第136話 謁見
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その後、フルオーロ国一行が先に謁見をするということが決まり、大将軍と共に謁見の間に入って行った。
俺が謁見をするそれまでの時間は、表彰の流れを教えてもらうため文官の人を呼ばれ流れを確認する。
と言っても、特に難しい事は無くすぐに終わってしまった・・・基本、片膝立てで話し聞くだけだしねぇ。
結局暇になってしまった・・・そう思った時にメイドさんが現れ、アヤコさんが呼んでいるとのことで向かうことに・・・
部屋をメイドさんに開けられると、王妃様達がドレスを着て髪の毛をアップにして並び、フランソワーズ様が部屋の真ん中で腕を組んで大きな姿見の鏡の前で細部を映しながら頷いている。
「お待たせいたしました。 カナタ様を連れてまいりました」
メイドさんが王妃さまたちにそう言うと、すっと扉の脇に移動した。
「カナタ! 待っておったぞ! さっそくだが、この鏡を売って貰えまいか?」
フランソワーズ様が、鏡を指差して言う。
「ちょっとフラン! そっちが先じゃないでしょう?」
大将軍の奥さんが、フランソワーズ様に向けて言う。
「ああ、すまぬ。 この鎧のスカートの部分なんだが、今は紐で結んでいるんだが・・・しかし、戦闘中に取れてしまいそうでな。 なので、ベルト式にした方がいいのではないかと言われたんだ。 出来るか?」
フランソワーズ様が、笑顔でそう言う。
新しい装備が嬉しいのだろう・・・と言うよりもデザインが全く違うし、可愛い防具が嬉しいとかそう言う事なのかもしれないが。
確かにフランソワーズ様に似合っている・・・でも、やっぱり差し色とかいるんじゃない? 真っ白が下地で銀色の防具って同系色すぎる気がするんだが。
「もちろん出来ますよ。 ただ、明日までに完成させるのは難しいですね。 調整とかもありますから」
「それは構わん。 付けたり外したりするときが面倒なのと、戦闘中に外れる不安があるだけなのだ。 表彰式に間に合わせてもらう必要は無い、出来るだけ早く渡してもらえればよい」
「解りました。 作ります・・・それと、そこの鏡の販売は作った本人に交渉して下さい」
「はい! は~い! 待って下さい! 私には価値が分からないのでアドバイスをして下さい!」
コノミさんが奥の方で手を上げてこちらを見る。
「じゃあ、ミスリルをドワーフの国から送ってもらうように頼むとかにしたら?」
「それは難しいぞカナタ。ミスリルを買ったとしたら、ミスリルを加工出来る物がいると発表しているような物だ。 ドワーフ以外が加工出来ると知ったら、色々とちょっかいを掛けて来る輩が大量に来るかも知れんぞ?」
フランソワーズ様が、腕を組んで頷きながら言う。
「何故ドワーフだと大丈夫なんですか? 同じだと思うんですけど」
「ニーベルンゲン国に登録されたドワーフ達は、1年に1度技術祭典に絶対参加を義務付けられている。 技術共有のためと言っているが、要は行方不明者等が居ないかどうかの捜査のためだ。 昔に他国がドワーフを攫って攻め滅ぼされた歴史があるんだ」
「なるほど、私達だと攫っても大丈夫だと勘違いされかねないと言うことですか」
「うむ、そう言う事だな。 武器や防具に加工されたミスリルを買うことも出来るが、驚くほど値段が跳ね上がるぞ?」
フランソワーズ様が、母親である大将軍の奥さんに鏡の前を譲ってから言う。
「そうですか・・・じゃあ、他に欲しい物ってある?」
「今の所・・・あ! プラチナと金と石英が欲しいです! あと出来れば色々な宝石とかも・・・」
コノミさんが手を上げて言う。
鏡の前が今度は大将軍の奥さんから王妃様へとかわる。
「その位ならお金渡すから買って来ればいいんじゃない? というか、お金にすれば楽なんじゃないの?」
「そう言えばそうですね・・・でも、石英はほとんど買い占めちゃったので送ってもらいたいですね」
「じゃあ、偽銀、軽鉄、錫、石英にすれば? プラチナなんて捨てちゃう物だって言ってたし大量に買って来て貰えるかもよ?」
「偽銀か・・・そんな物が欲しいのか? 確か倉庫にかなりの量があったと思うが・・・どのくらいの量が欲しいのだ?」
フランソワーズ様が色々ポーズをとりながら言う。
というか鏡の順番待ちって・・・気が散るんで止めてもらえないですかね? 1度見たら大体解るでしょう!
「出来るだけいっぱい欲しいです! プラチナを使って魔道具を作ってみたいので!」
そんな事言ったら異常なほど大量に渡されそうなんだけど・・・
「うむ、解った。 後でグロスに頼んで運んでもらうとしよう」
何でグロスさんが・・・まぁいいや、いっぱいあっても別にいいし。
そんなこんながあり、何故かこの場所で鼈甲のブローチやメガネ等を作らされ、稼動部を後で付けて渡す事となった・・・職人クランになり始めてるんですけど・・・
その後、謁見の間の前に戻ると既に謁見が終わっており、謁見することに・・・
中に入ると、陛下、大将軍、殿下、オルトウス様とカルジャスさんの隊がいた。
「カナタ、よく来た。 ここに居るのは事情を多少知っておる者のみだ。 堅苦しい挨拶は抜きにして、話そうではないか」
陛下が玉座に座ったまま言う。
「はい、解りました。 と言っても、明日の手順は聞かせていただきましたので、特に話すことが無いような気がするんですけど・・・」
「それなんだがな、片膝立てで座らぬようにしてくれ」
「え? どういうことですか? 慣例のような物なんじゃないんですか?」
「慣例と言えば慣例なんだが、お前達はこの国の貴族では無いだろう? ましてや国民でもない、だからこそ片膝立てで座らぬようにと言っておるんだ」
なるほどね、片膝立てで座ると陛下に屈服していると内外に知らしめられてしまう。
陛下は、俺達と対等な立場で良いと言ってくれてると言うことなのか。
「もちろんこの国に仕官してもらえれば全員にそれなりの地位を与えるが、要らんのだろう?」
「そうですね。今の所は要りません・・・ですが、欲しくなったときにはお願いします」
「あっはっはっは。 もちろんだ、いつでも来てくれ」
陛下は、物凄く面白そうに笑う。
「表彰での流れとかはどうなるんですか? 何か変更があるんですか?」
「そうだな、カナタならアドリブで何とか出来るだろう?」
陛下はニヤリと笑う。
おいおい各国のお偉いさんが集まってるのにアドリブって・・・まぁ良いけど・・・
「そういえば、他国の姫ばかり集まっていると聞いたのですが、何かあるんですか?」
「それは、ヴォルディンの妃候補だからだろう。 この機会に面識を・・・ということだと思うぞ? なんだ、誰か気になる者でもおったのか? 連れてくることも出来るがどうする?」
「いえ、そう言う事ではなく気になっただけですので」
「そうなのか。 気になる者がおればちゃんと言うのだぞ? 紹介するからな」
「陛下、カナタ殿がお困りですぞ?」
オルトウス様が、助け舟を出してくれた。
どこぞの姫と恋に落ちるってのも悪くは無いけど、紹介って事は相手が断れない可能性が高い。
そうなると、俺のことを全然好きじゃないのに結婚してしまう可能性があるってことだ。
さすがに義務で結婚してもらうのはな・・・いや、物凄いタイプだったらそれも・・・いや、しかし・・・
異世界に転移したからってハーレムを作れるほど、俺がモテるとは思えないんだよなぁ・・・顔がかっこ悪いし・・・
でも、俺が好きになり好きだと言ってくれる人と付き会いたい・・・何とも青臭い気持ちだと思うが、頑張ってみよう!
そうだ! 頑張って勇者になれば、モテる可能性もあるだろうし!