第145話 騙されている?
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俺は着替え終わり、酔い覚ましと今日は柔軟していなかったので整理体操をしておく・・・ショウマ君に毎回体が硬すぎると言われるしねぇ。
体操をしていると、農奴達に渡したツナギを着てユリがミランダに連れられダイニングに入ってくる。
「来たね、そこに座って。 ミランダ、悪いんだけどお茶となんか摘む物あったら持って来て貰えるかな?」
「畏まりました。 ヨシ様が作って置いてくれたクッキーが少し残ってるので紅茶と共にお出しします」
ミランダは、そう言うと頭を下げキッチンの方へ
「うん、よろしくね・・・ユリ、座って・・・お~いユリちゃん? 座って話を聞かせてもらえるかな?」
俺は、呆然と立ってるユリに向かって言う。
「え? あ! はい、ななな何でも聞いて下さうぃ」
ユリは、カミながらそう言うと椅子に座る。
「うん、まずは何故あんな所にいたのか教えてもらえる?」
「お金が必要だったからです・・・初めてだと高いって聞いて・・・」
「なるほどね、お金が必要な理由は何かな? 言いたくないとか無ければ聞かせて」
「はい、実は・・・」
まず4人家族の平民で、父親が元冒険者だった。4人は決して楽ではないが慎ましく暮らしていた。
しかし、父親が今回のウェーブに向かい亡くなってしまった・・・家族は、慰安金を貰い今まで以上に働いて暮らしていこうとしたが、ある時借金取りがやってきたそうだ。
父親がしていた借金を返せと言われ、慰安金を渡して借金は無くなり帰っていった・・・しかし、別の借金取りが来て借金を返せと言われているらしい。
どちらの借金取りの借用書も見たが、父親のサインと血判がしてあったらしい・・・しかし、家族の誰も字がちゃんと読めないそうだ。
ただ、数字と父親のサインと血判は本物だと言う・・・完全に騙されてますね。
「ふむ、その借金の返済にお金が欲しかったと?」
ミランダに持ってきてもらったお茶を飲みながら言う。
「はい、そうです。 お母さんは昼間は針子として働いて、夜は酒場で働いています・・・このままだと倒れてしまいそうで」
「じゃあ、借金をどうにかすれば仲良く暮らせる? 給料とかってどうやって貰ってるの? ちゃんと働きに応じてもらえてる?」
「え? え? いきなり言われてもわかんないですけど・・・」
「それもそうだね。 ユリは農奴のことをどう思う?」
「前は大変そうだな~って思ってるくらいでしたけど、今は羨ましいです」
「羨ましい? それはなんで?」
「間違えてるかもしれませんが、農奴の皆にこの服渡してる聖女様の関係者であってますよね?」
「うん、そうだね。 でも、何か羨ましいこととかってある?」
「朝に運動して皆でご飯食べてたり、勉強を教えてくれたり、服を貸してくれたり、食材も貰ってると言う噂ですよ。 しかも、全て無償で行っていると・・・」
「なるほどね。 まぁ全員俺の奴隷だし、後で働いて返してもらおうと思ってるし、畑の管理は基本農奴の親達がやってくれてるみたいだし、その報酬って感じだけど?」
「それでも、ご飯をいっぱい食べられるみたいですし・・・読み書きだって・・・」
「そっか~じゃあ、学びに来たら? 読み書き計算ってどんな所に行っても役に立つでしょ?」
「え? でも、私お金ないですし、何にも出来ないんですけど・・・」
「今はそうかもしれないね。でも、いつかはお金持ちになるかもしれないでしょ? あとは、働いて返してもらえばいいよ・・・そこで質問、将来 なりたい職業とかってある?」
「お父さんのような冒険者に! なってみたいです」
「そっか、じゃあ朝の訓練に参加してもらえるかな?」
「はい、喜んで! あ、でも借金取りが来てご迷惑をかけちゃうかもしれないんですけど」
「そっか、借金を先に何とかしないとだね。 じゃあ、借金取りが来たら、ここに連れてきて後見人が居ますので来てくださいとか言ってさ」
「こうけにん? ですか? でも、いいんですか? 私は何もしてませんよ?」
「元々ウェーブで亡くなった人がいる家族がどうなってるか調べるつもりだったし、ついでだから気にしないで」
本当は、この世界の避妊ってどうなってるの? とか、表四十八手とか裏四十八手とかってあるの? とか色々聞いて見たい事があるが、この年齢じゃ分からないよなぁ・・・
性病ってあるのかな? ユカさんに聞いてもいいけどセクハラですとか言われそうだしなぁ。
そんな事を考えながら、ユリが食べ終わるのを待つ。
最初は変に遠慮していたが、お土産用に籠の中に食べ物を詰め、同じ物が中に入ってるから全部食べて言いよと言って食べさせた。
幸せそうな表情で全部食べて、うっとりしていたが遅いので家に送ることに。
「ユリそのツナギを着て行って良いよ。寒いだろうし返すのはいつでも良いし」
「いえ、大丈夫ですよ。 このくらいの寒さは平気ですし。 なにより、この服を着ていると襲われちゃいそうで怖いです」
「でも、聖女から貰った服って事で噂になってるんでしょ? なら襲われないんじゃない?」
「あ! それもそうですね。 でも、私一人だけで着るのも嫌なので・・・ありがとうございます」
ユリは、自分の着ていた服に着替えると屋敷の外へ。
「ユリの家ってどっちの方? あっち?」
「はい、そうですよ。 でも、初めて来る人って家の場所間違えちゃうので解りにくいと思いますが」
「そっか、じゃあ近くに行ったら道案内よろしくね」
「はい、任せて下さい」
「もう1つ質問なんだけど凄いスピードで走るのを体験してみる気はない?」
「え? 体験出来るならしてみたいですけど・・・どういうことですか?」
「こういうことだよ」
そう言うとユリに毛布をかぶせ、無理やりお姫様抱っこをして魔法とギフトを使用し走る。
叫びながら目を瞑りギュッと捕まってくる・・・やっぱり怖いもんなんだなぁ、安全装置の無いジェットコースターに近いから仕方ないか。
近くに行くと速度を落とし、歩き始める。
「大丈夫だった? 一応家の近所まで来たから案内を頼みたいんだけど」
「ひゃ、ひゃい、こっちです」
ユリは俺の腕から下りると指差して言う・・・が、腰が抜けてしまった様だ。
「駄目そうだから抱っこして連れて行くよ」
「いえ、大丈夫です。 大丈夫ですから」
「大丈夫かもしれないけど、出来れば明日から朝練に来て貰いたいから連れてくよ」
「え? でも、恥ずかしいです・・・少し待って貰えれば1人で歩けますから」
その言葉を無視しお姫様抱っこをして歩き出す。
観念したように指差して自分の家への道案内をしてくれた。
家の前に着くと、母親が外に出て帰りを待っていた。
ユリを下ろすと、母親の元に向かって走っていった・・・その後、ビンタをされ怒られて抱きしめられていた。
「すみません、私が聞きたい事があった為屋敷で話しておりました」
「いえ、貴族様のお手を煩わせ、申し訳ありません」
ユリの母親が頭を下げ、ユリを後ろに庇いながら言う。
「私は貴族では無いですが、聖女ユカさんの仲間です。 皆さんの事情を聞きました、私が後見人になるので借金のこと等任せていただけませんか?」
「いえ、そこまでやって頂く必要はありません。 家族がした借金ですので家族で何とかします」
「勘違いされてる様ですが、タダで助けるわけではありません。 貴方に労働をしてもらい返していただくつもりです」
「それは、体で払えってことですか?」
「違いますね。 針子の仕事をして稼いで貰うと言っているんです」
「私の腕を買うってことですか? しかし、そんなに腕がいい訳ではないですが・・・」
「問題になりません。私の仲間がちゃんと教えてくれますので、いかがですか?」
結局すぐには結論を出せないらしく、お土産の料理を渡し家族全員で来て貰える様に言い屋敷に戻る。
さて、どうなることやら・・・