第10話 街の中
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6/7改稿あり、加筆あり
「うわぁ・・・田舎・・・」
門をくぐり、周囲を見て、最初に出てきてしまった一言が、それだった。
手前が畑となっていて、ポツポツと家? 瓦礫? 馬小屋とか? 良く分からない盛り上がりがある。
奥には、もう一つ門があるみたいだ。
やはり戦争でもあったのかもしれない。もっと良く見て見ると、畑や家と思われるものは、所々焦げて散々な状態となっている・・・こりゃあ、住めないな・・・災害後の映像とかみたいだ。
キョロキョロしながら進んでいくと、物乞いっぽい人たちが熊殺しさんに話しかけるが、無視して進んでしまった。
海外とかでもそうだが、物乞いの人1人にかまってしまうと、一気に人に囲まれて危険な状態になる、それを見越しての行動だろう。
俺にも来たが、見ないようにしておいた・・・渡せる物も無いしね。
嫌な気分だ・・・日本だと全く見ないものだから、冷や汗が噴出す感じがする・・・
暗くなってきているのに、老若男女問わず道の端で手を合わせお祈りしている・・・
はぁ・・・戦争なんてしなきゃ良いのに・・・
結構進むと二つ目の門の近くまで来た。
門を正面から見て左側にお屋敷が建っていた・・・お金持ちでも住んでるのかねぇ?
二つ目の門にも門番が立っていたが、敬礼だけされるとそのまま進めた。
熊殺しさん、貴族の娘なんだろうなぁ・・・何で俺を助けたんだ? 解らないなぁ・・・どんな思惑があるにしろ、今は何も出来ないな・・・
門を通ると、中世ヨーロッパを思い出させる町並みが・・・ヨーロッパに行った事も見た事も無いんだけどね。
石畳で石造りの家で、外とは違い戦争など無かったような感じの町並みだが、光が少ないのであまり解らなかった。
目の前には白い大きな建物があり、その隣には同じ位大きい建物がある。
気が付くと、立ち止まってしまっていたらしい、熊殺しさんが、白い建物の近くに移動して手招きしていた。
呼ばれているのに気が付き、足早に進んでいく・・・
建物には、二重丸とバツが重なったような印がついていた・・・教会か?
隣の大きな建物は2つ入り口があり、1つの入り口にはコップのマークの看板がかかっているので酒場なのかもしれない。
もう1つの看板には剣と槍と棍棒? 杖かな? が3本重なったようなマークが掲げてあり、もしかしたら冒険者ギルド? 何じゃない? うわぁ・・・見て見たい! ファンタジーの定番だよね!
そう思ったが、呼ばれているので白い建物の重厚そうな扉を開ける。するとカランカランと音がなった。
中は明るく、イメージそのまんまの教会だった。
脇の扉から人が出てくる・・・羊の獣人なのか? 角と頭が天然パーマのようになっていて髪の色は茶色い・・・熊殺しさんに気が付き、礼をする。
熊殺しさんは兜を取り、お辞儀をして何かを話している。
う~ん何はなしているのか、解んないなぁ・・・やっぱり。
話が終わると、羊の人が扉に戻っていった。
しばらくすると、羊の人が兎の人を連れて戻ってきた。
兎の人も可愛い人だね、この世界は美人が多いのかな? いいことだね!
羊の人が、何かを聞いているみたいだが全く解らないよ。
適当に頷いておくと、左手を持たれて水晶みたいなものを乗せられて、まじまじ見られた。
驚いたように、熊殺しさんと話している。
何? 何? 勇者だ! とか? そんなのなの?・・・駄目だな・・とか言っている気がすごくする。
兎の人になんか指示をしている・・・兎の人は、針を取り出した。
予想通りだと・・・刺される?・・・・マヂッすか・・・痛いの嫌なんですけど・・・殺菌とかどうなってるの? いやマジで。
左手を押さえられ、プスッと左手の人差し指に刺さった・・・いっつぅ・・・
その血を兎の人が筒のようなものに入れると、蓋を閉める。
その後に熊殺しさんが指を治してくれた・・・魔法覚えられないかなぁ・・・
兎の人が筒の先端にある突起のようなものを見ている・・・注射か? でも、針なんて付いてないしな・・・突然突起が光る・・・LEDランプみたいなものかな?
突起の部分が光った筒のようなものを羊の人に手渡す。
羊の人が左の手をもう一度持ち、筒の光っている部分を手のひらに当てて、こちらに何かを聞いている・・・気がする。
訳が分からないから、頷いておく・・・すると、蓋の部分にボタンのようなものが出て、押す。
ブシュっと音が鳴った・・・何か注射された? インシュリン注射のような感じ? 針が無いのに注射出来るなんて、技術Lv高いんじゃないの?
そんな事を考えてると、いきなり体に激痛が走る・・・・いだぁい!!!
ぎゃあぁぁぁぁぐぅぅがぁぁぁなどと、言葉にならない叫びを発し気絶してしまった。
「ここは? どこだ?・・・知らない天井・・・そんなこと言ってる場合じゃないか」
クリーム色っぽい天井と壁に囲まれた部屋だった。
起き上がることは出来たが、全身が筋肉痛のように痛い・・・・走り回っても筋肉痛が無かったのにな、いててて・・・
左手をまじまじ見てみたが、特に何の変化も無いように見える。
昨日の注射はなんだったんだ? 何はともあれ、初めての気絶体験だな。
聞きたいけど言葉が通じないんだよなぁ・・・言語理解能力があったらよかったのに・・・
というかさ! 普通の転移物だとあるの当たり前じゃない!? 不親切だな! 現実は!
ガチャ・・・扉が開いて誰かが中に入ってくる。
昨日見た兎の人? と思われる人がこちらを見る。
ビクッとして、扉に戻っていき扉を開けて「神父様! 神父様! 起きました!」と言っている。
ええ、起きましたよ・・・ん?・・・え? あれ? 言葉が分かる!? マジで? 注射の効果? そんな事は置いといて・・・緊急事態だ!
「あの、あの! トイレ何処ですか?」
あああぁぁぁ最初に言う言葉がこれかよ! チックッショ~イ! 漏らすよりはいいんだけどさ・・・
「え? あ・・・はい、そうですね、解りませんよね、案内しましょうか?」
「はい、お願いします」
トイレに行ってみたら汲み取り式で、高いところには桶に水が入っており手を洗うためのものだと思われる。床板を2枚ほど抜いた場所の隣に土と藁が置いてあった・・・マヂカヨ!
昨日の夜食べてないから、小だけですんで良かった・・・
でも、これからどうしよう・・・やばいな・・・問題だ・・・
手も洗わずに戻り、汚くてごめんなさいって心の中で謝っておいた。
部屋に戻ると、昨日の羊の人が椅子に座っていた・・・神父だったのか。
「お加減はいかがかな? 少々珍しい事例だったのでビックリしたが、動けるって事は大丈夫のようだね」
そう言いながらベッドを手で指して、座るよう促された。
「はい、ご心配ありがとうございます、今は体中が筋肉痛で、ものすごく痛いですけど、支障はありません」
喋りながらベッドに座る。
「ほほう、マジンが急に活動を始めたからだろうね」
「マジンですか?」
「そうだ、何故か解らないがマジンが活動していなかったんだよ! こんな事例初めてだよ! 何があったんだい?」
「それが、全く解らないんです・・・いきなり真っ暗な中に放り出されたらここに居たので」
「う~ん、真っ暗な中・・・何らかの魔法によるものなのかもしれないね」
「魔法ですか? う~ん・・・どうなんでしょうね」
「名前は? 出身地は何処の国なのかな?」
「名前はカナタです、国は島国だったということは記憶してるんですが、国名を思い出せないので、すみません」
「なるほど、カナタか・・・あ! ごめんごめん、自己紹介がまだだったね、私はラーモン、よろしくね。島国か・・・となると、龍神皇国の出身なのかな?」
「すみません、全く解りません。ですが、そのうち見つかると思いますので、大丈夫だと思います」
「そうかい? 出身地が分からないということは不安ではないのかね? まぁ、会話できるようになったんだし、何とかなるだろうとは思うんだがね」
かなりいい人だと思うけど、マシンガントークだな・・・
マジンの事や色々聞きたいけど、当たり前のものみたいだから聞きにくいな・・・
タイミング的に聞ければ聞いて、だめだったら図書館や本屋かな・・・あればいいんだけど・・・その前にこの国の文字は読めるのかな?
「昨日一緒に帰ってきた、フランソワーズ様が来ると言ってたから、ここで待っているといいよ」
「はい、ありがとうございます。記憶が混濁しているのか初歩的なものもあまり思い出せないので、聞いてもいいですか?」
「そうなのかい? もちろん構わないよ、博識ではないから答えられるかは解らないんだけどね」
「本当に初歩的なことですよ、記憶に霞がかかっていてきっかけがあれば思い出せるかもしれないので」
クマ殺しさん:貴族の娘? 結構な権力者の娘なんじゃないかと思う。
羊の獣人:ラーモンと名乗る協会の神父
兎の獣人:神父を助けるシスター
注射器具:自身の血液とマジンの粉末を混ぜ合わせ、本人専用のマジンを作り出し体内へと注射する魔道具、製作者は神となっているが実際には不明。
他の物の注射に使えるかもしれないが、壊れてしまうと大変なので、他の物の注射での使用は禁止されている。