第118話 王都に向けて出発
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盗賊の金額を受け取る・・・思っていたよりも安い・・・全員売って、しかも懸賞金付きで大銀貨1枚・・・日本円だと100万円程度にしかならない。
まぁ、人の命が安いのは分かっていたし仕方がないんだろうけど、まさかこんなに安いとは思いもしなかった。
その時兵長から聞いたが、イザサさんも含め3人は奴隷落ちとなることが決まったようだ・・・特に興味ない。
その後、露店などを散策し買い物でもしようと思い移動する。
露天を冷やかしがてら見て回ると、切り刻む風の3人と助けられた4人が買い物をしていた。
皆俺に気がつき手を振ってくれた。
「奇遇だね~。 もう着替えも終わってるみたいだけど何を買いに来たの?」
「保存食です。 約2日の行程なのでそこまで大掛かりではないと思うのですが、念のため少し多めに買おうかと思いまして」
センレンさんが、俺の疑問に答える。
そっか、マジックバッグが無いとそのままの大きさで運ぶことになるから荷物を選別しなきゃいけないもんなぁ。
そんな事を考えてると、後ろに背負っていた鬼人族の男の子が気がついた・・・タイミングが良いのか悪いのか・・・
「おはよう、起きたね。 体は痛い所とかはない?」
「え? ここは? ご主人様は? どうなって・・・」
その後、センレンさんに断って広間っぽい所に移動し説明をし始める・・・最初のころはパニックになっていたが、だんだんと落ち着きを取り戻したようだった。
「お願いします。 なんでもしますので売らないでください。 鉱山に行きたくないです」
鬼っ子は、いきなり土下座をし始める。
「安心して、売る気はないから。 お金に一切困ってないし」
この台詞! 日本にいたときに言ってみたかったな・・・
「ありがとうございます。 私は何をすれば良いか教えていただけませんでしょうか」
「まず最初にしてもらう事は、立って自己紹介です」
「あ! 失礼しました。 私は見ての通り鬼人族の男です。 名前はメプトリと呼ばれていましたが、新しく付けて頂いても構いません」
メプトリは地面に頭をくっつけ大声で自己紹介をする・・・いや、目立つから立ってよ。
「気になったんだけど、今までにも名前が変わったりしたの?」
「はい、主人が変わると新しく変わります」
「そうなんだ~、じゃあ自分が親から名づけて貰った名前は覚えてる? 言っちゃいけないとか無いなら教えてもらえる? あと、立って」
「はい、最初の名はベトニアと呼ばれていました。 年齢は18歳です。 両親共に借金奴隷で、祖父が借金をしたようです。 Lvは5です。 所持ギフトは{音声会話・硬化・気配-}です。 読み書き計算は出来ません。 得意属性は風と水です」
ベトニアは、立ち上がり片膝をつき騎士礼をしながらいう。
「そっか了解、硬化って何? 聞いたことないギフトなんだけど」
「体が硬くなるギフトですが、硬化中は動きが著しく遅くなるので余り使えるギフトではありません」
「へぇ~、動きにくくなるのは嫌だね。 部分的に硬化させる事は出来ないの?」
「え? 出来ないと思います」
「その反応だと出来るか解らない、もしくは、やったことがないってことかな? じゃあ、出来る可能性は少しはあるって事だね。 じゃあ、鬼人族のことを教えてもらって良いかな? 硬化をどうやって使ってたかとか」
「はい、解りました。 鬼人族は私の倍ほども背の高く(約3mほど)体の大きな種族で、体を硬化させてその場で回転することで攻撃するようです。 あとは木の上や崖の上に登り、体を硬化させて敵に向かって落ちるなどですね」
「なるほど、かなりパワフルな戦い方だね。 でも、ベトニアは小さいから余り良い戦い方とは言えないんじゃないの?」
「その通りです。 私は、出来損ないと呼ばれる鬼人族なのです。 普通の体が小さく力が弱いのです」
「へぇ~そっか、その代わり手先が器用とかそんなところ?」
「え? あ、はい・・・良くお分かりですね」
「うん、じゃあ硬化使ってみてくれるかな? 見てみないと何とも言えないし」
その後、硬化を使って貰ったが、魔力の流れを見ると手足の先に最初に集まり手足から硬化するようだ。
これなら手だけを硬化することとかも出来るはず、要検証だな。
お腹が空いてる様だからさっき食べたピタサンドを渡し食べてもらうと、涙と鼻水を流しながら食べていた。
食べ物食べるときに涙はまだ良いけど、鼻水だけは何とかして欲しい・・・
そんな事をしていると、ケイタ君、ショウマ君から無線が入る・・・手合わせするから立会人をとのこと・・・いや、早々に帰るから止めてね。
センレンさん達にちょっとした小競り合いを見られてしまい、イラクサさんが弟子入り希望を出したそうだが、王都に来てから話しあう事となった。
ケイタ君達のいる場所に行き、ベトニアを紹介し切り刻む風に預けるつもりだったのだが、どうしても一緒に移動したいとのことで相談する・・・手合わせの事はうやむやになった! よし!
「ベトニア、移動するスピードがものすごいからやめといた方が良い」
「いえ、私はカナタ様の奴隷、御傍に使えることが使命です」
「高速で移動すると息が苦しくなるから、止めておきなって」
「いえ、どうかお願いします。 一緒に行かせて下さい!」
ベトニアの瞳は緑色と水色の神秘的なオッドアイ、背は低い顔はかなり可愛い・・・だが、男だ。
ケイタ君を見ると苦笑しており、ショウマ君は腕を組んで頷いている。
「ケイタ君、ショウマ君、王都まで一気に走るけどいいかな?」
2人は「はい」「おう」と了承してくれた。
「ベトニア、夜寝れないけど大丈夫? あと、ずっとオンブになるからね」
「いえ、私も走れます! 大丈夫です!」
「解った。 外に出たらついて来てみてね。 ショウマ君、ケイタ君、何かめぼしい物あった? 買う物があれば買ったら出発しよう」
結局めぼしい物はなく、エミットニットというカブと大根の合いの子のような野菜を買いマジックバックにしまって出発する事になった。
ベトニアは、それなりに足には自信があったようなのだが、3秒も持たずに謝った。
やはり、切り刻む風の面々と一緒に行く様に言ったのだが、涙を流して拒否していた。
結局、3人が持ち周りでオンブをすることが決まり最初はショウマ君が担当することになった。
今回は、カーボンナノチューブのロープを体に巻きつけ固定する簡易的なオンブ紐ではなく、椅子を背負うような形にした。
その方が背負っている人も背負われてる人も気を使わなくて良いと思ったからだ。
ちゃんと椅子のお尻の部分にクッションを入れてお尻が痛くないようにする気使いも忘れない。
「そう言えば、ショウマ君よりベトニアの方が年上なんだよね」
「そうなのか!? 嘘だろ? まさか」
ショウマ君は、オンブしながら走り無線を使い驚愕の声をあげる。
「ベトニアは18歳らしいよ。 だから2個上だね」
「まじで年上なのか? 見た目じゃ年齢は分からないって見本だな・・・まぁ、対応変えるのも面倒だしこのままで良いだろ?」
「良いんじゃないの? 相手が失礼に感じなければ何でも良いと思うよ? でも、自分が出来ないことが相手は出来るかもしれないんだから、敬意を持って接しなよ?」
「おう! 頑張るぜ!」
そのあと、急いで王都に移動する・・・その途中の廃村に真夜中到着し、明日の朝1番に王都に出発することになった。
こういう時の為に携帯用のお風呂をマジックバッグに入れておくことを心に決めてシャワーに入る。
ベトニアも一緒に入るつもりだったようだが、お風呂は1人ずつで魔物が来ないか警戒することを伝えた。
1人ぐらいの土壁で出来たスペースに2人は入りたくないもんな・・・ベトニアは男だし・・・女の子だったらよかったのに・・・
まぁ、明日は王都に戻れるし、寝よう。