第143話 パーティ開始
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立食パーティは、大きなホールで行われる。
会場の入り口側に食べ物、飲み物が並んでいる・・・1つの料理のテーブルに小奇麗な服装の男達が並ぶ。
なんでも、初めて食べる物が多いため説明を担っているらしい。
オルトウス様や領主ご一家との食事を考えると、説明でてんてこ舞いで厳しくなりかねない気がするんだけど・・・そうなっても助けないから頑張れ、心の中だけで応援しておくからな。
1番奥には、階段がありそこから陛下達が出て来るようだ。
本当にアニメみたいだなぁ・・・もしくは結婚式? 俺の周りにはウェディングドレスを着た人がいっぱいいますけども・・・
それにしても良い匂いだな~、お腹減ってきちゃったよ。
でも、周りを見ると話しかけて来そうな雰囲気がヒシヒシと・・・ゆっくり食べる事は出来ないんだろうなぁ。
全員にワインを配られ手に持つと、陛下が階段の最上段の扉から出て来た。
王族全員そこから出てくるのかと思ったが、階段下にも扉がある様で陛下以外は下の扉から登場した。
フランソワーズ様はマーメイドドレスに着替えて出てきた・・・こうみると本当にお姫様なんだなぁって思う。
王族全員がワインを受け取ると、会場が静かになる。
「今宵は我々獣人族の新しい門出とし、祝う為に新しい料理の数々を用意した。 料理の隣におる者達が説明をするのでゆっくりと堪能してくれ、では、乾杯!」
陛下がそう言うとワインが入った銀のワイングラスを高く上げる。
「「乾杯!!」」
応じるようにワイングラスを天に掲げ、中のワインを飲む。
あれ? もしかして、タダシさん作のワインなんじゃない? 飲んだ事ある味な気がする。
でも、前に飲んだ時は若いから駄目だとか何とか言ってた気がするんですけど・・・
タダシさんを見ると、ワインを見てやっぱりしかめっ面をしている。
他のお客の姫や従者達は、陛下に挨拶へ向かっている。
思ったよりも平然と歩けるようだな・・・とタダシさんの方へ歩き出すと、ネズミの姫様のサミルが話しかけてきた。
サミル様は、陛下にいの一番に挨拶をすると真っ直ぐこちらに来たようだ。
「カナタ様、お時間よろしいかしら?」
「ええ、もちろん大丈夫ですよ、サミル様」
「サミルと呼び捨てで構いませんわ、カナタ様。 やはり、カナタ様は凄い方だったのですね。まさか死病の特効薬を共同開発してしまうなんて」
「時の運と言う奴ですよ。たまたまですね」
「世界をお救いになり得る物を開発したというのに、謙遜なさるなんて・・・」
その時、ぐぅぅとお腹の虫の音がかすかに聞こえて来た。
「すみません、サミル様。私は空腹でして一緒に食事をしながら話しませんか?」
「はっはい、もちろん喜んで」
カナッペが置いてあるテーブルへ行く・・・その時に少し周りを観察する。
サミル様が来た為か周りの人達は遠慮して遠巻きに話しながらチラチラ見るか、ファウストさんの方へ行ったり殿下の所へ行ったりしている。
殿下の所は既に凄い人だかりで話すのも難しそうだ・・・
しかも、姫同士の会話も余り無くぴりぴりとした雰囲気のようだ。
「サミル様は好き嫌いはありますか? 何か食べると体調を崩す等あればお聞きしたいのですが」
「特にそういった物はないですが、生のトマトは少し苦手です」
その言葉に従い、マッシュポテトやマヨコーンサラダのような物、ハムやチーズ、フルーツが乗っている物などが乗った物を中心に取り皿に乗せ渡す。
周りの姫たちは、余り食べないようにしているのか、料理の周りには数名しかいない。
誰かが最初に食べないと、誰も食べなさそうなのでサミル様に実験台になってもらおう。
まぁ折角の料理が勿体無いし、皆も一口食べればどれだけ美味しいか解るはずだ。
「美味しい・・・なんですの? このコーンが混ざってる白い食べ物はなんですの!?」
サミル様は、恐る恐る一口食べると驚きの声を上げる。
しかも、その声が徐々に大きくなり最後は一瞬パーティーホールが静まり静寂が訪れるほど・・・
めちゃくちゃ声でっかいなぁ・・・耳が少し痛いよ・・・
「それはマヨネーズと言われるソースです。 この料理は、そのマヨネーズにコーンや野菜等をまぜこんだ物をクラッカーと言われる物に乗せたカナッペと言われる物です」
「初めて食べましたわ・・・今まで美味しい物は高位のモンスターのお肉以外無いと思ってました、驚きですわ」
「それは良かった。 ここにあるのは私の仲間のタダシさん、ヨシさん夫妻の料理の数々ですので、どれもこれも本当に美味しいですよ」
「失礼ですけども、ご出身はどこですの? こんな料理なんて見たことも聞いた事も無いんですもの」
「海の向こうのどこかの島国なんです。 飽食の国や水の国、黄金郷とも呼ばれたことがありますね」
「そうなんですの? このような美味しい物があるのでしたら飽食の国と呼ばれるのは無理が無いですわね」
「ありがとうございます、サミル様の騎士殿も食べてみてはいかがですか? 帰りの道中のサミル様との会話等で盛り上がれると思いますよ? しかも、無料で食べれるんですから」
俺は、少し離れた位置で立っている女騎士へ同じ物が乗ったお皿を差し出す。
「しかし、私は今護衛の・・・」
騎士が生唾を飲み込み食べたいのを我慢しながら言おうとすると。
「食べなさい! これは私からの命令です! 食べながら警戒すればいいんですわ。 こんな美味しい物いつ食べれるか解りませんもの」
サミル様が俺の持っている皿を受け取ると女騎士に渡す。
「サミル様、ありがとうございます」
女騎士は礼をして受け取ると、一口食べ「うわぁぁ美味しい!」と叫んでしまい、顔を赤くした。
その様子を見て、サミル様と俺は顔を見合わせる・・・すると2人で同時に笑ってしまった。
すると、殿下やファウストさんに話しかける順番を待っていた姫や護衛達は、食事を取り始める。
最初姫が1口食べると、護衛に食べさせるブームが訪れ。
食事をした姫同士で、あれが美味しいこれが美味しいなど様々などの会話が繰り広げられ始めた。
俺とサミル様も、食事を楽しみながら会話する・・・といっても、食事の説明が主な役割なのだが・・・
「カナタ、上手くやりおったな。まさか姫たちがここまで仲良くなるとはおもわなんだ。
陛下に不意に話しかけられ、ビックリする。
「驚かさないでください陛下。心臓が止まるかと思いましたよ」
「これはウルフローナ陛下。 大変失礼をいたしました」
サミル様が頭を下げる。
「いや、きっかけを作ってくれたのはサミルであろう。感謝するぞ」
「はい、ありがとうございます。 大変失礼かと存知ますが、ウルフローナ陛下にお願いがあります」
「うむ、申してみよ」
「この料理を少しいただいて帰る事は出来無いでしょうか? 父上達にも食べていただきたいのですが」
「大丈夫だ。土産として料理や酒等を用意してある国に帰った際に王達へ渡せばよい」
「はい、お心遣い感謝いたします。陛下」
「うむ、楽しんでくれ・・・それとカナタ、終わったら話がある。 後で来てくれ」
「はい、畏まりました」
話していると、サミル様から食料に関する質問があった・・・サミル様の国は天然の田んぼのような沼地が広がった場所らしく、そこで玄米を作っているそうだ。
ただ今回のウェーブで稲が踏み荒らされてしまい困っているらしい。
陛下に相談したら俺に相談してみるように言われたようだ・・・だから殿下の所に行かないで俺の所に来たのか・・・
詳しく聞くと、一昨年から不作が続き食料の備蓄も少なくなり、今年は豊作になると思った矢先にウェーブ・・・
民達にも怪我人が多く出で、国庫から金を出し食料を買うので食べるだけなら来年は何とかなるらしいのだが、再来年はどうなるのか解らない。
米の生産地が無くなるのは困る・・・冬の間は雪で動けないらしいので、春に助けに行ければと思う。
その事をタダシさん、ヨシさんにも話す・・・応急処置としてジャガイモの料理法を教え、ジャガイモを売ることが決まった。