第132話 ワイバーン解体 ①
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「あ! カナタさん、このプラチナってどうやって手に入れたんですか? 鍛冶場や魔道具の工房には置いてなかったそうですし」
コノミさんは、紙を見ている俺に話しかける
「ああ、ゴラントさんって覚えてる? 前に鍛冶師の皆さんを奴隷のようにしてた人なんだけど」
「覚えてますよ。 カナタさんに騙されて逆の立場になっちゃった人ですよね?」
「いや、騙した覚えは無いんだけど・・・まぁいいや、そのゴラントさんの奥さんが持ってて少し貰ったんだ」
「なるほど・・・でも、大丈夫なんですか? 裏切られるかもしれませんよ?」
「大丈夫だと思うよ? 話して見たけど、根っからの商人って感じの人だったから利益を産んでるうちは裏切ったりはしないよ。 子供達の商人の講師をしてもらいたいぐらいの逸材に感じたけど」
「へぇ~、そうなんですか。 でも、そんな逸材なら何で鍛冶師を騙したんでしょう? そんな事をするよりも真っ当にやった方がいいと思うんですけど」
ふむ、考えて無かったな・・・たぶん、ゴラントさんの独断でやっちゃったんじゃないのか?
今日見た感じだと、ゴラントさんが奥さんを店に係わらせていない気がするが、本人に聞いた方がいいだろう。
「そうだね、気が付かなかったよ。 もう一度会ったときに聞いてみるね」
そんな会話をしていると、タクミ君が満面の笑顔で帰ってきた・・・機嫌が良さそうだな? なんかあったのか?
その後ろから、エルディアさんが出てきた・・・鍛冶場で一緒になったのかな? それにしてもタクミ君デレデレだなぁ。
もしかして付き合ってるのか? はぁ・・・俺も彼女欲しいなぁ・・・
「ただいまです。 カナタさん、魔力炉を無料で借りれることになりましたよ。 ただ、使用後に魔力をいっぱいまで入れなくちゃいけないので、ミズキさんに手伝って貰うしかなさそうですが・・・」
タクミ君がニコニコしながら言う。
「いつ借りてもいいの? それとも日にち指定?」
「借りる日にちは何時でもいいそうですが、仕事後の夕方から夜にして欲しいそうです」
「OK、じゃあ今夜にでも骨の削り出しを終わらせ・・・あ! 今夜ワイバーンの解体をしようと思って解体場を借り切ったんだった」
本当に忙しいな・・・自分の好きな事だけをしている感覚だからいいんだけどさ。
冬になったら雪が積もるらしいし、ゆっくり過ごそう・・・
「え? もう骨と皮が無くなってきたんですか? ものすごい量あった気がしたんですけど・・・」
「いや、血塊脈が無くなってきたんだよ・・・1番使っちゃう物だしね」
「なるほど、それなら解体をしないと駄目ですね・・・何か手伝いましょうか?」
「いいの? 本当に助かるよ。 ワイバーンの解体って結構重労働で男手が欲しかったんだよ」
「はい解りました、いいですよ。 タダシさん、リョウタロウさんにも話して来ましょうか?」
「ありがとう。 折角少し時間がある見たいだし、晩御飯出来るまで骨の削り出しをしてくるね」
ダイニングを出て、革の工房部屋に入り、骨を削っていく・・・篭手、胸当て、すね当て、ショルダーガード、兜、カイトシールド・・・今まで作った物もあるけど、やはり今夜中に完成させるのは難しいな。
やる事を詰め込みすぎてるな・・・色々やりたい事があるって事はいいことなんだけど・・・まぁ、いつかやるしか無い事なんだし、頑張るしかないよな。
作成部位詳細ではなく完成予想図を見てみると、ドレスアーマーが少し変わっている・・・前はプリンセスドレスのようだったが、今ではなんとなくヴァルキュリーが着ている様な装備に見える。
プリンセスドレスより、戦乙女の方がフランソワーズ様らしいな。
さて、現実逃避もそこそこにして骨の加工へ戻ろう。
骨を、大まかな形に切り出すのは結構簡単に終わったのだが、形に整えた骨をミスリルコーティングに出す前に、もっと表面を滑らかにしなければならない。
この表面を滑らかに削る作業が難しい・・・思ってるよりも骨が硬いから、魔力を込めすぎると削れ過ぎて失敗するだろう。
もう、ここまで来たらデザインを掘っても同じなんじゃないか? 木札のデザインと桜の花とか・・・
そう考えた時にベトニアが食事に呼んでくれた。
なぜか部屋に来たベトニアの服はミニスカメイド服になっていた・・・男の娘なんだけど、需要あるのか? 深く考えない方が無難か・・・
「ところでベトニア・・・なんでメイド服なの?」
「え? はい、この格好はコノミ様が、カナタ様が着てると喜ぶからと言って渡していただいたのですが・・・違っていたんですか?」
ベトニアはスカートを下に引っ張りながら恥ずかしそうに言う。
「いや、似合ってはいるんだけど・・・まぁ、いいんじゃない? たぶん、需要あると思うよ」
「需要? ちょっと意味が解りませんが・・・似合っていると言っていただけて嬉しいです」
意味なんて解らなくていい・・・でも、今の格好で外にいくと変なやつに絡まれそうだな・・・簡単な武器でも作ってあげた方がいいのか?
この世界の人に武器を作っていいのか、作らない方がいいのか相談もしなくちゃだな。
そんな事を考えながらダイニングへ行き、食事をする。
今日はビーフシチュー、パン、生ハムサラダ、オニオンスープだった。
やっぱり美味しい! ビーフシチューの中のヒレ肉が箸で簡単に解れるほどトロトロで食べた瞬間「生きてて良かった~」と呟いてしまった。
ご飯も食べ終わり、フランソワーズ様に鎧の縁取りや盾のデザインについて聞いてみる。
「盾などに彫ったり縁取りをするのは時間がかかるだろう? 時間があるときにやってもらえればいいさ」
「そうですか、解りました。 とりあえずはシンプルな感じに仕上げますね」
「うむ、無理を言ってすまない。 後で御礼をする事を約束しよう」
「ありがとうございます。 調整等もあるかもしれませんので出来るだけ早くお渡しします」
フランソワーズ様と話し終わり、女性達とグロスさん、執事、メイドを残し解体場へいく。
解体場の前でエミルさんが座って待っていた。
「待ってたよ。 半袖だと、夜は少し肌寒くなってきたんだねぇ・・・そんな話はいいね。 聞きたいんだけど、私の手伝いはいるかい?」
「ん~、かなりの厄介ごとを背負い込むことになると思いますが良いですか?」
「そんなに厄介な物を狩って来たってのかい・・・手伝うのは止めておくよ」
エミルさんは、苦笑しながら言う。
「それがいいと思います。 リョウタロウさん、から揚げとパンって残ってましたっけ?」
「少しならありますよ。 お皿ごと渡しちゃいますね。 どうぞ、お皿は次ぎ会った時に返して下さい」
リョウタロウさんは、さらに乗ってるから揚げを渡しパンを数個その皿の上に乗せる。
「催促しちまったみたいで悪いね。 ほら、鍵を渡しておくよ。 予備もあるから次のときに渡してくれて構わないからね。 あ! 戸締りだけはしっかりしておいてくれよ? じゃあ、おやすみ」
早速解体場に入り、解体を開始する・・・まずは、ケイタ君達2班が倒したワイバーンから始める。
タダシさんが血抜きを行えば、なぜか心臓が止まっていても血抜きが出来る。
血がこぼれないように樽に向けて、血を出していく・・・頭・腕・足・尻尾・羽根・層を半分に切り時間を短縮させるが、血がちょっとこぼれてしまった。
まだまだ時間がかかるので、俺達1班が倒したワイバーンの氷を溶かす。
同じように解体し、血を樽に入れていく・・・これで血も十分に集まったな
ウィンドカッターで傷が付かないワイバーン・・・ワイバーンの魔ナイフで切っていく。
ただ、ワイバーンの魔ナイフ持ってるのは3人・・・タダシさんだけグルングロッコのナイフで切れるようだが・・・
仕方ない・・・最低限切れるナイフを作ろう・・・