第100話 迷宮へ?
ブックマーク・評価 本当にありがとうございます。
皆様の応援で、100話まで書くことが出来ました。
これからも、面白いと思われる作品になるように頑張ってまいります
吊り下げていたグルングロッコを降ろし、こっそりと氷漬けにしてマジックバッグに入れて行く
思っていたより、センレンさんとモンジさんは積極的に手伝ってくれた・・・ナイフだけじゃ足らないかな?
「センレンさん、モンジさん、ありがとうございます、助かりました・・・お礼に、このナイフをどうぞ」
「な・・・何を言い出すんだ? 売るとこで売りゃあ、かなりの値が付くはずだぞ? そんな物を・・・」
モンジさんは、驚きながら言う
「私たちは、材料さえあれば何個も作り出せますので、どうぞ持ってってください」
「でもよぅ・・・あのよぅ・・・いいのか?」
「こちらの勝手で報酬を破棄させてしまったんです、これはその補填と思って下さい」
「なら、遠慮なく貰っちまうぞ?」
モンジさんは、嬉しそうにナイフを取った
なんだかんだ言いながら、かなり嬉しそうだなぁ
「センレンさんと、イラクサさんの分もあります、受けとって下さい・・・要らなくなったら売ってしまって構いません」
「ありがとうございます・・・遠慮無くいただきます」
そんな会話をして、昼食でも作ろうかと思っていたとき
兵士が数人こちらに向かって走ってきた・・・なんだ? これからごはんをって思ってたのに・・・
「ここにグルングロッコを討伐した冒険者がいると聞いたんだが、お前らで間違いないか?」
兵士は、そう言うとモンジさんを指差す
「いや、俺たちじゃない、そっちの3人だ」
モンジさんは俺たちを指差す
「お前たちが? まぁいい、隊長がお呼びだ、一緒に来てもらおう」
兵士はそう言うと手招きをした
何も言わずに仕方なく兵士についていく・・・なんだ? 暴れたり逃げるのはやめておいたほうがいいか
ついて行くと、少し大きなテントの中に案内される
冒険者ギルド兼兵士の詰め所のようだ
冒険者カードを見せるように言われ、その後、椅子に座って待つように言われる
結局何なんだ? 隊長とやらもいない様だし・・・帰っちゃだめかな?
そんな事を考えてると、ハーフプレートを着ている騎士のような羊の獣人と、従士か? 革鎧と皮の兜を付けた少年が2人がこちらに来る
「すまない、お待たせしたようだな」
騎士は、こちらに向かって礼をしながら言う
「いえ、何かされた訳では無いので特に問題はありません」
「そうか、急に呼び出してすまない・・・まずは自己紹介をさせて貰おう、私は北方面防衛担当十人長のカルジャスと言う、よろしく頼む」
カルジャスさんは、そう言うと頭を下げた・・・本当に騎士のような仕草だな
「私は、最近出来たばかりのクラン【ソメイヨシノ】のリーダーのカナタと申します、以後お見知りおきを」
俺も、出来る限り丁寧に頭を下げる
「早速だが呼び出した用件を言おう、じつは、塩の迷宮の調査が近日行われるのだが、その塩の迷宮の調査隊への参加をお願いしたい」
「え? でも、冒険者カードを確認したと思いますが・・・私たちは9級の冒険者PTですよ?」
「はっはっはっは、知っているとも・・・ランクなど飾りでしかないだろう?
一緒に行動していた者たちに聞いたぞ? 上異種も狩ったそうじゃないか・・・その実力を見込んで、たのむ、迷宮への探索を引き受けてくれ」
カルジャスさんは、またも頭を下げた
騎士が頭を下げるのはおかしいんじゃないのか? なら何故? どういうことだ? 何か裏があるのか?
「何故われわれを勧誘したのですか? もっと高ランクの冒険者もいるはずだと思いますが・・・理由があるのですよね? お聞きしても?」
カルジャスさんは言いよどむ・・・やはり何か裏があるのか・・・性格的にはちゃんとしているから助けても良いかもしれないが、その理由が分からなければ動けないな
そう思ってたとき、従士の1人が口を開いた
「勧誘出来る冒険者は他の隊の十人長達が先に声をかけており、あなた方しか残っていないからです・・・カルジャス隊長殿は他の隊長達の挑発に乗って、迷宮へ調査へ向かわせる冒険者を勧誘し、その進展度などの成果を比べる賭けをなさってるんです
しかし、カルジャス様は、1人も冒険者を勧誘出来ずにいます」
従士は、あきれた様に言う
「お・・・おい! 何を・・・」
カルジャスさんは、慌てて止めようとするが時すでに遅く言い終わった後だった
「良いじゃありませんか・・・高ランクの冒険者は金を握らされ向こうに付いたのです、もう負け確定ですよ」
従士は、悔しそうに言う
「なるほど! ケイタ君、ショウマ君、この話受けようと思う、いいかな?」
「僕は、異論はないですよ? ダンジョンには興味がありましたし」
ケイタ君は眼鏡をクイッとしながら言う
「俺も良いぜ! 屋敷に残してきたやつらには7日分の練習メニューを渡してあるからな!」
ショウマ君も腕を組みながら頷く
「すまん、恩に着る」
カルジャスさんは、頭を下げながら言う
「ただし、従士の方2人に詳細を話してもらいます、良いですね?」
しぶしぶだが、詳細を聞くことが出来た
カルジャスさんは、平民の出自で実力のみで上がってきたたたき上げ、他の同期の十人長は全員貴族の出自・・・やっかみか
カルジャスさんの事を良く思わない他の隊長たちと賭けをしたらしい・・・なんでも、隊長の座を退くと言う賭けを・・・馬鹿だったのか・・・
カルジャスさんの隊の隊員は皆平民の出で、あぶれ者の集まりらしい・・・隊長が不在になると、隊は解体され従士などは他の隊に吸収される・・・実質解体か、隊員たちも辞めるしか無くなるだろう
すべての原因が、女の隊員を馬鹿にされたからだそうだ・・・それで賭けを受けて立つってどうよ・・・
今回の調査は、第1階層なのに普段第3階層にいるゴブリンジェネラルが居た事での調査となったらしい
調査の日付は明日・・・おい! 間に合うのかよ!
兵士たちは、塩の迷宮をずっと囲んだまま見張っているため、調査は冒険者へと依頼されたとの事
そして冒険者達は、お金で向こうに全員ついたと言う
話を聞いていたが、呆れてきてしまった・・・
「事情はほぼ理解しました、引き受けたいと思いますが、1つ条件があります」
「何だ? 何をしたらいい? 何でも言ってくれ」
「嫌いな他の隊長たちに頭を下げてもらいます」
「何!? そんな事は出来ん! やつらは・・・」
「貴方のプライドは、隊員達よりも重要なのですか? この調査で結果を出さなければ全員首と同じですよ?」
「しかし・・・頭を下げて許してもらうなど・・・」
「あ・・・許してもらうのではありませんよ? 私達が最初に入り他の方が入るのを1日ずらして貰うんです」
「そんな事どうやったら出来る? 無理だろう・・・」
「簡単に言いますと、他の隊長は一流の冒険者をそろえてると考えます・・・それに引き換え私たちは9級のPTです
その差を利用し、苦肉の策で頭を下げたようにするのです・・・良いですか?」
その後、作戦を教え、早速塩の迷宮に出発・・・
カルジャスさんは、馬? なのかな? 鹿のようにも見える動物に乗りやってきた
「馬車はどうしたのだ? まさか徒歩で向かうわけではあるまい」
「その通りです、走っていくんですよ」
「おいおい、どれほどの距離があると思っているんだ? 仕方ない・・・ケーミを貸してやるから乗れ」
その動物ケーミって言うのか・・・体は馬に近く、首から上は鹿に近い・・・馬鹿・・・いや、深く考えるのは良そう
「じゃあ、走ってみますので付いて来て下さいね」
俺達3人は返事を待たずに一気に駆け抜ける・・・ケーミも必死に走っていたが、どんどん離されていった
「カルジャスさんが見えなくなったら、街道から逸れてね、昼ごはんでも作るよ」
「おう」 「はい」
2人の声が無線から聞こえてきた
お昼ごはん食べそびれてたからなぁ・・・天ぷらうどんでも作ろうかな~
そんな事を考えながら駆け抜けていった