第130話 ゴラントさんの奥さん
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ダイニングに行き、早速タダシさんヨシさんにお土産の話をする。
「というわけで、ゴラントさんと言う商人の所に顔を出してこようと思うんですけど、何か良いお土産とかってありますか?」
「事情は分かったが、敵対していた所に子供達を学ばせに行くってのはどうもなぁ・・・ちゃんと教えてもらえるか解らんだろ?」
「ええ、そうなんですけど、食堂の完成もまだまだ先ですよね? 今、やる気のあるうちに、社会を学ぶのも良いかと思ったんです」
「それも解るんだが・・・カナタがミミリの所で手伝いをすれば良いんじゃないのか? 木材の切断、加工、運搬が全部解決するだろ? 最近木工もして無いみてぇだし、行って来たら良いんじゃないか?」
「なるほど、組み立てなら皆手伝えますもんね。 そっちの方が現実的かな? じゃあ、ゴラントさんの所に、様子見に行くだけってことでお土産を持って行きたいんですけど」
「それなら了解だ。 クッキーとシフォンケーキならどっちを持っていく? いや、両方持ってけ! 鉄とか融通して貰ってるみたいだしな」
「了解です。 何かあれば無線をお願いします、一応持って行きますので」
リョウタロウさんが呼ばれお土産を渡される。 それをバッグの中に入れると、ゴラントさんの店へと出発しようとするが、場所が分からない・・・・
するとリョウタロウさんが、場所を知っているみたいで一緒に行ってくれることになった。
リョウタロウさんとは同じ年代なので、何かと会話する・・・俺はインドア派、リョウタロウさんはアウトドア派だったが、やはり子供のころ見ている物は大差ない。
キャプ〇ン翼でサッカー選手に憧れたり、スラムダ〇クでバスケットをしてみたり、カメハ〇波の練習をしてたり、筋肉バ〇ターってしたの人がくらってるよね? なんて、本当にどうでもいい話をいつもしている。
リョウタロウさんは、ブロンド美女に憧れていたって話してくれた・・・それが、海外を放浪するきっかけになったとか・・・
勉学に、性衝動を絡めると捗るっていうし理には適ってるよ・・・フランス人の彼女に惚れて、フランス語を1から勉強し最終的には会話出来るようになって結婚したやつもいるからなぁ。
俺もそう言うイベントがあれば、英語がペラペラになったのかなぁ?
30代毒男2人でくだらない話をしていると、ゴラントさんの店に着いた。
いつものように、身体強化をかけて駆け抜けて行く事はしなかったからか、街が違うように見えた・・・たまにはゆっくり歩くのも良いかもしれない。
「すみません、ここがゴラントさんのお店ですか?」
俺は、お店の中で鉄鉱石を樽に詰めている人族の奴隷の屈強そうな男性に話しかける。
「ああ、そうだが・・・主人の知り合いか?」
奴隷の男は、顔を顰めて言う。
「まぁそんなところです。 ゴラントさんは戻っていますか?」
「いや、奥様しか居ない・・・主人は買い出しにいってる」
「じゃあ、奥さん呼んでもらえますか? もしくは俺が直接行った方が良いですか?」
「俺が声をかけてくる。 待ってろ」
しばらくすると、奥の階段からふわっとした雰囲気の優しそうな人が出てきた。
「あらあら、貴方様がもしかするとカナタ様ですか?」
笑顔を一切崩さず、いきなり俺の名前を呼ぶ。
呼ばれたことに驚きつつ、この人は根っからの商人のように感じた・・・陛下とは違う雰囲気だが俺が警戒しなきゃいけない相手のようだ。
「はい、私がカナタと申します。 いきなりの訪問大変失礼いたしました。 お土産のシフォンケーキとクッキーでございます。 両方とも『砂糖』を使用した『甘い』お菓子でございます」
俺は、いいながら手のひらを胸に手を当て、いい終わってから出来る限り優雅に礼をする。
やはり言ってる最中『砂糖』と『甘い』というキーワードに一瞬顔色が変わった。
当然、砂糖は貴族御用達のお店にしか売っていないし、ものすっごく高価な物だ・・・金をそのまま食べていると言っても過言じゃないくらいだからな。
「まぁまぁ高価な物を、ご丁寧にありがとうございます。 主人が居ませんが、お茶をお出ししますので、お上がりになって下さい」
「ご丁寧にありがとうございます。 リョウタロウさんは、用事とかは大丈夫ですか?」
「私は、戻ります・・・なんか居ちゃいけないような雰囲気なので」
リョウタロウさんは、小声で俺だけに聞こえるように言う。
居ちゃいけないとか、そんな事は無いんだけど・・・たぶん暇になるからね。
俺は、1人でゴラントさんの家の中に入っていった・・・1階は店舗&倉庫、2階は住居って所なのか・・・店舗には屈強そうな男の奴隷しかいなかったし、防犯も兼ねてるのかな?
まぁ、おぼろげな記憶だがゴラントさんが鞭で奴隷を叩いてたって言ってた気がするから女性が居ないと言うのは評価しよう。
通された部屋は、長椅子が2つテーブルを挟んであり、壁の棚には色んな鉱石が置いてある。
まさに、仕事の交渉等をするスペースのようだった。
長いすに座って待つように言われ、鉱石を一通り見てから待っていると、陶器で出来たお茶のセットをお盆に載せて運んできた。
陶器は、白磁器で簡単な模様がある物だった。
「この白磁器はドワーフの国で出来た物です。 この国では珍しい物ですよ」
奥さんは、微笑みながら言う。
「そうですね、久々に見ました」
俺がそう言うと、ピクリと反応をする・・・反応を試したって所か? 日本だと100均でも買えるから見慣れてるぞ?
「最初に質問なのですが、どこまでご存知なのですか?」
「ふふふ、言ってる意味が解りかねますが?」
「ゴラントさんに借金を大量に吹っかけたのはご存知ですよね? そうなれば、普通は敵対しそうな気がするのですが?」
「私は商家の長女でした。 勝てない勝負をするほどお人よしではございませんし、そう言う風に教育されてきましたので」
奥さんは紅茶を優雅に飲みながら言う。
「そうですか・・・私は貴女を気に入りました。 何かしら支援をさせていただきたく思います」
俺も紅茶を飲み笑顔で言う・・・支援をする代わりに子供達の教育をして貰いたい!
「支援ですか? 私には取引と言われている気がするのですが?」
「あっはっはっは、良いですね! 良く人のことを観察していらっしゃる! それでは、これをご存知ですね?」
俺は鼈甲を、テーブルの上に置く。
「存じておりますが・・・これを卸して下さると?」
「ええ、融通させることが出来ますし、他の物をお渡しする事も出来ます」
「なるほど、お断りさせていただきます。 過ぎたる物は身を滅ぼします。 私どもは鉱石商でございます」
「益々素晴らしい! 質問なのですが、その棚の鉱石は貴方が選んで居ますね?」
「良くお分かりで・・・全部私が選んでいます」
「そうですか! その1番下にある銀色の玉はどうされたのですか?」
「偽銀ですか? 見た目が綺麗なので並べているだけですが?」
「そうですか! この鉱物は安い値段で売られていると察しましたがいかがでしょうか?」
「ええ、誰も買わないので捨てられることも多い物ですね」
「素晴らしい! 少しいただいても良いですか? もしかすると、ただの物が、お金に変わる可能性もありますので」
「ええ、構いません・・・不躾ですがいくらくらいになるとお考えですか?」
「確認しないと解りませんが、私の欲しい物だと分かれば鉄と同等くらいで買わせていただくと思いますよ?」
「ななな! 失礼しました。 よろしくお願いします」
奥さんは、テーブルを叩き身を乗り出して驚くが、すぐに座り頭を下げた。
ルンルン気分で屋敷へと向かう。
子供達の教師になって欲しいが、今は鉱石がなんなのかを調べてもらうのが先決だ。
俺の予想だと、白金鉱だと思うが調べないと解らない・・・取引がうまくいけば、教師としてお願いする事も出来るだろう。
まさにWINWINだな! ・・・あ! また名前聞くの忘れた・・・