第83話 手合わせ
ブックマーク・評価 本当にありがとうございます
「私が起きていますので、皆さんは寝てください」
リョウタロウさんが、どうしても見張りをやると言って聞かなかったので任せる事にし、シャワーを浴びてから就寝する・・・今度は枕をマジックバッグに入れておこう
衝撃吸収も、衝撃が無いと意味ないし、野営の準備もしておくべきか・・・
そんな事を考えていたが・・・思いのほか疲れていたようで、すぐに眠ってしまった
次の日起きると、リョウタロウさんが槍を振っていた
「おはようございます」
「おはようございます」
「少し横になってきたら良いんじゃないですか? もうすぐ皆起きますし」
「そうですね、そうさせていただきます」
そう言うと、寝室に入って行った
空が明るくなってきているが、まだ日は昇っていない
タダシさんとヨシさんが起きてきたので警戒は任せて、壁の上をぐるっと一周する
外は、モンスターが争いながら食ったり食われたりしている
「なんか、蠱毒みたいだな・・・なぜ、草原に芋虫は来るんだろう? 謎だ」
独り言を呟き、みんなの所に戻る
魔法で倒した敵は、いきなりマジックバッグに収納されるとか無いよね・・・そんな物作れないかな? そんな事を考えながら
戻ると、リョウタロウさん以外の全員が起きていた・・・てか、フランソワーズ様、何であなたがワクワクしてるんですか?
「よし! 昨日、ワイバーンを解体した場所で朝錬するぞ」
ショウマ君がみなに声を掛けて、移動する
「あと、今日から回復しながらの身体強化は禁止ね、筋肉痛のある身体強化でお願いします」
「え~? マジ~? 鬼じゃね? 訓練中きついっしょ?」
俺の言った事に、アカネさんが反論する
「いや、訓練以外でもね、体力があるに越した事はないでしょ?」
「うわぁ・・・マジ鬼じゃね? 鬼畜なんじゃね?」
そんな反論は受け流しておく
「あの~・・・そろそろ武器の訓練もしたいですけど」
タクミ君が、そっと手を上げる
「うん、そうだね・・・もう少ししたらやろう、体捌きとか覚えて置いて損は無いしね・・・フランソワーズ様、一緒に訓練してもらえるんか?」
「当たり前だ! 元よりその積もりで待っている、毎朝訓練をしているのか?」
フランソワーズ様は、腕を組んで大きく頷く
「ほぼ毎日ですね」
「ほほぅ、どのような訓練をしているのか楽しみだ!」
柔軟、ランニング、正拳や蹴り、防御の型などをして、素手で組み手となった
「少々きついな・・・この身体強化の魔法を維持するのに魔力が多く必要なのもきついな」
フランソワーズ様が、汗をぬぐいながら言う
「魔法の訓練と近接戦闘の訓練が一緒に出来る一石二鳥の訓練法です」
「教えているということは、1番強いのはショウマなのか?」
「どうだろうな・・・ただ、殴り合いなら負けねぇ」
「うむ、ならば私と勝負だ!」
「おう、解った、かかってこい!」
フランソワーズ様は、真っ直ぐに駆けて行き、逆突きの右ストレートを出す
ショウマ君は左手で受けるが、受けた瞬間ピクッと反応を見せる
フランソワーズ様は、ニヤッと笑い右足を前に出し、右手を曲げて、肘鉄をわき腹めがけて打ち込もうとする
ショウマは、右足を引き真半身になると、左手をまわして、肘打ちをしてくる勢いを利用して体勢を崩すように払う
フランソワーズ様は、バランスを崩し前のめりになる・・・ショウマ君の横に流され驚きの表情を見せていたが、すぐに表情を引き締め、地面に両手をつき後ろ蹴りを出す
ショウマ君は、既に後ろに一歩引いており、手で足を掴み、上のほうに足だけを投げる・・・その場で180°回転し、背中を打った
「すごいな! 速さだけではなく見切りも的確だ・・・ギフトは格闘の心か?」
フランソワーズ様は立ち上がり、洋服のほこりを払い言う
「格闘の心得を持っているが、使っていない・・・何かに頼ると癖になりそうなんだ」
驚愕の表情を見せる・・・
「はっはっは、面白い! もう一手いいか?」
「朝飯までなら何回でも良いぞ! そういう取り決めだ」
「では、行くぞ!」
いつも組み手をしているショウマ君がいなくなってしまった、ケイタ君の相手を俺がする事になった
まじかよ・・・いつも通りやられると、速すぎて捉えられ無い・・・結局、ギフト禁止でいい勝負であった
いつも通りタダシさんの号令で朝ごはんになる
リョウタロウさんを起こして、みんなでお腹いっぱいまで食べる・・・腹八分にしとけばよかった・・・と後悔する・・・
「では、屋敷に帰りましょうか」
「すまんが、この拠点はどうするんだ?」
フランソワーズ様が、すかさず聞いてくる
「この拠点は、壊すつもりですけど」
「そうなのか?・・・このまま他の冒険者が利用するように残してもらえんか?」
「それは良いですが、セントバードとか襲ってきたらひとたまりも無いですよ?」
「それもそうだな、仕方ない壊そう」
一晩お世話になった拠点を跡形も無く壊し、街に戻る事に
しかし、草原には数多くの魔物が存在する
昨日のうちに、素材は嫌と言うほど狩ったので、街への進行方向の魔物以外倒さずに進んで行く
もちろん、倒した魔物の素材はマジックボックスに入れておいた
ふと思ったが、こんなに魔物の素材があるのに何故、この国は人気が無いのか? 他国では魔シルクとして高値がついていると言うことなのに何故・・・考えても答えは出ないか・・・
街に向けて身体強化(筋肉痛あり)で走り抜けて、街まで着いた
街では、厳戒態勢がしかれており、門が閉まっていた・・・だから、冒険者が草原に来なかったのか
「門を開けよ! 大将軍の娘! フランソワーズ・ウルフニアが戻ったぞ!」
フランソワーズ様が門のそばで大声をあげると、門の上にいた衛兵が駆けずり回り、数分で門が開いた
「お帰りなさいませ! どこに行っておられたのですか? 今はワイバーン対策で厳戒態勢のはず・・・」
門番は敬礼しながら質問してくる
「安心するがよい、ワイバーンを狩ってきたぞ、父上、叔父上、ギルドマスターに報告に行く」
「ハッ! そういうことでしたか・・・お疲れ様です!」
衛兵は、こちらをチラチラと見てくるが、ギルドカードを見ると通してくれた
「早速だが、エミエ・・・ギルドマスターの所へ行くぞ」
フランソワーズ様が、こちらに向いて言う
一瞬名前を言おうとしなかったか? エミエ? 誰に聞いてもギルドマスターとしか教えてくれなかったし、気になるな
「エミエ・・(最後のほうを濁しながら)さんの所へ先に向かうのですか?」
「なんだ・・・名を知っていたのか・・・その通り、エミエミの元へ向かう」
あぁ、可愛い名前だから誰にも喋らない様に言ってたのか・・・気にすること無いと思うけどね
エミエミさんの所に行き、鱗と結晶化し始めている瞳を見せ、事の顛末を報告する
「厄介なことになったわね・・・他国に知れると戦争を起こすために秘密裏に戦力を集めてたと言われかねないわね」
エミエミさんは、頭を抱えながら言う
「うむ、対応に困ってしまってな」
フランソワーズ様が、腕を組みながら言う
「ふぅ・・・グランドマスターに相談するしかないわね・・・後で連絡を取ってみるわ」
エミエミさんは、ため息を吐いてから言う
「すまん、頼んだぞ」
「まずは、ソメイヨシノの皆さんにお礼を言っておくわ、ありがとう、そうねぇ・・・流水の水差しだけじゃ駄目になっちゃったわね、特別報酬で何か欲しい物は無い?」
エミエミさんは、こちらを向いて言う
「そうですね~・・・オリハルコンとか?」
「あるわけ無いじゃないの・・・しかも加工はドワーフしか出来ないのよ?」
エミエミさんは苦笑しながら言う
「冗談ですよ、実際に何があるのか分からないので言いようが無いんですよ」
「栄誉や名声、お金・・・武器に防具、アクセサリー・・・ふぅ、欲しい物が出来たら言って頂戴」
「はい、了解し・・・あ! ステータス! 能力を数値化できる魔道具なんかがありますか?」
「力の評価石の事? あれはダンジョンと繋がってるから持って来れないわよ?」
何! あるのか? 魔法だと基礎能力がまったく分からなかったために数値化に失敗して使えない魔法になっているのに・・・
「そうですか・・・じゃあ、今のところ貸しひとつでお願いします」
その後、陛下と大将軍様の2人に同じ報告をすると、苦い顔をしながら感謝された
国が滅びる危機は去ったが、他国に戦争を吹っかけようとたくらんでると思われないようにするのが大変だということで、最初の案どおりワイバーンを討伐したと言うことになった
そういえば、アカネさんの持っている卵の事聞いて無いな・・・話が終わったら聞いてみるか