第98話 洞窟の朝
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「カナタさん! これは・・・追われている? 冒険者? モンスター同士の争い?」
ケイタ君は、こちらに向かって言う
「え? 争いながらこっちにくるの? 一応洞窟の前に行って待機しよう」
「全部ぶっとばしゃいいんだろ?」
ショウマ君は、体操をして体をほぐしながら言う
「はぁ・・・敵だけを倒すんです、そんな事を言わなきゃ解らないんですか?」
ケイタ君は、ショウマ君に眼鏡をクイッとしながら言う
「敵が来る前に、お前を殴る!」
ショウマ君は、ケイタ君に向かって構える
「いいでしょう、さっさとやりましょう!」
ケイタ君は、武器を抜いて構える
「はい、ストップ! そんな事をやってる場合じゃないでしょ? これ以上やるなら、タダシさんヨシさんに言って、食事を食べられなくするよ? いいの?」
2人は、動きをぴたっと止め、武器を下ろす
「はい、よろしい・・・ケイタ君、もうすぐ来る?」
「はい、あそこから来ます」
ケイタ君は指差しながら言う
その時、木の間で動く人影を発見する
やはり、冒険者のようだ
「敵の種類と数は?」
「敵の種類は解りませんが、敵の数は10ですね、この洞窟を中心に扇形に広がってやってきます」
「え? 戦略とか出来る魔物の可能性あるの?」
「そうですね、追い詰めているような動きですので、その可能性もないとは言えません・・・どうしますか?」
「結局戦う事になりそうだし、冒険者に声をかけてこちらに誘導をしてこの場所で戦おうか」
「了解です、声をかけてきます」
ケイタ君は走っていき、1人を背中に担ぎ走ってくる
1人担いでいるにもかかわらず、真っ先に戻ってきた・・・冒険者たちが、ぽかんとして立ち止まってしまった
「全員この洞窟へ! 急いで!」
そう言うと、急に急ぎ始める
「カナタさん、背中に1本の裂傷です、足は・・・右足が折れてるようですね」
ケイタ君は、そう言うと土魔法で椅子を作り背中を治し始めた
女の子か・・・革鎧を着ているところを見ると戦士か何かだったのだろう
右足は・・・折れてるって言うより骨が見えていて、半分千切れてるじゃん・・・やってくれって事か・・・
確かユカさんの話だと、千切れたものは時間が経って無ければ繋げられるはず
えっと、ポーションに怪我した部分を浸しながら回復魔法をかける・・・で良い筈だったよな?
失敗しても仲間じゃないし良い練習台だと思えばいいか
まぁ俺が出来るかも不明だし良い機会だな
右足に浄化魔法を使い、ポーションを水魔法で浮かして足を浸す
「うぅぅぁぐぁぁ・・・」
「大丈夫か? 少ししみるから、この木の板を噛んで歯を食いしばれ、すぐに治療する」
木の板を銜えさせ、ポーションごしに回復魔法をかけて行く
「ショウマ君! 1人で警戒お願いできる? 敵が弱そうなら、今回の戦闘はナイフのみでいいかな? 出来るだけ多様な戦い方を訓練したいから」
「了解だ! 全部貰っていいのか?」
「こっちはさっさと終わらすって、よろしく」
他の冒険者たちも、洞窟の中に入ってきた・・・武器もなく全員あちこちに傷がある
女戦士・男戦士・男盗賊・女魔法使い・男魔法使いか・・・全員人族の結構バランスのいいPTっぽいな
ベージュのローブを着た魔法使い風の女の人が、入り口近くにいるPTメンバーを押しのけて奥に来た
「すみません! お礼は後で言いますので! 治療をするから、どいて・・・え? 何? それ? 治療? え? どうなってるの?」
ベージュのローブを着た女性が、驚きの声を上げる
この女性は治療師だったのか? 回復魔法を使えるのか? それとも、ポーションか? まぁどっちでもいいか
「ケイタ君、終わったのなら大柄の戦士の人の治療をよろしく!」
「はい、了解しました」
足の千切れた部分がゆっくりとくっ付いて行く様を見たら、誰でも驚くよなぁ・・・
「確認なんですが、私たちが倒したモンスターの素材は全部貰っていいですよね?」
「ああ・・・かま・・・」
「いや! 10%くらいを要求する!」
大柄の戦士が、了承しようとした声にかぶせて、盗賊風な男が言う
俺は、無線でショウマ君に洞窟まで帰って来るように言う・・・すぐに帰ってきた
「ショウマ君、ケイタ君、洞窟の奥で待機、私も治療が終わったら奥に行きます」
「な・・・なんで戦わねぇんだ! 助けてくれるんだろ!?」
盗賊風の男は、治療中の俺を掴み立たせようとする
大柄の戦士が、治療中なのをみて盗賊の男の手を掴み止めた。
本当に立たせたときは治療を途中でやめようかと思ったのにな・・・時間がかかるけど、治せることも分かったし
「こちらにはメリットがないでしょう? 皆さんが死んでからモンスターを討伐した方が利益が大きい」
「ふざけんな! 逃げるぞ! 走れるな?」
「敵の数は30匹ほどに増えてます・・・追われている時点で先回りされていましたし、逃亡は不可能だと思われます」
洞窟の奥から、ケイタ君の声が聞こえた
「お前たちがここに呼ぶからだろ! 逃げ切れたはずなんだ! お前たちが呼ばなければ逃げ切れたはずなんだよ! 責任とって囮になれ!」
ふぅ・・・先回りしされていたと言われただろ・・・何なんだこいつ?
「さっきも言ってた様に先回りされていましたよ・・・全滅は時間の問題だったと思いますが・・・」
「う・・・うるせぇ! お前らの責任だ!」
「ふぅ・・・ところで何と戦っていたんですか?」
「最初はオーク2匹だったんだ・・・気が付いたら、グルングロッコに囲まれていて・・・」
大柄の戦士が申し訳なさそうに言う
グルングロッコ? 何それ? はじめて見る魔物は倒しておきたいなぁ・・・にしても、盗賊風の男ウザイな
「魔物素材の権利を放棄するなら助けますが、どうしますか?」
「はぁ? グルングロッコは7級相当の相手だぞ? それが30匹もいたら全滅するだけだ! 囮を使って逃げるしかないだろ!」
盗賊風の男が言う
7級って事はセントバードと同じ位の相手って事か・・・出来れば接近戦の練習も兼ねて魔法無しで倒したいな
「はぁ・・・僕たちは、幼龍と1対1で対決しても勝てる実力があるんですよ? 物の数にもなりませんが?」
ケイタ君が、疲れた様に言う
幼龍となんて戦ったことないんですが・・・ブラッディルビーワイバーンを倒したから言ってるんだろうなぁ
たぶん幼龍に出会えば倒すと思うけど・・・もうチョイ信憑性の事を考えて、ワイバーンぐらいがよかったような気がするな・・・
「はぁ? お前らみたいな良く解らない格好をしたやつ等が強いだと? 信じられねぇな・・・冒険者ランクはいくつだ?」
「はぁ・・・どうでもいいんだよ! 逃げたいのなら逃げろ! 邪魔だ!」
ショウマ君も疲れた様に言い、手をシッシとやっている
「あの・・・本当に倒せるならお願いします、素材は倒した人の物でいいですので」
ベージュのローブを着た女性が言うのを皮切りに、盗賊の男と魔法使いの男以外が放棄してくれた
盗賊の男達は、他のPTメンバーに説得をされている・・・完全に説得されるのを待つ必要もないか
土魔法で、洞窟を檻の様にして武器を出す・・・やっぱり、洞窟とか閉鎖空間だと使いにくいなぁ・・・
「一応はじめて見る魔物だから、全員武器は得意なものを! 毒に注意! 魔法も解禁! 無線は常時ONで! 良し! 殲滅する!」
「おう!」 「はい!」
2人は、武器を構えて言う
「魔物はこの洞窟を包囲しています、洞窟の上にはいません、あそこに見えるのがそうだと思います・・・あと、50匹以上になりました」
真正面に見える、形はダチョウで尾羽の変わりに鬼の手のようなものが生え、羽も鋭い刃物のように見える
完全に良く分からない生物がいた・・・しかも真ん中には頭に王冠のような飾り毛が生えてるものがいる
「真正面に見えてる冠付を倒すから、ショウマ君左、ケイタ君右お願い、逃げたのは出来れば倒しちゃってね・・・行くよ?」
3人は、一気に飛び出るとそれぞれの方向に走り出す・・・カナタのみ出た直後停止し加減をせずに剣を振るった
冠付グルングロッコが警戒の声を上げた直後に首が落ちる・・・
風の刃が一気に敵を葬り去る・・・通り道にある周りの木や白竹まで切れていく・・・
こりゃ、ほんとに練習が必要だな・・・気を付けないと仲間ごと切り刻むよ
取り回しがきかないので、武器をマジックバッグにしまい、ナイフを構えて、切れていないグルングロッコに近づく・・・逃げ出した奴はケイタ君とショウマ君に任せよう
さてと、どんな動きするのか確認しておくか
グルングロッコは尾羽の鬼の手を上手く使い、回転しながら攻撃してくる・・・なるほど、だから名前にグルンが付いてるのかな?
グルングロッコは、鬼の手を上手く使い突っ込んでくると思えば空中で止まり、鬼の手の攻撃に注意すれば、羽で切ろうとしてくる
かなり厄介だな・・・動きに惑わされそうだ
鬼の手が前から迫ったとき、後ろに飛び避けたが・・・土の槍が地面から生えてきた・・・それを武器ではじくと、後ろにボコという音がした・・・避ける場所を計算して連携してるのか!
風の鎧の力と風の魔法の力で横に転がり避ける・・・なるほど、こりゃ遊んでると怪我するな
しかし、ギフトと魔法を使用した俺の敵では無いな
案の定、数分で殲滅は終了する
洞窟の奥のPTは、無言でパクパクしていた
ショウマ君とケイタ君に魔物や切ってしまった木・白竹などを持ってきてもらえるように頼み、落ちている手前の物からマジックバッグにしまっていく
このまま、何もなく屋敷に帰れないかな? まじで・・・