこの国から渡された慰安金のみ回収して終わらすつもりだったようだが、目先の利益に目がくらみ全員を奴隷にして国外へ売りさばこうとしているとのことだった。
ここまで大掛かりになっちゃうと俺だけじゃなく、陛下も巻き込んだ方が良いかもしれないな・・・
そんな事を思い、下っ端の男の足を治してあげた・・・物凄い感謝をされたが、結局は奴隷になるわけなのだが・・・
他の2人は左右の足を逆に付ける・・・もちろん、抵抗をしてきたが神経を無理やり引っ張り繋ぐと大人しくなった。
そんなに嫌なら、最初から抵抗なんてしなきゃ良いのに・・・2人は立っても座っても足に激痛がはしるようだが、シカトして縛って屋敷へ連行した。