第112話 帰宅準備
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食事を作りながら、ショウマ君の話を聞く
「どこまでやったの? 組み手くらいまで?」
「いや、準備運動くらいまでだな」
ショウマ君は、フライドポテトをつまみながら言う
「じゃあ、子供達と同じくらい?」
「いや、俺達で言う準備運動までだな」
いつもやってるのが、柔軟、ランニング、筋トレ、形、打ち込みが準備運動と言える。
その後に、フランソワーズ様の剣の形、ショウマ君による乱取り、今日2人が行ったような3番勝負となっている。
しかも、全てが筋肉痛がある身体強化をかけて、掛けられた本人が保持しながらやっている。
これは子供達がやってみたいと言う事でやってみていたのだが、小説や漫画のように魔力が増える事が解ってからは全員にやってもらっている。
「あぁ、打ち込みらへんか~」
「おう! かなり根性があるぜ! あぁ・・・カルジャスはランニングでくたばった。 隊のやつらよりは走ってたがな」
全員分のうどんを出し、食べてもらう・・・先程とは違い、スープの大鍋にポーションを混ぜ込んでみた。
味見をして見たら、味の変化はなかったので大丈夫だろう。
「ソテツさん、ヒレザンさん、運動のしすぎで食べれないかもしれませんが、汁だけでもいいので飲んで下さい。 きっと疲れが取れますよ」
無言でゾンビのように動くが、器すら持てない様だ。
木で出来たスプーンを渡し、ゆっくりと2人に飲ませる・・・本当に大丈夫か? 回復魔法を使うと運動の効果が減ってしまうから使いたくないんだよなぁ。
「ありが・・・とう・・・ございます」
ソテツさんが、何とか声を絞り出す。
こりゃあ、少し回復させた方が良いかな? 折角ここまでやったのに効果が薄くなるのはかわいそうな気がするんだけどなぁ
「ショウマ君、2人に回復魔法かける? カルジャスさんは熟睡しちゃってるからいいとして」
「ん? いや、後でマッサージしてやるから大丈夫だろ? 出来れば、たんぱく質を取らせたいんだ、良いか?」
「解ったよ。 じゃあケイタ君とショウマ君だけ先に食べちゃって、ソテツさん達は後で作る事にするよ。 そんな訳で、餃子焼けたよ」
「おう! 待ってたぜ! 美味そうだな!」
「ラー油はまだないから、メラントムの果汁を使ってね。 あとは、酢とコショウで食べるのも美味しいよ」
メラントムの実は、コーレーグース(島唐辛子を泡盛に浸けた物)のような味わいの辛味のある果汁の果物で、見た目は柚子を赤くしたような感じだ。
唐辛子はかなり高く少量しか販売されないため、唐辛子の変わりにメラントムの実の果汁を少し煮込んで使ったりして結構重宝している。
そういえば、誰も好き嫌いがないんだよなぁ・・・良い事だけど、なんか変な気がする・・・なんでだろう?
食べるのは俺を含めた3人なので、料理する場所をテーブルに移動し焼きながら一緒に食べて、今日の組み手の事や、屋敷に着いてから武器や防具の改善点などを話し有意義な時間をすごした。
一応隊の人達の事を聞くと、1回気絶しただけでやめたらしくその後帰っていったようだ・・・もしかしたら、兵士達の中にいたのかな? 作るのに夢中で気づかなかったな。
ソテツさん達は、机に突っ伏して寝てしまっているが、ショウマ君が強制的に布団に寝かせマッサージを始める。
2人は結局、マッサージを受けながら寝てしまい、起こすのに忍びないのでオルトウス様に言い送るための兵士を動員する事となった。
そのまま寝かせておこうかと思ったが、俺が寝る布団を取られたくなかった為だ。
この世界のベッドは木の板か藁の物しか見たことが無い、どこかにスプリングベッドもあるかも知れないが・・・
そんな訳で、俺の布団を取られると寝心地か非常に悪くなるので確保のために動いた。
次の日の朝、いつものように朝練をしていると、ソテツさんとヒレザンさんが謝りに来た。
「私達では訓練すらまともについていけず、真に申し訳ない」
ソテツさんがそう言い、ヒレザンさんと共に頭を下げる。
「いえ、良いんですよ。 こちらからは感謝をしたいくらいです」
「それは、どういうことですか? 良く解りませんが」
「ショウマ君が、人に教えるときの難しさを身を持って体験できた。 それは素晴らしい経験です。 今後いろいろなところで役に立つ経験ですので、お二人には感謝を・・・ありがとうございます」
俺は、2人に向かって深々と頭を下げる。
じつは昨日の夜に、ショウマ君が人に教えるときにどうしたらいいのかを聞いてきた。
形やなんかを教えるだけなら子供で慣れているが、組み手や実戦形式でも通用するところを教えるとなると難しい。
生兵法は怪我の元というので、あまり詳しい所を教えることが出来ないし、形を完璧に覚えるのなんて時間がかかりすぎる。
しかし懇願されているのだから、せめてコツのような物を教えてあげたい・・・結局ショウマ君は、体力がないやつには教えられないということにして切り抜けたらしい。
ショウマ君なりの答えだったが、全く納得出来ていないようだ。
俺もショウマ君の立場なら同じようにしたと思う、ここまで出来れば大丈夫と言うところまで教えられないのなら、教えない方が相手のためだ。
そう言ったのだが、ショウマ君は頭をかき「難しい! 寝る!」と言って寝てしまった。
ショウマ君は喧嘩っ早いが、決して馬鹿じゃない・・・自分なりの答えを、いつか出して貰いたいなぁ。
「・・・殿? カナタ殿! 大丈夫ですか?」
「すみませんソテツさん、考え事してました。 お二人に聞きたいのですけど、本気でショウマ君の技を覚えますか?」
「「是非に!」」
「では、オルトウス様に私からお願いして見ます。 結果は分かりませんが、ウェーブも大進行も終わり魔物達もあまり出ないと言われている冬が来るので大丈夫だと思いますしね」
「「ありがとうございます!!」」
ソテツさんとヒレザンさんは片膝をつけ礼をする。
片膝着いた礼って、主の前でしかしないんじゃなかったっけ? 詳しく解んないからいっか。
その後、ロールパンにいろんな物を挟んだサンドイッチを食べながら、Lvを上げにいき【Lv30.Lv29】となる。 Lv30には壁があるって言ってたけどどうなんだろう?
そんな事を考えながら解体場に行き、魔石と装備などを貰う。
最後まで残っていたゴブリンは、キングではないらしい・・・初めて見る魔物で、呼び名がないのは不便と言う事で、ゴブリンエンペラーと言う名前に決まった。
エンペラーの左右にいた側近っぽいのがゴブリンキングだったらしい・・・なので、レア種のゴブリンキングの変異種ではないか? との事だった。
魔物のことはそこまで興味が無いから、勝手にやってもらおう。
「ショウマ君、ケイタ君、準備ができ次第、屋敷に向けて出発しようと思うけどいいかな?」
「はい」 「おう」
「じゃあ、オルトウス様と領主殿にお願いと、帰ると伝えてくるけど一緒に来る?」
「いえ、僕は金属の露天があったので見てきます」
ケイタ君が眼鏡をクイッとさせながらいう。
「俺は、そこらへんを歩いてる。 何かあったら無線で呼んでくれ」
ショウマ君は、適当なところを指差して言う。
「了解。 今日は鎧着てないから怪我だけは気を付けてね。 相手の手足を切っちゃっても後でくっつけられるから危なくなったら躊躇しないようにね」
そう言うと2人は顔を見合わせ苦笑する。
2人が怪我するより、知らないやつが怪我してた方がいいでしょう! まぁ、そんなに強い人いなさそうだけどね。
2人と分かれ、オルトウス様達にお願いと帰宅の事を言う。
オルトウス様と殿下も色々あって遅れてしまったが、今日中に王都に一緒に出発するようだ。
案の定、一緒に行かないかと誘われたが、移動速度が違うので遠慮しておいた・・・馬車って体痛くなるしね。
さて、俺も売ってる珍しい食材をお土産に買って、急いで帰りますかね。