第14話 救出に向かう
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門の前に着くと、グロスが既に待っていた。
「お待ちしておりました、お嬢様」
「うむ、全て滞りないか?」
「はい、荷物の整理、食材の補充、薬の確認など全て滞りなく完了しております」
「いくぞ! 付いて来い」
2人は「はい」と言ってその後についていく。
昨日くぐった2つ目の門がある壁は厚く、幅が5mを超えているかもしれない。
門の真ん中辺りに受付カウンターっぽいものがあった。
もしかすると、昔はこの門が外の門だったとかかな?
門をくぐったところに門番が左右に立っていた。
「これは、フランソワーズ様! 2の門異常無しであります」
「うむ、励んでくれ」
「はっ、ありがとうございます」
と2人同時に声を出し、敬礼している。
昨日は暗くてよく見えなかったが、門の開閉はチェーンで檻のようなものを下に下ろすみたい。
やっぱり、門を外にもう1つ作ったんだろう。農地を広げるためとかか?
あれ? お屋敷の前で行列が出来てる・・・炊き出しか?
「そういえばカナタよ、食事は取ったのか? 取っておらんのであれば、炊き出しに行くか? 全員に行き渡るように、十分な量を出しておいた。今から10人位増えてもまったく問題ないはずだぞ。食べて行くか?」
「はい、お言葉に甘えて頂いてきます」
そうだった、色々ありすぎたのと最近は空腹が普通だったから忘れてたよ・・・
「うむ、私も一緒に向かい、様子をみて見るとしよう」
3人は、炊き出しに向かっていく。
「皆のもの、滞りないか? 不足物などがあれば進言せよ」
「はい、フランソワーズ様。今のところ全て順調でございます」
うお、炊き出しの人が全員手を止めて、フランソワーズ様に頭を下げてる・・・ものすっごい偉い人なのか?
「うむ、それならばよい・・・すまぬが、1杯この者にくれぬか?」
「かしこまりました、少々お待ちください」
貰ったスープは、野菜が小さく刻まれて薄い塩味しかせず、驚くほど味気ないものだった・・・調味料がないのか? それとも、炊き出しだししょうがないのかな?
食事が終わり、木の器・木のスプーンを返すと直ぐにもう一つの門に向かっていく。
炊き出しはフランソワーズ様の指示だったのか~、人助けをする貴族の令嬢って感じなのかな?
それとも王族とか? それは無いか・・・やはり昨日の物乞いを無視したのは、身の安全確保だったのか・・・やはり、いい人だね~。
それにしても、ここら辺は畑ばっかりだな、何の野菜を育ててたんだろう? やっぱり麦かな?
水田は・・・あるはずないか・・・米があればラッキーだと思ったのになぁ・・・
ん? あれトウモロコシに似てるなぁ・・・え?・・・いや、トウモロコシじゃん!
「フランソワーズ様、あの野菜はトウモロコシでしょうか?」
「うむ、そうだ! ニホン国にも同じものがあったのか?」
「はい、ございました」
「そうか、やはり海をわたれば帰れるかも知れんな! 仲間にいい知らせを持って行けるな!」
「はい、大変嬉しく思います」
速度を落とさぬように会話をしていたが、昨日のような物乞いが居なかった。
やはり、炊き出しをしたから居なくなったんだろうな。
それとも何かあったか・・・まぁ人の心配をしてる場合じゃないだろうな。
その後は何も無く門の近くにたどり着いた。
門に向かって左側に掘っ立て小屋のような物があり、中には軽装の伝令? シーフ? と思われる人が1人立っていた。奥が兵士の詰め所なのかもしれないが・・・
ここで、入出国手続きをしているのだろう・・
あれ? こっちは壁の中に詰め所があるんじゃないのか? 今気にしても仕方ないか・・・
第2の門と違い内側に門番が1人、外側に2人の門番。
「第3の門異常ありません、フランソワーズ様」
「うむ、今はウェーブの後だ! いつ魔物共が襲ってくるか解らん。気を抜かずにしっかり頼んだぞ!」
3人が「はっ」と言い敬礼をしている。
「それでは、手続きをいたしますので、ギルドカードをお貸しください」
ギルドカードをポケットから取り出しそのまま渡す。
門番は受け取ると小屋の中に入っていった。
それにしても、お金が重いなぁ・・・預けられないか聞くべきだったな・・・
内側の紐が付いてるカーゴパンツで良かった。お金の重さでベルトだけだと落ちてたよ・・・たぶん。
「お待たせいたしました。無用だと思いますがお気をつけて」
「うむ! お前たちも頼んだぞ!」
外に出ると一気に速度を上げていく。
「2人とも一気に村まで急いで行くぞ」
時間はもうお昼を回っているだろう・・・野営よりは廃村にとまれたほうが幾分かいい、そう思いながら早歩きをする。
しかし、気になっているのが身体に纏わりつく湿気のようなもの・・・
これがファンタジーで良く語られる、魔力や魔素と呼ばれるものなのか?
全く分からないな・・・フランソワーズ様に後で答えを聞いてみたほうが良いかもな。
今は、自分が持っている知識の照らし合わせをしてみよう・・・常識では測れないものが多いだろうから、意味がない可能性もあるが、考えるだけならタダだしね。
魔力・魔素だとしたら、イメージで自在に操れるのか、そして、魔法が使えるのかってところかな。
身体に魔力をこめてってのも王道だろうしやってみてもいいだろう。
出来なければ答えを聞こう。いきなり聞いて先入観持ったら不味そうだし。
考え事をしながらだったが、街道と言う事もあり夕方には廃村に着いた。行きよりもかなりハイペース。
グロスさんが、グロッキー・・・になっている・・・あぁ、何を考えてるんだ・・・駄洒落にすらなってないだろうが!
マジンを入れてからすこぶる調子がいい。身体がものすごい軽い。
結局魔力・魔素を操れなかった。練習は続けるが答えを聞こう・・・もう少しあとで。
グロスさんの代わりに薪を拾っておくと、グロスさんが「ふんっ」って言いながら薪を使ってくれた。
薪に火をつけるところが見たい! 魔法を使って欲しい!
「天に居られるレティア神に代わり、我が魔力に呼ばれ集まり変わり奇跡を起こせ、ア・ス・アイ・ファイア」
呪文長! 最後のほうによく解らない言葉いってたし、これ覚えるのすげぇめんどくさいな・・・
詠唱が短くなるとかないのかねぇ・・・ギフトならあるかも? すぐに覚えられるものでもないか・・・
う~ん・・・魔法を教えて貰いたいが今は難しいだろうな・・・一応緊急事態だし。
細胞一つ一つに魔力を込めるってのは、どんな感覚なんだろう? そもそも、そんなこと出来るのか? いや、人が空想出来る全ては、人が実現できる・・・だっけ? 少し違うかな?
まぁいいさ、食事のときにでも、フランソワーズ様に聞いてみるのが1番早いだろうな。
食事を取りながら、魔素・魔力について質問してみる。
「む? 湿気みたいなものだと? そんなもの感じないぞ? 雨でも降るのか?」
「そうですか、一瞬感覚的にそう感じただけですので気のせいでしょう」
そういえば、赤ちゃんの頃にマジンを入れるんだったな・・・そんな違和感なんて感じないか・・・
「有名なギフトや魔法はどのくらい種類があるですか?」
「うむ、攻撃魔法で1番普及しているのは、ワードマジックだろうな。
ワードマジックは呪文によって発動する魔法だ。込める魔力量や適正・熟練度によって威力や発動時間が変わる。誰にでも扱えるが、魔力の低い者では、生活を助ける位にしか使えなかったりする魔法だ」
人差し指を立てながら説明される。
「次に、回復魔法は得意属性が光の属性の者しか使えない貴重なもの・・・いや、全く使用できないわけではなく効果が薄くなってしまうもので、歌で人を癒すソングスペルという魔法だな。音を外したりリズムが狂うと、発動しなかったり威力が低くなってしまったり違う効果が発動したりする・・・
大体がこの2つが主流だが、他にもいろいろな魔法があるぞ。使い手は少なかったりするがな」
「ありがとうございます。魔法はゆっくりと覚えたいと思います・・・ギフトは、有名なものは何ですか? 教えられるものでいいので教えていただきたいです」
「うむ、有名なものだと身体強化、武器の技術、詠唱短縮、鉱物・食材など色々な目利き、アイテムバッグ化などが有名だな。ギフトが複合しているものもあるので全部は分からんが」
「なるほど、ギフトを使うときは心の中でON・OFFしますが、今言っていただいたのも同じ使い方なのですか?」
「うむ、どのようなギフトでも自分でON・OFF出来るとされているが、ONにすると魔力を使うので頻繁にON・OFFできん・・・そうだな、身体能力強化を見てみるか?」
出来るとされているか・・・ギフトについてもまだまだ発展途中という事か?
「身体能力強化ですか! 是非に見てみたいです!」
「お嬢様! お戯れが過ぎますぞ!」
「よい、人族では身体能力上昇までしか覚えることが出来ないと聞く。特に問題なかろう・・・よいか? いくぞ」
フランソワーズが少しはなれ、「はっ」と気合を入れると、一つ一つの動作がすばやくなったように感じる。
剣を抜き、剣舞のような動きを見せる。
「こんなもんだ、参考になったか?」
「ありがとうございます、参考にさせていただきます」