第146話 作りたい物・・・作らなきゃいけない物
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結局寝るのが遅くなってしまい、いつも通りの時間に起きれず寝坊する。
ベトニアが起こさなければ朝練にすら間に合わなかったであろう。
ユリ親子にちゃんとした時間を教えて無いことに気がつくが、朝練始まる前にはちゃんと来てくれた。
ベトニアにアヤコさんを連れてくるように頼み、ユリ親子の所へ。
「おはようございます、ユリのお母さん」
「おはようございます、カナタ様。 私たちは何をすればいいのでしょうか?」
ユリのお母さんは、頭を下げながら言う。
「そうですね。 最初に聞きますが今日は予定が無いのですか?」
「針子の仕事の期限は昨日まででしたので夕方ぐらいまでなら時間はあります」
「それはちょうどいい。 あと、昨日のユリの報酬を渡しておきます。 渡し忘れていたことを謝罪します、申し訳ありませんでした」
銀貨を1枚手の上に置き、頭を下げる。
「え? 昨日の? え? なんかしたの? ユリ?」
ユリのお母さんは銀貨を渡されパニックに陥っている・・・
「昨日も言ったけど、話を聞かれただけだよ。それ以外は何にも無いよ」
ユリは首や手を振りながら答える。
「カナタ様、失礼かもしれませんが受け取れません! 仕事もしていないのにお金を貰うと心が腐ります」
ユリのお母さんに銀貨を返される。
「ならば、昼間に針子の仕事をしてもらい、給与に加えて食事補助をさせてもらいます。 と言っても、針子の仕事はアヤコさんに聞いて下さい。 麻布を作ると言ってたのでその補助だと思いますが」
「呼んだかい? ってエユリムちゃんじゃないかい久しぶりだね」
アヤコさんがタイミング良く来てくれた
「あら、アヤコちゃん、どうしてここに? いきなり辞めちゃったから心配してたんだよ」
ユリのお母さんエユリムさんがアヤコさんの肩をたたきながら言う。
「待って下さい! 挨拶や詳細等は2人になったときでお願いします。 アヤコさん、エユリムさんが針子のお手伝い第1号になります。 給与は、前話していた通り1日で銅貨5枚、食事補助と服貸し出しになります。 あとの説明は、アヤコさんお願いします」
俺は話が長くなりそうなので2人を止め、詳細を伝える。
雑木林の中のカラムシに似た草が生えていたらしく、麻の原料になるらしい・・・麻って大麻だと思っていたのだが違うものでも作れる事を初めて知った。
花粉症の原因にもなるらしいが、どうも生態系が異なるのか花が見当たらない・・・農奴の話によると、茎等を地面に植えれば繁殖するとても強い植物のようだ。
しかし、切って見たらカラムシのように繊維がとれる事が解った・・・繊維はかなり丈夫でロープ等にも使えそうだと言っていたので折角だから産業にして人を雇おうと言うことになり、針子を探していたというわけだ。
「そうだったのかい! 早速今日からお願いするね・・・」
アヤコさんとエユリムさんが会話を始めた。
「ユリと弟君は、体を鍛えて頭を鍛えて、あとは他の人のお手伝いね。 あそこにいる子供達に俺から一緒に訓練してほしいと頼まれたって言って混ざって来て」
「はい、頑張ります!」
ユリは元気良く返事をするが、弟君は引っ込み思案なのかモジモジしていた。
ユリは弟君にご飯くれた人だと説明すると、「おっちゃんありがと」と言いユリに怒られていた。
今日からギルドマスターから指導が入る筈なのだが、ギルドマスターが見当たらない。
考えていると、後ろからザワと空気に押されたような感覚があり、前に飛び少し距離をとって反転する。
「あらあら、気付かれてしまったわね。 探知系のギフトは持っていないと思ったのだけど勘がいいのかしら?」
ギルドマスターが木の短剣を手に持ち、所々黒い金属で補強した真っ黒い服で立っていた。
「驚いたじゃないですか・・・言ってるように探知系のギフトは持ってませんよ。 空気に押されるような感覚があったので」
「じゃあ、あと一歩で探知系のギフトが貰えるわね。 でも、探知系のギフトに頼り切るのは危ないわよ? 地面の中や水の中なんかは触ってないと探知が難しいからね。 まず最初にギフトに頼らない探知の方法を体に叩きこむわね? もちろん、ギルドランクを上げに来ないから腹いせにやろうと思ってるわけじゃないわよ? 本当よ?」
ギルドマスターが物凄い笑顔で言う・・・めちゃくちゃ怒っていらっしゃる。
その後、全員でギルドマスターが言う探知の方法は空気の振動、つまり音等を敏感に感知する事だった。
もちろん一朝一夕では出来ないし耳だけじゃなく肌で感じろといわれても解らない、獣人よりも五感が劣る人族には難しいようだ。
訓練法は目隠しをされ、体に向けていきなり石を投げられる・・・防具をつけてるからそこまで痛くは無いが当たった瞬間ビックリする。
子供達や大人達は、怪我をしないように泥団子で実践している・・・傍から見ると泥んこ遊びに他ならない。
泥んこのまま全員でランニングをすることになった・・・折角なので武器を持ちながら走る。
木で出来た剣や大剣や盾なのだが走りにくそうに見える。
お! 言い事思いついた! 全員分の防具を作って訓練のときに付けて貰ったほうがいいかも、そうすれば防具を付ける事になっても動きが鈍くならないはずだ。
武器も渡したいが・・・やはり棍棒かな? サブ武器として1番使い勝手がいいだろうし。
それならいっそ、学校の卒業生全員に棍棒をあげるのもいいかもしれないな・・・
魔鉄で作って印でも入れればいいだろう・・・タクミ君とケイタ君に聞いてみよ。
そういえば、魔法の身体強化の筋肉痛版をかけることが出来る魔道具を開発した方がいいかもしれないな、この人数に1人ずつかけていくのは手間だもんねぇ。
ゲートのような物を通り抜けるとかかるようにすればいいんだけど、魔道具については全く解らないしアカネさんに相談した方が言いよなぁ。
皆の武器についても早めに作りたいし、家もちゃんとしたのを建ててあげたいし・・・
のんびり出来るのはいつの日になるのやら・・・
そんな考え事をしながら走り、周りでバタバタと魔力切れで倒れていることに気がつかなかった。
ユカさんに呼びとめられ、皆さんを運ぶの手伝って下さいと言われるまで走り続けてしまった。
全員を屋敷の前まで運ぶと、泥を落とす為お風呂へ・・・というより、土を目いっぱい固め熱湯を入れ細菌等を出来るだけ排除し男女に別れて入浴・・・男性の風呂は天井無し、女性の方は木の板で天井を作った。
俺達は汚れて無いのでシャワー等の入浴補助・・・もちろん、石鹸等は無い。
屋敷からタオルを持ってきて全員を拭き、ようやく朝食に移る。
時間が結構かかった為料理の手伝いへ・・・と言っても配膳くらいなのだが。
今日の朝ご飯はビーフシチューとパンとなっている・・・少し朝方も涼しくなってきているからあったかい物はいいかもしれない・・・
その時にケイタ君タクミ君に棍棒の話をすると、2人とも大賛成してくれて試作してくれることになった。
アカネさんにも、魔法を自動でかけられる魔道具が作れないかも聞いてみたが、まずは通信機からということになった。
ケイタ君にも通信機の作成をお願いしにいき、棍棒はタクミ君1人で少しずつ作ってくれるそうだ。
話が終わりお腹も一杯になり、片付けをすると全員で協会に行きLvをあげる【Lv35,Lv34】となった。
その後、ギルドのランクをあげる【ランク8、ランク9】となった。
今日は予定が無いはずなので、皆の武器を作る為工房へ行く・・・