第121話 挨拶周り②
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「皆席に着け! お待ちかねの昼飯だぞ~!」
タダシさんが珍しく全員に席に着くように言う。
なんだろう? タダシさんとヨシさんがニコニコしてるように見えるんだけど、なんか面白い食材でもあったのかな?
そんな事を考えてると、タダシさんとヨシさん、セードルフ達が銀のプレートに銀のドーム状の蓋をした物と、お肉などが入ったあんかけのような物を持ってきた。
え? え? 何? 何が入ってるの? すっごい気になる!
「皆が待ちかねた物を陛下から貰ってな、全員そろった今日解禁だ!」
タダシさんはそう言うと蓋をとる。
そこにはチャーハンがこんもり乗っていた。
「うぉぉぉ! 米だ! 見つかったんですか!?」
「ああ、鼠の姫様の献上品だそうだ! もっとも、コメではなく玄米として献上されてた物を見つけたんだがな・・・それはいいか。 このコメは上手くいけば、もっと手に入るぞ! ただ・・・インディカ米なんだがな」
そう言われ、お米を見ると確かに長細い日本の米ではないようだ。
少し残念に思いながら一口食べると懐かしい味が広がる・・・十分美味い。
このお米は粘りが少なく感じるので、チャーハンやパエリア、リゾットなんかが合うのだろう。
「この隣のあんかけを掛けるとさらに美味いぞ! かけてみてくれ」
確かに美味い! あんかけには牛肉やたまねぎ等が入っていて、味自体は結構シンプルだ。
皆無言でかき込むように食べ、久々のお米を堪能した。
食べ終わり皿の片付けを手伝おうとしたとき、ヨシさんに呼ばれる。
「カナタ君、相談したい事があるんだけど良いかしら?」
ヨシさんは、片手をほほに当て首を少し傾げて言う。
「はい、構いませんけどどうしたんですか?」
「えっと、この世界の人と恋人になるのってどう思ってる?」
「俺達がこの世界の住人と恋人同士になるってことですよね? 特に構わないと思いますよ?」
「でも、私達は帰るかも知れないじゃない?」
「そうですね。 でも、恋人になるのを止めようとは思いません。 え~と、言い伝えの通りだと自分で帰ることを選んだように思いますが、強制的に送り返されたと言う可能性もある・・・それを気にしてるんですよね?」
「いえ、そこまでは考えてなかったけど、好きな人と離れて暮らすのはかなり辛いわよ? しかも2度と会えない可能性があるのなら最初から・・・」
「それでも否定はしたくないです。 本人が色々考えて出した答えなら応援したい・・・ヨシさんもそうなんですよね?」
「それはもちろんよ。 女はいつでも、世界を敵に回しても傍にいるって言われたいものよ? ね? あなた」
「おいおい! いきなりこっちに話を振るんじゃない!」
タダシさんがこちらを見ずに皿を洗いながら言う。
「カナタ君も良いと言うなら見守った方が良さそうね」
「タクミ君のことですか? 一応釘は刺しておきますが、最後は自分で決めてもらいましょう」
「ええ、そうね。 話しは変わるけど、午後はどこか出掛けるの?」
「ミミリさんの所とか色々行ってきます」
「そうなの、樽とコルクなんかも貰ってきてもらえる?」
「はい、解りました」
その後屋敷を出てミミリさんの工房へ。
工房に着くと広さが2倍ほどになってることに驚き、周りに柵が出来てる事にも驚く。
近づくと、入り口の観音開きの門に冒険者だと思う女性が2人立っていた。
なんか物々しいけど、なんかあったのか? 聞いてみれば分かるかな?
「すみません、ミミリさんいます?」
「社長にどのようなご用件でしょうか?」
冒険者の1人が聞いてくる。
「カナタが来たって言ってもらえれば解ると思うのですが・・・」
「ただいま聞いてきますので少々お待ち下さい」
その場で立って待っていると、すぐにミミリさんが走ってきた。
「カナタさ~ん、お待たせしました~!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。 ずいぶん物々しいですね。 なんかあったんですか?」
「実は・・・」
この工房で小火騒ぎが続き、それをフランソワーズ様に聞かれて陛下にまで案件が伝わってしまい、今の現状になったと・・・
たぶん、俺達が重要視されてるから仲の良い人の保護も含めて手を回してくれたのだろう。
しかも狙われた理由も、俺達絡みな気がする・・・
ミミリさんの所ばかりに仕事を頼んだから、他の所がねたんで嫌がらせしたのかもしれないな
「今はもう大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ! 冒険者さん達もいますし。 何かの注文に来たんですか?」
「ええ、樽とか木材を欲しいと思いまして」
「もちろんです! 木材を扱ってるお店なんですから、倉庫に売るほど木材ありますよ! 一緒に倉庫に来て下さい!」
ミミリさんは、冗談めかして言い爆笑している。
俺はとりあえずスルーし、倉庫にあった樽や木材等をマジックバッグに入れ、帰ることを伝える。
「ちゃんと、ヒリスちゃんの所にも顔を出してあげて下さいね」
「了解です。 困ったことがあれば俺達にも言って下さいね」
「はい、ありがとうございます」
その後、ヒリスさんの工房を訪ねる・・・ミミリさんの所のように物々しい雰囲気ではないようだ。
しかし、ヒリスさんの工房も倍ほどの大きさになっている・・・すごいな。
ヒリスさんを呼ぶとすぐに出てきてくれた。
「カナタさん、お久しぶり。 何かあった?」
ヒリスさんが、疲れた顔をして尋ねてくる。
今もまだ忙しいみたいだな・・・少しだけ手伝ってあげた方が良いかな?
「様子見と、聞きたいことがあってきたんです」
「聞きたい事? カナタさんが珍しいわね」
「グルングロッコの羽根があるんですけど、なんかいい武器とかになったりします? ナイフは作ってみたんですけど」
「グルングロッコの羽根は切れ味があるんだけど、切れ味が落ちるのも早いから難しい素材なのよね・・・良く作られるのはナイフと槍なんだけど、他となるとスローナイフとか包丁位かな?」
「他にはないですよね? じゃあ、売っちゃうかな・・・」
「本当!? 売って欲しいんだけど!」
「直接売っちゃうと不公平になるので、ギルドに優先的に売ってもらえるように言っておきますよ。 それで良いですよね?」
「それで構わないわ、他にはなんか面白い物なかった?」
「今は無いですね~。 またあれば言いますよ」
「ええ、よろしくね。 それはそれとして、今暇? 鼈甲の削りだし手伝ってもらえない~?」
「はいはい、いいですよ。 数個だけですよ?」
「助かるわ~、忙しいって嬉しいけど辛すぎるわ~」
1匹丸まんまの鼈甲の削り出しを4個ほど終わらせ、挨拶をしてニムロフさんの革の工房へ。
「おお! カナタさん! 革鎧が出来たんっすか?」
ニムロフさんは、カウンターの上で作業していたが、途中で止め笑顔で駆け寄ってくる。
「あ! いや、出来て無い・・・今回は、素材とかを買ったりできるか聞きに来たんです」
「出来て無いんっすか・・・早く見たいなぁ・・・出来ないかなぁ」
「解ったって、頑張るよ! で素材を買ったりする事は出来る?」
「できるっすよ。 ただ、今在庫が少ないんっすよ・・・アクセサリーの注文が凄くて・・・すんません」
「いや、いいよ。 じゃあ自分で狩りに行った方が早いってことか・・・切り刻む風のメンバーが来る前に何とかなるかな?」
「入用なら行商人に声掛けときますか? いつ入るかは解りませんが」
「いいよいいよ、取りに行くことも出来るんだし・・・鎧は頑張って作るから待っててね」
「ういっす、お願いするっすよ!」
ニムロフさんの所で会話を終え、屋敷に帰る際ウィンドーショッピング? をしながら帰る・・・が、いつも置いてあるのと大して変わりない。
商店をその後もプラプラと歩き、見て回りながら帰った。
あ! 奴隷商の所へ行くのを忘れてた!
まぁいっか、折角ならベトニアと一緒に行った方が楽だしね。