第108話 報告に向う
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台座から岩塩をマジックバッグにしまうと、木の後ろ側のドアに向かって歩き出す。
ドアに入るとボス部屋のドアのように消えていく
周りを確認すると、直ぐ近くに入り口の大きな鉄扉が見えるが、何か違和感がある
そうだ! 壁が光っていない! 何だ? クリアすると光も無くなるのか?
「入り口の扉がうっすら見えるだけで、真っ暗だな」
ショウマ君が、腕を組み周りを見回しながら言う
「そうだね、壁がなぜか光らなくなちゃったみたいだね」
俺は、壁の土を触り、何が変わったのかを確認してみる
「それよりも報告を急いだ方がいいのではないですか?」
ケイタ君が扉を指差す
「あ! そうだね、25時間しかないんだもんね! 急いで戻ろう」
入り口から出て、階段を上る
「止まれ! モンスターではないのなら名前を言え!」
階段の最上部で槍を構えながら、騎士が叫ぶ
「ソメイヨシノのカナタ、迷宮攻略をして戻りました! 報告をしたいのですが、どうすればいいですか?」
「何!? 入って半日も立っていないぞ!? 嘘の報告をするな!」
「壁際に寄っておきますので、中を確認してきて下さい! 自分の目で見た方が解りやすいでしょ?」
「解った! 虚偽の場合は捕らえるぞ! いいな!」
「いいですよ~、時間が無いんで早く行って下さい」
意気揚々と騎士が塩の迷宮の入り口を開け、槍を落としたガランと言う音と共に崩れ落ちる
「なんで・・・クリア・・・されてる・・・ありえない・・・ど、どうやった!? お前ら! 何をしたんだ!?」
何だ? 何でこんなに絡んでくるんだ? まさか、馬鹿兄弟の手の者だったのかな?
まぁどうでもいいや・・・時間が勿体無いから早くしてくんないかな?
「普通に攻略しました! さっさと誰か呼んで来なって、時間が無いんでしょ? あと、俺らを倒して手柄を横取りしたいなら、死ぬ覚悟をしなよ!」
無線でショウマ君にこっそり話しかけ、圧力を騎士にかけて貰う。
騎士は、ガタガタと震えだし口をパクパクさせている・・・このくらいでいいかな?
ショウマ君に、無線で解除をお願いし騎士の肩に手を置くと笑顔で話し掛ける。
「よし! じゃあ、急いで隊長達を呼んで来て貰えるかな?」
「はい! 畏まりました!」
騎士は、顔面蒼白になりながら急いで呼びに向かって行った。
数分の時間で兜に付いた返り血などを綺麗に洗い流す。 鎧などは風を纏っていたおかげで返り血などを浴びていない。
帰ったら早々に兜も作らないとなぁ・・・あとマスクも欲しいな、ダンジョン内は密閉空間だからにおいが結構残ってるんだよなぁ。
マスクはやっぱり面当てかな? スノボとかで使うハーフフェイスマスクかな? どんなのを作ろうかな~
そう言えば、兜のデザイン考えてもらってるんだったな。 あわせてマスクも考えてもらうのがいいかなぁ。
ぽーと考えてると、ヒレザンさんが駆け込んできた。
「クリアしたとは本当ですか? 本当なのですか?」
ヒレザンさんが、肩を掴んで質問してくる。
「落ち着いて下さい! クリアしましたから、落ち着いて下さい」
「まさか・・・そんな・・・異変は? 異変は解りましたか?」
「ボス部屋が変わっていた事と、ボス部屋のゴブリンが2万体ほどでした。 しかし、異変と呼べるのかは解りませんが」
「はぁ・・・えっと、2万体ですか? すみません、少し待って下さい」
ヒレザンさんは、腕を組んで考え事をしている。
考えが纏まらないのかな? いや、思考が追いついていないと言う感じかな
「ヒレザンさん、ソテツさんはどうしたんですか?」
「え? あ、ソテツ隊長は探索部隊を編成中です。 一報が入った直後に兵士達全員に招集かけましたので」
「なるほど、それならヒレザンさんは少し時間があるって事ですよね? でしたらゴブリンを直接見た方が早いと思いますよ?」
「そうですね、解りました。 一緒に解体場へお願いします」
その後、全員で移動し冒険者ギルド近くの解体場に入る
「すみませんが、解体したゴブリンを数体買い取る事はできませんか?」
「いいですよ。 御代はゴブリンすべての解体でいかがですか? しかも、武器や防具・魔石など同じ種類の物が2個以上あれば1個だけですがお渡しします! 同じ種類の物が1個しかない場合は渡しませんけど」
「え? そんな・・・よろしいんですか?」
「もちろんいいですよ、2万弱もありますしね。 あ! 時間はどのくらいかかりますか?」
「取れる素材も無いですので、明日の朝までには終わらせる事をお約束しますが、ほとんど回収なさったのですか? マジックバッグの容量も桁外れなんですね」
「そうなんですか? 比べる相手がいないので何とも言えません。 解体が朝までに終わるのなら、全部出しちゃった方がいいですよね。 こっちの端っこに出して行きますね」
ゴブリンを無造作に出し、ポンポン積んでいく・・・かなり大きい解体場だったのだが、どんどんゴブリンの死体で埋まっていく、ヒレザンさんは顔が引きつってきている。
出してみるとボス部屋にいたゴブリンの方が大きい・・・もしかすると、かの有名なホブゴブリンなのかな? ゴブリンライダーの狼も大きさが全く違う。
そうなると、ボス部屋にいたのは全員ホブゴブリンなのかな? そもそも、ホブゴブリンってゴブリンの進化種なのか? じゃあ、ゴブリンジェネラルより上? さっぱり解らないな。
そんな事を考えながら全部出し終わる。
「本当にほとんど回収なさっていたんですね・・・ここまであると圧巻ですね」
ヒレザンさんがゴブリンの壁を見ながら呟く
「そうですね~、後の事は任せちゃっていいですか?」
「はい、責任を持ってお預かりします」
その後、オルトウス様には直接報告した方がいいと思い領主の屋敷へ。
入り口に指しかかったときにふと思い出す・・・グルングロッコも解体してもらえば良かったんじゃないかと・・・
まぁ仕方ない、ここまで来ちゃったんだし・・・あ! そこらへんで倒したゴブリンも解体に入れておけば良かった・・・オークもか!
この歳になっても忘れ物が減らないな・・・大事な事だけは忘れないようにしなきゃ。
「カナタさん! 考え事の最中みたいですけど、あそこの畑に生ってるのは長ネギに見えませんか?」
ケイタ君が俺の肩をたたき畑に並んでいるものを指差す。
「ほんとだ! 売ってくれないか聞きに行こう、焼き鳥でねぎ間ができるかもしれないし」
「そうですね、少し遠回りをして見て回りましょうか」
「うん、見つけたものがあったら声かけて」
畑で作業していた獣人に声をかけねぎを売ってくれるように頼んでみる。
少し時期的に早いらしいが、折角なのでちょっとだけ多めにお金を渡して買った。
他の畑にとうもろこし、ピーマン、サラダ菜などがありそれも買い取った。
そのほかにはあまり珍しい物は無く、領主の屋敷へ向うことにした。
領主の屋敷に着くと、兵士が忙しく駆けずり回っていた・・・ここで探索部隊の編成をしてるのか?
屋敷の門には左右に1人ずつ門番が立っている・・・右側の門番の所に行き声をかける。
「すみません、オルトウス様に会いたいんですけど出来ますか?」
「何? そんな時間など無い! 帰れ!」
「解りました。 ソメイヨシノのカナタが着たとだけ伝えておいて下さい」
「冒険者風情が何を言っている! とっとと失せろ!」
門番に槍を向けられ追い返される。
「待て! 待て待て! 待ってくれ! ソメイヨシノ・・・まさかと思うが、迷宮攻略したクランのメンバーか?」
左側にいた門番に会話が聞こえていたらしく、走って追いかけら声をかけられる。
「ええ、そうですけど、お邪魔みたいなので宿でも探しに行こうかと」
「本当に申し訳ない! 直ぐに聞いて来るので少し待ってもらえないだろうか」
門番は、頭を深く下げる。
「解りました。じゃあ、お待ちしています」
「ありがとう! すぐに確認に向う!」
しばらくして、門番は息を切らしながら戻ってくると、中に通してくれた。