第127話 特訓?
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雑木林に近づき、人の姿が無いかを見て周る・・・見た感じだと人はいない。
「雑木林を切りますよ! 誰かいたら大声出して下さい!」
数秒待ったか特に誰も出てこない・・・よし、切り刻むか!
といっても、魔法で切る訳じゃなく、短剣で1本ずつ切り倒していくつもりだ。
今もっている武器は、切れ味がそんなに良く無い、わざと重く作られた練習用の鉄のナイフ(刃渡り40cm位)とグルングロッコ上位種・ガルングロッコの短剣だけだ。
雑木林の木の幹は25cm位、このくらいの太さなら鉄のナイフでも切れるかも。
ギフトを使わずに、走ったまま速度を落とさず短剣で木を切る・・・あ! マジックバック忘れた。
取りに帰ろうか迷ったが、面倒なので、そのまま全部切り倒すことに。
最初は勢いを殺さずに速度を一定に保ちながら切るのは難しかったが、慣れてくると思いのほかすんなりと切れる。
ふむ、1回で切ろうとすると無理が出る、全く同じ場所に素早く刃を沿わせるのが1番抵抗が少ないのか。
うまい事1回で切れれば良いんだが、未だに1回で切る事は適わない。
1度止まって1回で切れないか試した方が良いだろう・・・真横に切るのではなく斜めに切れば良いんじゃないか?
TVとかで見たことのある居合い切りとかだと、上段から斜めに切ってる物の方が多いし。
そう思い、木の前に立ち真半身でナイフを構え、上段から体重もかけながら切ってみる。
失敗・・・半分くらいまで切れたが、そこで止まってしまった。
ん~・・・何でだろう? 勢いが足りないのか? どうやったら切れるんだろう?
一応、ガルングロッコのナイフで切ってみる・・・ほとんど抵抗も無く切れる。
武器の性能の違いなんだろうけど・・・どんな弱い武器でも、武器を壊さず自分の持ってる力を攻撃に反映出来る様にならないかな?
弘法筆を選ばずって感じになりたい・・・要練習だろうな、皆はそろそろ屋敷に帰ってるかもだし最後に1回だけ本気で切ってみよう。
少し奥に、他の木よりも太くかなり大きい木があった・・・刃渡り的にちょっと厳しいが、狙いはこの木にしよう。
走って近づききっちり踏み込み勢いを上半身へ、上半身をきっちりと捻り勢いを余すことなく腕へ、腕の力を出来る限り抜き鞭をイメージしながら腕を振り、インパクトの瞬間力を込めいっきに木を切る。
簡単に言うと、野球の投球フォームに近い・・・後先を考えない完全な全力攻撃!
結果は失敗とも成功とも言える・・・7割位切れた時に、武器の限界が来た様で根元からぽっきりと折れてしまった。
だが、きっちりと木を切り倒すことは出来た。
ナイフで木を切り倒せたんだから成功なのか? でも、武器は破壊してしまったんだし失敗なんじゃないのか?
どうなんだろう? まぁ要練習ってことにしておこう。
そんな事を考えながら、雑木林を後にし屋敷へと戻る。
屋敷に到着すると死屍累々と言った形になっていた・・・地面に寝かされた人々、体を動かすことが出来ないようだ。
俺が1番最後に帰ってきたのかな? それにしてもやりすぎたんじゃないの? どうすんの午後からの農作業。
屋敷の近くで、タダシさんが炊き出しを行うようだ・・・ヨシさんが何かの薬を鍋に入れてるところが見える。
ポーション鍋とかなのかな? 薬膳鍋と呼んでも良いのかもしれないんだけど・・・
ユカさんの姿が見えないけど、何かやってるのかな? こんな時にユカさんがセカセカ動くイメージがあるんだけどなぁ。
まぁいいか、俺も炊きだし手伝った方が良いだろうから、タダシさんの所に行きますかね。
薬膳鍋は、玄米や麦などで作った主穀の薬膳鍋で、味見してみると疲れが拭き飛ぶような味がした。
出来上がった物を、メイドや執事達で配っている。
タダシさんヨシさんは、子供達はそれでは足らないだろうと豚串を焼くようだ。
1本塩で貰い、食べる・・・やはり外で食べるのは良いね! そこらじゅうから笑い声が響く。
笑顔で皆を見てたら、屋敷の中から子供達が出てきた・・・包帯のような物を巻きながら・・・
一瞬ぎょっとしたが、食べ物を見つけ駆け寄ってくる姿を見た安心する・・・得に大きな怪我ではないようだ。
屋敷から1番最後にユカさんが出てきた。 怪我を治療していたようだ。
ユカさんは、食事を受け取り俺にこうなった経緯を話す。
「手合わせは順調に終わったんですけど、一部の子供達からショウマ君に挑戦したいと言う声が上がって乱取り? でしたっけ? が始まってしまったんですよ。
ショウマ君は上手く手加減しながら最初やってたんですけど、集団で来ても良いと言ったときから乱戦になってしまって・・・」
ユカさんは大きなため息を吐きながら言う。
「ショウマ君が怪我をさせたのではなく、乱戦時に自爆と言うか仲間内での誤爆でやられたと?」
「そうなんです。 大きな怪我は無くて打ち身程度なのでいいんですけど・・・あ! そう言えば軟膏を開発したんです! ワイバーン軟膏!」
「ワイバーン軟膏? なんですかそれ?」
「血液を遠心分離する時に出る血清・・・透明な液体があるのは覚えてますか? それに薬草を乾かした物を入れた物です。 効果を高めるために解毒茸の戻し汁も使ってますよ。 詳しくはレシピはありますので後でお渡ししますね」
「ありがとうございます。 そう言えば、ポーションの味の改良は終わったんですっけ?」
「いえ、まだですね・・・錠剤にしてしまえば味は関係なくなるんですけど・・・」
「そうですか・・・ジュースと割ったり出来ればある程度は味が変わるんじゃないですか?」
「そうですよ! ジュースですね! お茶になんでこだわっていたんでしょう! お茶のようにジュースに薬草を入れて薬草ジュースの様にすれば、何のジュースが良いかな? でも苦味が・・・」
ユカさんは、1人の世界に没頭してしまった。
邪魔するのは悪いので他の人も見てきますと言って立ち去った。
大人達は、久々の運動でへばっているが、子供達は既に駆け回っている・・・元気だ。
その様子を見ていると、セランと農奴の子供達3人と、ショウマ君とケイタ君、ナリッシュ君達が来た。
話を聞いてみると、今まで組み手をしていたようだ・・・良くやるな。
ナリッシュ君はこの数週間でかなり実力を上げている・・・どのくらいの実力か解らないが・・・
セラン君を含む筋が良い天才肌の4人はPTを組み、冒険者登録するとのことで試験を受けていたようだ。
ショウマ君曰く、4人全員オークとのタイマンなら勝てるくらいにまでなっているとのこと。
この国周辺は、ゴブリン、トウグ、オーク、ラネアスパイダーが多くいるようだし、無理をしなければ大丈夫なんだろうが・・・心配だから、魔物との対決で実地試験させるようだ。
冒険者になりたいと言い出してまだ1ヶ月過ぎていないのに、子供の成長は早い物だ。
さて、皆が成長してるんだし、本格的に商人になりたい子供達の勉強の場を整えるのがいいのかもしれないな。
忙しくてなかなかいけなかったが、ゴラントさんの家族とかにも挨拶と、農奴子供の教育のお手伝いをお願いしても良さそうだな。
そう言えばゴラントさんって帰って来てるのかな? アルミを使って色々作りたい物があるんだけどなぁ。
皆のブーツとか手袋、面当てやマスクなど色々作らなきゃいけない物があるし、帰ってきても忙しい日々が待ってるもんだなぁ
食事を終え、ぞろぞろと全員で協会に行きLvを上げる【Lv32.Lv31】となる。
大人達も、軒並み停滞していたLvが上がって歓喜の声が聞こえてきた。
そういえば、ミズキさんから魔法はいつ指導しますか? とも言われてたっけ・・・日本にいたときより忙しい・・・でも、ものすごい楽しい!